PCEデフレーターを受けてドル円はどうなる?日銀のマイナス金利脱却やFRBの利下げ見通しも解説【2024年3月】

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2024年3月現在、アメリカのPCEデフレーターが発表され、市場の注目を集めました。

本稿ではプロトレーダーの筆者が、PCEデフレーターの重要性や市場の反応、ドル円の動きについて解説します。是非参考にしてみてください。

※本記事は2024年3月7日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. PCEデフレーターの概要
  2. PCEデフレーターの結果
  3. PCEデフレーターを受けた市場の反応
  4. ドル円の方向性を考える上でのポイント
    4-1.日銀の金融政策
    4-2.FRBの政策スタンス
    4-3.ポジション動向と投資家のセンチメント
  5. まとめ

1.PCEデフレーターの概要

PCEデフレーターは、物価動向を示す経済指標です。個人が実際に利用した金額をベースとして計算するため、GDPの7割を占める個人消費の動向が分かります。

FRBはCPIよりもPCEデフレーターを政策運営において重視しているため、金融政策を占う上でチェックしておきたい数字です。PCEデフレーターがアメリカ全体の消費から数字が作られている一方で、CPIは都市部を中心とした消費から計算されています。更に細かい点では、企業調査と個人調査、品目等で異なるものの、PCEデフレーターの方が重要度は高いことを、まずは押さえておきましょう。

2.PCEデフレーターの結果

2月のCPIでは、総じて強い数字が出たため、PCEデフレーターも強い数字が出るのではないかと懸念されていました。インフレ懸念が高まっていたこともあり、市場では強い数字にする警戒感が集まっていました。まずは実際の数字を確認しましょう。

PCEデフレーター

指標 結果 予想 前月
PCE(前月比) +0.3% +0.4% +0.1%(改定値)
PCE(前年同月比) +2.4% +2.4% +2.6%
コアPCE(前月比) +0.4% +0.5% +0.1%(改定値)

PCEデフレーターは、全ての項目においてほぼ予想通りの結果となり、インフレ懸念が一旦緩和されました。若干ではあるものの、前月の数字が下方修正された点も、ポジション調整のきっかけになったと考えられます。

住宅とエネルギー価格を除いた物価指数であるスーパーコアは、FRBがトレンドを把握するためにチェックしています。+3.2%から+3.5%まで上昇しており、まだ安心できる数字ではありません。

3.PCEデフレーターを受けた市場の反応

ドル円
※図はTradingView[PR]より筆者作成

上記はドル円、米国債2年金利、S&P500指数を表したチャートです。

ドル円は、日銀高官の出口が見え始めたとのコメントがマイナス金利解除を意識させたため、円高方向で推移しました。その後PCEデフレーターが市場予想通りの結果となり、インフレ懸念が和らぐと金利は低下し、ドルも一時149円台前半まで下落しました。引けにかけて上昇し、150円台を回復し、PCEデフレーター発表前の水準を超えました。

参照:ブルームバーグ「物価目標実現が「見通せる状況」、出口の検討必要-高田日銀委員

米国株も堅調な地合いを保っており、「2月は調整しやすい」とのアノマリーを否定しました。

4.ドル円の方向性を考える上でのポイント

4-1.日銀の金融政策

ドル円の動向を考える上で、まずは日銀の金融政策の方向性が重要になります。日銀は、物価目標に対して完全に自信を持っているわけではありません。しかし日銀高官の発言を見ると、年末と比較してマイナス金利解除に近づいている判断でき、春闘の賃上げの結果次第では、何か動きがある可能性があります。

ここでのポイントは、マイナス金利を解除するのか?ではありません。マイナス金利の解除は、すでにある程度市場に織り込まれていると判断できるため、連続して利上げを行うかどうかに注目しましょう。

ただし日銀高官からは、マイナス金利解除をしても連続して利上げを行わないことを示唆するコメントが出ており、日米金利差を考えた場合にも、日本がアメリカのように政策金利を5%まで引き上げる可能性は低いでしょう。

参照:ブルームバーグ「物価目標実現が「見通せる状況」、出口の検討必要-高田日銀委員

仮に物価見通しが継続して2%を超える場合や、タカ派的なコメントが多くなる場合は、日銀が更なる利上げを検討するため、円高圧力が強まるでしょう。

4-2.FRBの政策スタンス

ドル円はアメリカの金融政策にも影響されます。FRBが利下げを行う時期についても、マーケットの焦点となっています。

2024年1月時点では、市場では年間6回の利下げが織り込まれていました。しかし2024年3月現在では、市場予想は3回まで減っており、FRBの予想と合致し始めました。そのため短期的にドルショートを巻き戻す、ドルの買い戻し圧力は一旦終了したと考えていいでしょう。

インフレ懸念が再度強まるかどうかで、ドルの強さが変わる状況となっています。PCEデフレーターが予想通りだったため、一旦は懸念が和らいでいるものの、3月の数字次第で再度高まる可能性があるため、引き続きチェックしてみてください。

短期的なドル高が終了するサイクルに入っているため、ここから数ヶ月はドル安に進みやすくなる可能性があります。

4-3.ポジション動向と投資家のセンチメント

ドル円のトレード戦略を考える際に、150円台から更にロング(買い)で攻められるか、悩んでいる投資家は多いのではないでしょうか。

2024年3月現在の水準では、政府高官からも円安牽制発言が出てきており、151円台から152円台にかけて上昇した場合為替介入が入りやすい地合いとなっています。リスクリワードとして、さらに3円程度の円安が期待できるか、もしくは介入で5円以上の損失を被る可能性があるかを検討する必要があります。

プロトレーダーの筆者としては、151円台半ばからショートポジションを仕込みつつ、為替介入を待つ方が懸命だと考えています。為替介入後は、下がった水準で拾って、ロングポジションを構築したい投資家が多くなることが予想されるため、146円台前半から指値で注文を置いておくトレード戦略も選択肢の一つでしょう。

5.まとめ

本稿ではPCEデフレーターや市場の反応、今後ドル円をトレードする場合のポイントについてまとめていきました。

3月には春闘があり、金融政策に大きく影響する内容が発表されることから、どのようなシナリオが発生しても対応できるようにしておきましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12