先週は英国で政府財政運営と中銀の金融政策の方針が真逆を向いていたことを嫌気して、英債券市場が崩壊し通貨や株までも売られる大波乱となりましたが、その後中銀が短期的な緩和策を発表し、政府と同じ方向を向いたことから市場は落ち着きを取り戻しました。
しかし、市場は乱高下によりかなり疲弊して流動性が落ちているため、ちょっとしたきっかけで大きく動く可能性があります。今回は、RBA・RBNZの金融政策決定会合と米雇用統計について詳しく解説していきます。
※本記事は10月3日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- RBA政策決定会合
1-1.前回(9月)の内容
1-2.直近の経済状況
1-3.今回(10月)の予想
1-4.発表後の反応予想 - RBNZ政策決定会合
2-1.前回(8月)の内容
2-2.直近の経済状況
2-3.今回(10月)の予想
2-4.発表後の反応予想 - 米雇用統計
3-1.前回(8月)の内容
3-2.直近の経済状況
3-3.今回(9月)の予想
3-4.発表後の反応予想
1.RBA政策決定会合
1-1.前回(9月)の内容
予想通り0.5%の利上げを決定、5カ月連続の利上げで政策金利を2.35%に引き上げました。声明文では、インフレ見通しが今後数か月で一段と加速することに合わせて金利も引き上げることを示唆しました。
利上げペースの減速については触れていませんでしたが、政策の「正常化」という文言を削除し、金利が中立に近づいていることを示唆したことから、今後指標次第では徐々に利上げペースが緩やかになってくる可能性があります。
1-2.直近の経済状況
第2QのCPIは前年比+6.1%、RBAが注目しているトリム平均値は前年比+4.9%に上昇しました。
その後9月29日から新たに公表を始めた月次CPIについて7月分と8月分が発表されましたが、7月に前年比+7.0%となった後、8月は前年比+6.8%に僅かに減速しました。ガソリン価格の伸びの鈍化が主因です。
第2Qの賃金指数は前年比+2.6%、前期比+0.7%と堅調さを維持していますが、CPIと比較すると伸びは緩やかです。
8月の雇用統計も+3.35万人と好調です。失業率は3.5%に上昇しましたが、労働参加率も前月の66.4%から66.6%に上昇しているため、程よく引き締めの効果が出ている模様です。
1-3.今回(10月)の予想
市場では0.25%利上げと0.50%利上げの確率はほぼ半々ですが、若干0.50%利上げが優勢となっています。ただ、月次CPIの伸びやRBAの予想ではインフレのピークは2022年後半としていることから、今回は0.5%の利上げになると予想します。
1-4.発表後の反応予想
新興国や資源国など早めに利上げを開始した国では、引き締めの効果が見られるようになってきています。オーストラリアも、今回予想通りに0.5%の利上げが決定されたとしても、今後の利上げのスピード及びインフレ見通しから推測される政策金利の最終到達点がより注目となってきそうです。
今回、もし声明文から利上げスピードの減速が読み取れるようであれば、AUD売りが強まりそうです。ただし、既に最近続いているリスクオフの展開の中で、ショートはある程度溜まっていますので下げ幅は限定的になると予想します。
2.RBNZ政策決定会合
2-1.前回(8月)の内容
予想通り0.5%引き上げて政策金利を2.5%から3.0%に引き上げただけでなく、政策金利の最終到達金利予想も5月時点の3.9%から4.1%に、2022年末時点も3.0%から3.75%に大幅に引き上げています。
声明文でも堅調な雇用、財政出動の継続、押し上げられた交易条件、良好な家計バランスシートによって国内支出は堅調に推移していて、インフレ率を目標の1~3%の範囲に戻すため、消費が十分抑制されていると確信できるまで引き締めを続ける必要があるとの見解で一致したとされています。
2-2.直近の経済状況
第2QのCPIは建設費や家賃の上昇が牽引する形で、前年比+7.3%と第1Qの+6.9%から加速しました。一方で第2Qの民間賃金は伸びているといっても前年比+3.4%で、CPIの上昇率に追い付けていません。
