2021年1月、FX市場はどう動いた?米ドル、ユーロドル、豪ドルをプロが解説

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米国ではバイデン氏が新大統領に就任し、国内でも緊急事態宣言が再発令されるなど大きな動きがあった2021年1月。FXではどのような動きがあったでしょうか?

この記事では、米ドル、ユーロドル、豪ドルの3つの通貨ペアに焦点を絞って、プロのトレーダーに各通貨ペアの動きを解説してもらいます。これからFXをされる方は、参考になさって下さい。

目次

  1. 2021年1月の米ドルの動きは?
  2. 2021年1月のユーロドルの動きは?
  3. 2021年1月の豪ドルの動きは?

1.2021年1月の米ドルの動きは?

2021年1月の米ドルはドル高方向で推移。2020年まではドルインデックスは下落方向で推移していたが、米債金利が長期ゾーンを中心に上昇する中、ドルも強まる動きとなった。

ドルショートのポジションがある程度積み上がっていたことで、短期的にドルショートの買い戻しを誘発した動きも散見された。

ドル円は103円台前半で年初を迎え、一時102円台へ下落する動きとなったが、その後ドル高優勢となる中で、104円台半ばまで上昇。その後は103円台まで軟化するも、再度104円台後半まで上昇した。

バイデン新大統領就任以降は?

1月はアメリカで新大統領就任式が行われたが、大きな混乱も見られず無風の動き。新型コロナウイルス感染症対策のための追加経済対策の期待感から米国株は堅調な推移となっており、ドルも追随する形となっている。

すでに9,000億ドルの新型コロナウイルス感染症対策法案が成立しているため、ここから更に財政出動をするのかどうかという点で疑問視する声もあるが、マーケットとしては、経済対策を好感している様子だ。

株価が堅調な動きとなる中、円売りに傾きやすい状態のため、ドル円は短期的には下落しにくい相場となる可能性もある。

ポジションは?

CFTC(米商品先物取引委員会)の円先物ポジションも大幅に円ロングが積み上がっており、ドルショートのポジションが積み上がっていることから、どこかで円ロングを解消するフローが出ると想定される。

ここから105円台が定着し始めると、ショートカバーを巻き込みながら106円のワンタッチがあることを想定しておきたい状況だ。

ドル円と株価の関連性は金融緩和の環境下では相関係数が低下しており、株高=円安という構図にはなりにくい。ドル円はドル主導での動きになると考えられる。

一方で米国金融緩和が長期化する予想から、ドルが1年スパンで強まる可能性も少ないとみている投資家が多い。テクニカルでは赤色の1月の高値が近いサポートラインとなりそうな状況。

また104円台に今年の安値からのサポートラインが意識されるため、104円台ではロングポジションを構築しつつ、短期的な上昇を取りに行きたい環境。

2021年1月のユーロドルの動きは?

1月のユーロドル相場は下落。年初は1.2300台でスタートするも米債金利上昇からドル高の流れが強まり、ドル主導でユーロドルは下落する動きとなった。

イタリア

イタリアではレンツィ元首相が連立政権からの離脱を表明し、政権が不透明となったこともユーロ売りを後押しする格好となった。さらに、26日にコンテ元首相が辞意を表明したことで政局不安が強まっている。

現在は新内閣発足に向け、28日にマッタレッラ大統領は第3次コンテ内閣の樹立する方向で調整が始まっているとの報道があり、第3次コンテ内閣と連立協議が波乱なく進めばユーロに対しての影響は大きくないと考える。

しかし、連立協議が難航し総選挙の方向性となった場合は、ポジションの傾きからもユーロ高は調整局面に入ることが予想される。

また、貿易依存度が高いため、ユーロ高に対して懸念しているとの声も強まっていた中、21日にラガルド総裁が為替レートの動向がインフレ見通しに対してどのようなインパクトを与えるのかは注視していくということをコメントしている。

この点において、ユーロ高によってインフレを抑制する原因となっている場合は、ユーロ高を是正する対応をするということは認識しておきたい。

各国の総裁

また27日にオランダ中銀クノット総裁が、ユーロ高抑制の手段として利下げの可能性を示唆。28日にはフィンランド中銀レーン総裁も「ユーロ高の動きは注視している。」とユーロ高を牽制する発言。1月に、ユーロ圏内の高官からユーロ高を警戒する発言が相次いで出されていることは頭に入れておきたい。

ECB理事会の影響は?

2021年1月21日のECB理事会において、金融政策としては据置となったがマーケットの予想通りの結果となった。パンデミック緊急資産購入プログラムに関しては、現在設定しているプログラム内の購入枠があるが、全ての枠を使い切って緩和を進めていくかどうかは経済環境や金融環境次第であるとの発言。ラガルド総裁がコメントしたことは、予想外な内容となった。

マーケットは、1月のECB理事会は予想以上にタカ派な内容として受け止めていることもユーロロングのポジションにつながっている。1.2350付近まで上昇していたものの、その後1.2050付近まで300pipsほど下落する動きが継続した。

CFTC先物ポジションでもユーロロングがある程度積み上がっており、ポジションの数字をチェックしても1月末時点でまだかなりのユーロロングが溜まっている。先物ロングポジションが巻き戻されることになると、よりユーロ下落に拍車がかかるような数字となる状況。

ユーロの見通しとしてはイタリアの政局不安、CFTCのユーロの先物ロングポジションの積み上がり(まだ解消されていないポジションが多いこと)、ユーロ高を牽制する動きを鑑みると、ここからユーロドルが一方方向に上昇するという見通しは描きにくいと考えられる。

また、年初からのドル高の動きもあるため、米ドル高主導が重なるとユーロは更に下落する動きにもなる可能性がある。2月は戻り売りの方向でポジションを作ることがベター。

2021年1月の豪ドルの動きは?

1月の豪ドル円相場は豪ドルの底堅い地合いが続き、79円台から80円の間のレンジ相場となった。

オーストラリアは新型コロナウイルス感染症による失われた雇用の9割は回復している状況。制限がある程度かかっているが、オーストラリア国内の経済状況が大きく低迷しているような様子はない。

11月にRBA(オーストラリア準備銀行)が緩和策が開始された。しかし、経済対策のための緩和策というよりもRBAとしては豪ドル高を抑制するための緩和策ということを前面に押し出している。中銀としては、豪ドル高を懸念している様子。

資源の輸出国でもあるため、豪ドル高はオーストラリア経済にダイレクトに影響を与える。今後は、景気が踊り場から持ち直す可能性がある中で、豪ドル高を抑制するために緩和策を継続するか、緩和策は縮小方向にすることで豪ドル高を許容するのかという板挟みとなるだろう。

そのため、今後中期的な豪ドル円の予想は、オーストラリアの緩和策が継続するかどうかが大きなターニングポイントとなる。

緩和策が継続する中では対ドルでは豪ドル安進む中で対円では円安にも推移していることから、豪ドル円は狭い範囲でのレンジとなっている。そのため、トレンドが出た場合はその方向についていくことがポイントとなるのではないか。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12