DeFi&イールドファーミングブームの概要と動向をおさらい!DeFi初心者向けに7つの”リスク”を徹底解説

今回は、DeFiが抱えるリスクについて、渡邉草太氏(@watatata0108)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. DeFiとイールドファーミング
  2. データで見るDeFiブーム
    2-1. 合計ロック資産額(TVL : Total Locked Value)
    2-2. DeFiユーザー数(ユニークアドレス)の増加
    2-3. DEX取引高の急上昇
    2-4. イーサリアム手数料の高騰
  3. DeFi初心者が気を付けるべき7つのリスク
    3-1. ハッキングリスク
    3-2. 中央集権型機関への信用・依存に関連するリスク
    3-3. コンポーザビリティに付随する問題の波及
    3-4. 運営及びガバナンスの失敗
    3-5. スキャム(詐欺)
    3-6. バブル相場の終了
    3-7. 各国当局による強力な規制措置
  4. さいごに

DeFiやイールドファーミングが国内でも話題になってきました。ここ数ヶ月、多くのプロジェクトが立ち上がっては新規トークンの発行を行っており、同時にDeFiトークンの価格は軒並み急上昇しています。

しかし、新しくDeFiサービスを利用し始める人やDeFiトークンのトレードを始める人は、DeFiに潜む潜在的なリスクに気を配る必要があります。十分にリスクを把握しないで今から参入すると、大きな損失を被る可能性があるでしょう。

本記事では、前半に現在のDeFi市場の概況を述べ、後半でDeFiで運用を行う上で気を配るべき7つのリスクを紹介します。

出典 : Pexels

DeFiとイールドファーミング

イールドファーミングとは、レンディングやDEX(分散型取引所)などのDeFiサービスに資産を貸し出す又は提供することで、金利や手数料収入を得る運用モデルです。イールドは”利回り”、ファームは”耕す”を意味します。

例えば、レンディングサービスのCompoundであるトークンを貸し出すと、数%の利回りを得ることが可能です。この利回りは、Compoundでそのトークンを借りたユーザーが支払った金利から捻出されます。

他にもDEXであるUniswapやBalancerでは、トークンを流動性として提供することで、対価として利用者が支払った取引手数料を得ることが可能です。このような流動性を提供する主体は、流動性提供者(リクイティディ・プロバイダー)などと呼ばれます。

上述のイールドファーミングは以前から存在していた既存の運用モデルで、新しいものではありません。ですが最近になって多くのDeFiサービスが、資産の提供者に対し新規発行のガバナンストークンを副次的なインセンティブとして付与(流動性マイニング)し始めたことで、状況は一変しました。

※ガバナンストークンとはサービスの仕様変更の意思決定に参加できる権利(投票権)を表すトークンです。例えばCompoundであればCOMP、BalancerであればBALなどのトークンを指します。
※資産の提供又は流動性を提供することで二次インセンティブとしてガバナンストークンなどの新規発行トークンを獲得する行為を、”流動性マイニング”と呼びます。

流動性マイニングの登場によって、イールドファーミングは数十~千%を超える異常な高さのAPR(年利)を提供できるようになりました。さらにそこに新規発行されるトークンへの投機熱が加わったことで、結果的にDeFiブームに大きな火が付くことになります。

最近のDeFiトークンは発行開始や取引所の上場発表の直後、投機熱の高まりから一気に価格が2~5倍上がることがあります。またそうでなくとも、LENDやSNX、RENのように月間で100%以上のリターンを出す銘柄も少なくありません。

データで見るDeFiブーム

1. 合計ロック資産額(TVL : Total Locked Value)

TVLは、DeFi全体及び各DeFiサービスにどれだけの額の資産がロックされているかを表す指標です。現在、DeFi全体で60億ドル以上の資産がロックされており、MakerDAOに最も多くの資産額がロックされていることが分かります。

※TVLは様々なメディアでよく参照される指標ですが、実際は二重カウントなど計測法に様々な問題があるとされています。二重カウントなどを除くと、約半分の35億ドルになるという試算もあります。

出典:DeFi Pulse

2. DeFiユーザー数(ユニークアドレス)の増加

Dune Analyticsによれば、DeFiサービスのユーザー(ユニークアドレス)数は、今年初めの約8,000から既に25,000まで成長しています。

3. DEX取引高の急上昇

今年の6月頃から、仮想通貨市場の強気相場を背景に、Uniswapが強い実需を掴み始めたことで、DEXの取引高は急成長しています。

【関連記事】Uniswap DEXは何を変えたのか

現在のDEXトップ3であるUniswapとBalancer、Curveは、どれも流動性提供が可能なモデルを採用しており、Uniswap以外の2つは現在進行形で流動性マイニングを通してガバナンストークンを配布中です。

