【イベントレポート】2020年の注目は分散型金融(DeFi)〜最大規模のイーサリアムカンファレンス「EthCC3 @パリ」が開催

今回は、イーサリアムのカンファレンス「Ethereum Community Conference 3(以下、EthCC)」の様子と今後のイーサリアムの動向について解説した渡邉草太氏(@souta_watatata)のコラムを公開します。

目次

  1. EthCC(イーサリアムコミュニティカンファレンス)とは
  2. イーサリアム創業者やコア開発者らも参加
  3. 2020年の注目分野は分散型金融(DeFi)
  4. イーサリアムに残された多くの課題
  5. ブロックチェーン領域全体をカバーするセッションの多様性
  6. まとめ

3月3日から5日にかけて、イーサリアムのカンファレンス「Ethereum Community Conference 3」がフランスのパリで開催されました。本記事では、当日の模様をお伝えすると共に、2020年のイーサリアムの動向について考察を行っていきます。

EthCC(イーサリアムコミュニティカンファレンス)とは

EthCCは2018年から毎年開催されている、イーサリアムコミュニティによる大規模カンファレンスです。フランスを拠点にイーサリアム関連事業を手がける「Ethereum France」が主催しています。

イーサリアムコミュニティとは、イーサリアムの開発および発展に携わる全ての企業や開発者、個人を意味します。

コミュニティ内の主要な起業家および開発者の参加意欲や、パリという欧州中心部にある立地の良さなどが理由となり、ECCには毎年数千人の参加者が訪れています。イーサリアムコミュニティ内で最大規模のカンファレンスといっても過言ではないでしょう。

イーサリアム創業者やコア開発者らも参加

ヴィタリック・ブテリン氏

ここ1ヶ月のイタリアを中心とするコロナウイルス感染拡大への懸念を要因に、欧州圏内のテック系イベントの多くが中止に追い込まれていました。

その影響は当然ゼロではなく、EthCCも開催には踏み切った一方で多数の欠席者が出ました。予定されていたセッションも一部はオンラインでの実施に変更されましたが、中止になったものも少なくありません。

しかしながら、当日の会場はコロナの影響を微塵も感じさせないほどの熱気に包まれていました。参加者同士のネットワーキングは活発で、コミュニティの活気強さをひしひしと感じています。

例年と同様に、スピーカーにはイーサリアム創業者であるヴィタリク・ブテリン氏や、コア開発者であるブラッド氏が名を連ねました。また、今年は元イーサリアム COOで現ConsenSys CEOのジョセフ・ルービン氏も登壇しています。

2020年の注目分野は分散型金融(DeFi)

今年行われたセッションの数はなんと200以上。その中でも特に注目されていたトピックは、ここ数年で大きな成長を見せている分散型金融(Decentralized Finance : 以下「DeFi」)です。実際、全トピックの中で最も多い35以上が、DeFiに関するセッションでした。

今年のDeFi分野のセッションは、大きく3つのタイプに分かれていました。一つ目がデータ分析を通した市場の成長および現状の振り返り。二つ目が新プロダクトの紹介。そして三つ目がレギュレーションに関してです。

1つ目のDeFi市場の振り返りに関してですが、実は1ヶ月前の2月に、DeFi市場全体にロックされている暗号通貨の合計価値が1000億円を突破し話題となっています。成長率はここ1年でおよそ3~4倍だと解説されました。

これは、最近のイーサリアムコミュニティでは比較的大きく取り上げられたニュースです。そのこともあり、EthCC全体でスピーカーがDeFi市場関連のデータを振り返るシーンが頻繁に見られました。

とあるセッション(※以下画像参照)では、DeFiと外部マーケットの市場規模の比較データが用いられ、DeFiの現状が指摘されました。

以下画像によれば、DeFiのマーケット規模は10億ドル(1,000億円)である一方、ビットコイン市場は175億ドル(1兆7,500億円)。そして暗号通貨市場全体では275億ドル(2兆7,500億円)と、DeFi市場規模は依然として僅かなものであることが分かります。

二つ目のDeFiプロダクト紹介ですが、これらの類のセッションでは、DeFiエコシステムの開発および発展スピードに驚かされるばかりでした。印象的だったのは、全体としてこれまで以上にサービスの利便性が重視され、また金融規制を考慮したプロジェクトが多く発表されていた点です。

