今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の大内裕未 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
NEAR Protocol(NEAR)は、Dapps(分散型アプリケーション)の開発を加速することを目的としたオープンソースのプラットフォームです。先月2022年9月11から14日には、ポルトガルのリスボンで「NEARCON2022」が開催され、NEAR周りが盛り上がりを見せています。また、Fracton Venturesとしても、NEAR JapanとしてNEARのエコシステム拡大に貢献しており、先述の「NEARCON2022」には私も現地参加してきました。
本記事では、NEAR上のNFTを活用したプロジェクトをいくつか取り上げて、NEAR上のNFTエコシステムについて解説します。
NEARとは?
NEARは、パブリックでシャード化された開発者向けのProof of Stake(PoS)型のブロックチェーンです。2017年からAlexander Skidanov氏とIllia Polosukhin氏によって開発が始まりました。
NEARの最大の特徴は、Nightshadeというシャーディング技術を導入しているところです。シャーディングとは、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題を解決する技術であり、個別の「シャード」にトランザクションを分散させることで、バリデーターはシャード内のトランザクションのみを処理すれば良くなり、すべてのトランザクションを処理する必要がなくなるので、分散化を犠牲にせずに、高速なトランザクションとガス代の安さを実現できます。
そして、NEARはPoSを採用しているため、炭素排出量が少なく環境に優しいチェーンと言えます。そのためNEAR上には、後ほど紹介するOpen Forest ProtocolなどのReFiプロジェクトが数多く存在します。また、NEARはどのチェーンにも依存しない、独立したレイヤー1ブロックチェーンですが、Rainbow Bridgeというブリッジサービスを提供しており、Ethereumからの資金移動が容易にできるのも特徴です。
NEAR上のNFTエコシステム
NEARは、スケーラビリティ、トランザクション処理の速さ、ガス代の安さが特徴であり、そのためNFTの発行に適しています。EthereumからNEARに切り替えることで成功を収めたプロジェクトもあります。
NEAR上で発行されたNFTのロイヤルティは、どのプラットフォームで販売しても適用されます。そして、ロイヤルティを複数のコントリビューターやDAOに配分することができます。また、NEARは、 NFTマーケットプレイスを構築するためのサポートドキュメントとオープンソースリポジトリを提供しています。開発者やクリエーターの参入障壁を下げることで、ユーザーオンボーディングに繋げています。
NFTプロジェクト事例①:Paras
Parasは、NEARプロトコルで作成されたNFTマーケットプレイスです。Parasは現実世界のトレーディングカードから着想を得ており、一点物ではなく、デジタルトレーディングカードのような同一の形のNFTコレクションのみを扱っています。また、アートワークをクリックするとカードが反転し、その名前、作成日、コレクション、およびその他の情報が表示されます。ParasにNFTを出品するには申請が必要で、毎週30人のアーティストのみが承認されます。アートワークは、64:89のアスペクト比に準拠する必要があります。
2021年12月にはParas Comicをリリースし、今年初めには$PARASトークンのNFTステーキングを導入しました。$PARASのユースケースには、ガバナンス参加、将来の取引やイベントへの専用パスなどがあります。
NFTプロジェクト事例②:Open Forest Protocol
Open Forest Protocol (OFP) は、植林プロジェクトの測定、検証、資金調達を透明性をもって行うためのオープンプラットフォームです。各プロジェクトの情報はNFTのメタデータに永続的に保存、更新されるため、100%透明で追跡可能になります。
森林プロジェクトのオペレーターがプロジェクトをOFPに登録すると、そのデータはNFTとしてオンチェーンに保存されます。フィールドエージェントはモバイルアプリを使用して、データをプロジェクトダッシュボードにアップロードします。すべてのプロジェクトデータは不変かつ透明性を持って保存されます。そして、バリデーターは、人口衛星、IoT、ドローン、AI技術を使用してデータが正当であることを確認し、すべての監視情報をチェーン上に保存します。
森林をNFTとしてオンチェーンで表現し、関連するすべてのデータをNFTのメタデータに保存することで、カーボンクレジットがどの森林から来たのか、何本の木が植えられたか、それらがどれくらい炭素をオフセットしたか、データが正当な方法で検証されたかどうかなどの情報をすべての人が確認できるようになっています。
NFTプロジェクト事例③:DAOrecords
DAOrecordsは、NFTを利用して音楽レーベルの在り方を再構築し、音楽業界を民主化することを目指しているプロジェクトです。あらゆるアーティストのためのオーディオNFT配信プラットフォームとして、アーティストが新しい音楽をAudio NFTとしてリリースし、パッケージ化することをサポートしています。DAOrecordsは2020年の創業以来、100人以上のアーティストから350以上のNFTをリリースしてきました。
また、DAOrecordsはVoxels上の「The Playground」で100以上のバーチャルイベントを開催してきました。音楽とアートに関連したバーチャルイベントを行うメタバースコミュニティの構築を目指しています。
NFTプロジェクト事例④:Raiz
リスボンを拠点とするRaizは、NFTを利用して、都市部の垂直農業(高層ビルなどの高さのある建物の階層や、傾斜面を利用した農業)の農園に資金を提供しています。
Raizは、Raizが栽培する希少な植物種にリンクしたNFTを使用して、従来の農業において重要な問題である二酸化炭素排出量や水の節約などのインパクト指標と結びついた植物のデジタルアート作品を作り、リリースしています。フィジカルとデジタルをリンクさせることで、水耕栽培、垂直農業、太陽エネルギーを投資可能なクリプトに変換しています。
NFTプロジェクト事例⑤:Fayyr
NEARCON2022で正式なローンチが発表されたFayyrは、ユーザーが社会的影響力のある団体とアーティストを同時に支援できるユニークなオンラインマーケットプレイスを提供します。アーティストが作品をFayyrにアップロードし、その収益の一部が、アーティストが選んだ社会的影響力のある団体に寄付されます。
まとめ
NEARは、シャーディングによるスケーラビリティの高さが特徴のブロックチェーンです。ParasやOFPのように、大量のデータを保存する必要があるプロジェクトは、Ethereumのようにガス代が高いチェーンでは実用性の面で実現が困難ですが、ガス代が安くトランザクション処理が速いNEAR上では可能となります。また、NEARは環境に優しいチェーンであるため、ReFiなどの社会的影響を重視したプロジェクトとの相性も良いです。このような理由から、NEAR上のNFTエコシステムにはまだまだ大きな可能性があると言えるでしょう。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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