住宅関連指標を中心に冴えない経済指標が続いていますが、RBNZが実施した第3Qの調査によると、1年後の期待インフレは3.02%、2年後の期待インフレは2.27%と第2Qの調査より上昇していますが、それでも概ね賃金上昇の範囲内に落ち着く予想となっています。
2-3.今回(10月)の予想
市場は0.5%利上げを決定し政策金利を3.0%から3.5%に引き上げると予想しています。
2-4.発表後の反応予想
RBNZは主要先進国よりも先行して引き締めサイクルを開始していますが、直近の第2QのNZのCPIは前年比+7.3%まで上昇しているため、まだ、明確に数字になってインフレが落ち着きそうな数字が出てきていないことから今回も0.5%の利上げが妥当だと思われます。オア総裁の発言を参考にしても、恐らく早期に4%程度まで引き上げたあと、引き締めの効果を確認していくという利上げパスが予測できます。
サプライズがあるとするなら、ハト派方向だと考えられます。利上げが0.25%に収まる可能性は低いですが、声明文や総裁の発言のなかから、将来の利上げを中止に対して何かヒントが出てくるようなら、NZDの売りが強まるかもしれません。2年の期待インフレが上がったとはいえ中銀のターゲットの範囲内に収まっていることから、素早く4%超えまで利上げできれば、その後、先進国のどこよりも早く据え置きの段階に入る可能性は考えられます。
3.米雇用統計
3-1.前回(8月)の内容
8月雇用統計は+31.5万人と7月より減少しましたが、予想を上回りました。一方、失業率は3.7%に悪化しました。しかしその原因は、前回の62.1%から62.4%に大きく改善した労働参加率で、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率が82.8%と前月の82.4%から2ヵ月連続で改善していることが主因です。その内訳を見てみると、女性の上昇率が目立ちます。
コロナ規制が撤廃され、一時仕事から離れていた人々が戻っていると考えると、このまま労働人口が増加するなら、賃金の伸びは鈍化し、いずれインフレの落ち着きに繋がる可能性がありますので、要注目です。
3-2.直近の経済状況
8月のISM製造業景気指数は回復していますし、雇用指数が大きく上昇しています。同じく非製造業景気指数でも雇用指数は回復しています。
直近9/24までの週の新規失業保険申請件数は19万3000件とかなり減少しています。ブレが少ない4週移動平均でも20万7000件と5週連続で減少しています。コロナショック前の10年間の平均が30万6000件であることを考えると、水準としては相当低いです。
米国の非農業部門の総雇用者数は前回8月時点で1億5274万人と、コロナショック前の1億5250万人を既に超えてきている状態であるにもかかわらず堅調な雇用増を続けています。雇用主は人員の確保が困難であることから、レイオフを控えつつ労働者を抱え込んでいると思われ、FRBが望むような労働市場の軟化は難しくなるかもしれません。
3-3.今回(9月)の予想
予想は25万人程度と前月から若干減速しますが、そこまで悪い数字ではありません。ポイントは、雇用がタイト⇒賃金上昇⇒需要増⇒インフレというスパイラルが引き締めによって止められるのかという点です。
直近の経済指標では、恐らく雇用者数の大幅減の可能性は低そうです。前回8月の結果の様に労働参加率が更に上昇しているのであれば、将来的な賃金低下に繋がり、インフレが落ち着き始めるという期待が実現される可能性があります。
3-4.発表後の反応予想
雇用者数が大幅に増加していたり、再び失業率が低下するようなことがあれば、FRBの政策金利の最終到達点が更に上方修正されることが織り込まれる中で、もう一段のUSD買いになると予想します。
ただ、既にある程度USD買いは進行しているため、余程市場予想を上振れない限り、値幅は限定的になりそうです。むしろ、将来の物価抑制の兆しが見えるような労働参加率の上昇や平均時給の落ち込みが顕著に出てくるようですと、これまでのUSDロングの調整が入り、大きな値動きとなるかもしれません。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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