好例としては複数のDeFiサービスを利用できる暗号通貨ウォレット「Monolith」が挙げられます。驚くことに同社のデビットカードを使えば、ユーザーはヨーロッパ中どこでも暗号通貨だけで店頭決済を行うことができます。また、同社は規制に対しても前向きな対応をしており、英国規制当局にサンドボックス下での運営許可を得てサービス開発を行っています。

最後の規制面についてですが、当イベントのセッションを通して分かったのは、DeFiスタートアップは金融規制やレギュレーターへの対応方法を未だ模索中だということです。そのためか、金融規制に詳しい専門家らが知見を共有する形のセッションが目立っていました。

当然ですがDeFiはまだまだ発展途上のエコシステムです。一般ユーザーに広く受け入れられるまでには、まだ数年ほど時間が必要となるでしょう。しかし次々と新しいサービスが登場しており、開発者らの士気が非常に高いことも事実です。そのため2020年もDeFiの成長は続くと考えられます。

イーサリアムに残された多くの課題

DeFiの成長は素晴らしいことですが、ブロックチェーン基盤としてイーサリアムに残されている問題は数多く存在します。中でも最も代表的な例が、イーサリアムの処理性能の低さ=スケーラビリティ問題です。

同問題に対するアプローチは大きく2つ存在しています。一つ目は、2020年内に実装を予定している「イーサリアム2.0」という大型のアップデート。そして2つ目はイーサリアムブロックチェーンの外部で処理を肩代わりする技術群(=セカンドレイヤー技術)です。

今年のEthCCでは、イーサリアムの著名なコア開発者数人がイーサリアム2.0に関してスピーチを行っていました。内容は主にPoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)へと変更が行われる、次期大型アップデートについてです。

またスケーラビリティに関するセッションは、DeFiに次いで多く行われていました。内容は複数存在するセカンドレイヤー技術に関して、新しいアプローチの提案や進捗の共有などについてです。3日間で合計30件以上のセッションが実施されていました。

その他にもプライバシーやセキュリティ、ガバナンス、UI/UXなど、課題に関するセッションは多岐に渡り、イーサリアムの未解決課題の多さを強く実感しました。

ブロックチェーン領域全体をカバーするセッションの多様性

2019年は、Facebook主導のLibra発表や、中国のCBDC構想、JPモルガンによる暗号通貨プロジェクトなどを好例として、ブロックチェーン業界全体にとって、大きな転換点となる年でした。

その影響もあり、同イベントではエンタープライズ関連のセッションも少なくありませんでした。例えば、デジタル通貨全般に関して概観する形のセッションも存在しています。

またEthCCは、イーサリアムコミュニティ向けのカンファレンスという名目でありつつも、コミュニティ外のプロジェクトや、Web3.0やDAO(自律分散型組織)といったブロックチェーン業界全体に共通するトピックについても広くカバーされています。

以上を踏まえると、EthCCはイーサリアムコミュニティの人間であるか否かに関わらず、ブロックチェーン業界全体のトピックについて幅広く触れることが可能なイベントだということができます。

イーサリアムは現時点でブロックチェーン分野で最も大きな規模を持つ影響力のあるコミュニティです。したがって、閉鎖的にならずコミュニティ外の様々なトピックをカバーするのは重要な姿勢ともいえます。

まとめ

今回のカンファレンスでは、今最も注目されるDeFiの躍進について、そしてイーサリアムの課題について、各分野で活動する起業家や開発者らから現況を学ぶことができました。今後、未解決の課題を解決し、DeFiを中心にイーサリアムが広く普及していくことが期待されます。

また本カンファレンスのセッション動画は全てEthCCのYouTubeにアップされています。興味のある方はぜひご覧いただくことをオススメします。

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渡邉草太

渡邉草太

ドイツ・ベルリン在住。放送大学情報コース在籍。2018年頃からブロックチェーン業界にてライターorリサーチャーとして活動。ブロックチェーン学習サービスPoL(ポル)でリサーチャーとして活動中。主な研究・執筆対象はパブリック・ブロックチェーンの分散型金融システム(DeFi)やフィンテック、分散型アイデンティティなど。Twitter : https://twitter.com/souta_watatata