12月は、海外投資家がクリスマス休暇に入るため、取引量が減少し、相場が急変しやすくなる傾向があります。
本稿では、プロトレーダーの筆者が、12月の相場の特徴を踏まえた注意点や、ドル円動向を解説します。米金利や日銀動向についても解説するので、参考にしてみてください。
※本記事は2023年12月4日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 12月の相場の特徴
- 12月のトレードで注意すべきポイントは?
2-1.lot数を落としてリスク調整を
2-2.ポジション調整による急激な円高に注意 - 長期的なドル円動向は?
3-1.米金利の低下
3-2.日銀の政策変更は春闘次第 - まとめ
1.12月の相場の特徴
12月の為替相場は、値幅が大きくなる月と言われています。過去10年の値幅を見ると、平均値幅は300pips以上となっており、ドル円では3円程度の値幅が出ています。
大きい年では、ドル円の値幅が6円程度となっており、値動きが小さい年でも1円以上は動いています。良くも悪くも、12月は相場が動きやすい月と言えます。
値幅が大きくなる要因として、市場参加者が減少することが挙げられます。市場参加者が減少すれば、取引量も減少します。取引量が減少しているタイミングで、大きな売買が発生すると、価格が大きく動きやすくなります。
12月になると、多くの機関投資家勢や海外勢はクリスマス休暇を取得します。一方で、12月に入ってもトレードをしている投資家は、トレードを行わなければならない数字上の理由があると言われています。
参加者が減少して流動性が低下しているタイミングでは、予期せぬ変動が生じる可能性があるため、ポジションのリスク量を軽減させましょう。
2.12月のトレードで注意すべきポイントは?
2-1.lot数を落としてリスク調整を
通常月に100pipsしか動かないマーケットで、3lotポジションを取った場合と、12月の平均値幅300pipsの時に3lotのリスクを取った場合、想定損失額は通常月では±300pips、12月は±900pipsとなり、リスクは3倍になります。相場が急変する可能性も考慮して、大きな値幅にも対応できるよう、lot数を落としてトレードしましょう。
通常通りのlot数でトレードを行うと、心理的な負荷が掛かり、思ったようなトレードができない可能性があります。プロトレーダーの筆者としても、12月は難しい月として捉えており、無理なトレードは行わず、無駄なリスクを取らないように心掛けています。
12月中旬以降は利益を追求せず、自信を持ってトレードができる時だけエントリーするようにしましょう。12月は休憩時間と割り切ってトレードは控え、ゆっくりと勉強する時間に充ててもいいでしょう。
お正月を挟んで年明けから相場に戻る投資家が多い日本と異なり、海外の機関投資家は、クリスマス明けから市場に戻り始めます。クリスマス以降は、市場の流動性が回復します。
2-2.ポジション調整による急激な円高に注意
海外の機関投資家は、休暇前にポジション調整として、その年のポジションを解消し、リスク量を減らします。
2023年12月現在、為替市場では日本円ショートのポジションが大きく積み上がっています。ドル円は一時151円台まで上昇したものの、11月下旬から逆流が始まりました。
米金利の低下によるドルの下落も要因ではあるものの、日本円のショートのポジション調整を受けた、買い戻しによる円高圧力も関係しています。12月もポジション調整が継続する可能性があるため、急激な円高を警戒した方がいいでしょう。
ただし、ポジション調整は一時的な要因であり、日米の金利差を考えると日本円のロングを保有し続けることは難しいでしょう。
3.長期的なドル円動向は?
3-1.米金利の低下
※図はTradingView[PR]より筆者作成
2023年12月現在、ドル円は151円台まで再度上昇した後はなかなか上昇できず、米国債金利の低下を伴って失速する動きとなりました。米国の利上げやタカ派姿勢が後退する中で、ここからドルを買っていくことは難しいでしょう。
タカ派として有名なウォラーFRB理事からも、ハト派と捉えられる発言が出ました。金利が低下してきており、市場では来年前半の利下げを織り込み始めていることから、追加利上げなしが既定路線と言えるでしょう。
参照:ブルームバーグ「債券は大幅上昇、FRB理事発言で米金利が低下-日銀オペは据え置き」
3-2.日銀の政策変更は春闘次第
日本円の材料を考えた場合には、日銀の政策スタンスが変更されるかがポイントになります。
植田総裁は、緩和路線は継続しているものの、春闘で賃上げがしっかりと行われるかどうかが大切だと度々発言しています。第一の矢として悪いインフレが始まり、消費者の経済活動は一時的に落ち込む可能性があるが、その後第二の矢として賃金が上昇し、デフレ脱却できるとのスタンスを取っているため、賃金アップとデフレの脱却が確認できた場合は、政策金利の引き上げが議論になってきます。
参照:日本銀行「総裁記者会見」
春闘で賃金がアップすれば、日本円が買われる材料となり、日米金利差も収縮することから、ドル円が更に上値を伸ばす展開は考えにくいでしょう。ただし、日米金利差が完全に埋まる訳ではなく、あくまで金利差が小さくなるだけであるため、長期的にドル円は底堅くなりやすいトレンドは変わらないと考えます。
12月はポジション調整から下落してきており、一旦この動きが続きやすいものの、ショートポジションを保有し続けることは難しく、押し目をしっかりと買っていくトレード戦略は選択肢の一つでしょう。
長期的な下値の目安としては、6月の高値であり、サポートとして機能すると思われる146円付近から138円あたりとなるでしょう。
4.まとめ
本稿では、12月の相場の注意点と、今後のドル円の方向性を解説しました。12月は海外の機関投資家がクリスマス休暇に入るため、急変のリスクを念頭にトレードを行う必要があります。
ドル円は急激な円高のリスクを考慮しつつも、押し目を長期的な買い場と判断するトレード戦略は、選択肢の一つとなるでしょう。
中島 翔
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