7月中、BalancerはBALを発行したことで、DEX市場の取引高シェアを5%から14%に上昇させました。8月、CurveもCRVの発行開始以降、取引高ではBalancerを抜きDEX第2位になり、TVLはUniswapを抜き10億ドルに到達しています。

4. イーサリアム手数料の高騰

DeFiブームによりネットワークの利用度が激増したことで、手数料は急増しています。少額でイールドファーミングに参加すると、手数料が収益を超過し結果的に損失を抱えるリスクがあるため注意が必要です。

DeFi初心者が気を付けるべき7つのリスク

サービスの利用が増加しトークンの価格が上がっているうちは注目されませんが、DeFiには様々な大きいリスクが存在します。以下では、DeFi初心者やこれからDeFiに参入を考えている人がまず気を配るべき、7つのリスクを紹介します。

1. ハッキングリスク

一般的にどこのプロジェクトもコード監査を受けていますが、The DAO事件のように、何らかの形でスマートコントラクトがハッキングされる可能性は否定できません。最近ではオプション取引が可能なopynがバグを突かれ4,000万円ほどの資産を奪われています。

最近はコード監査をせずにサービスをリリースするプロジェクトもゼロではありません。例えばYAMは未監査のままローンチしましたが、ガバナンスをコードにバグが見つかったことで、結果的にプロジェクトは頓挫してしまいました。

2. 中央集権型機関への信用・依存に関連するリスク

矛盾しているようですが、DeFiエコシステムでは中央集権的なモデルで発行されるUSDTやUSDC、WBTCなどのトークンが少なからず利用されています。特にTether社は長らく担保資産の偽装疑惑をかけられているため、USDTの保有には特に注意すべきです。

加えて、USDTやUSDCの保有者は、規制当局から突然アドレスをブラックリスト化(凍結)されるリスクがあることに気を配る必要があります。

3. コンポーザビリティに付随する問題の波及

ほぼ全てのDeFiサービスは、コンポーザビリティ(構成可能性)と呼ばれるように、複数の外部DeFiコントラクトと複雑に接続していて、互いに扱える機能や資産を共有し合っています。

コンポーザビリティはDeFiの利点の一つですが、諸刃の剣でもあります。あるサービスで起きた問題(例:バグやハッキングなど)は、外部サービスにも簡単に悪影響を与えることになり、またその波及スピードは非常に早いと考えられます。

例えば、ステーブルコインであるDAIは、既に信用リスクを持つUSDCやWBTCを担保の一部に発行されています。しかしそのDAIは、エコシステム内の様々なサービスのコントラクトに預託され、流動性資産や担保資産として利用されたり、債権トークン(例:cDAI、aDAI)として再流通したりしています。

このような過程の中で、トークン本来のリスクは不透明化あるいは隠蔽されていきます。現在のDeFiを見ていると、リーマンショックの引き金となったCDO(債務担保証券)を思い起こさずにはいられません。

巷ではDeFiをマネーレゴと評す風潮がありますが、裏を返せば崩壊リスクを積み上げたジェンガだと言い換えることもできてしまいます。

4. 運営及びガバナンスの失敗

現状、ガバナンスが十分に分散化しているといえるDeFiサービスは多くありません。開発チームが管理者キー(admin key)を持っている場合、彼らはそれを悪用し独断でコントラクトを変更することも可能です。

以上のような背景から、多くのDeFiサービスは、ガバナンストークンを投票権として分配することで、中長期的にコミュニティに管理者キーや意思決定プロセスを移譲することを目指しています。

ただし、一口にガバナンスの分散化が正義とは断定できません。管理者キーや意思決定権をコミュニティメンバーで管理すると、大口ホルダーによる投票乗っ取りのリスクや、意思決定の鈍化による競争力の低下及びバグ対応の遅延など、新しいリスクが生まれてきてしまいます。

5. スキャム(詐欺)

仮想通貨に詐欺はつきものです。DeFi市場は加熱してきているため、新規ユーザーも多いことから、詐欺師に狙われるリスクも高まっています。

DeFiは生来的にコードがオープンなので、簡単にコピー版を作成することが可能です。最近では、Yearn Financeというプロジェクトをコピーした詐欺プロジェクトが3~5つほど生まれた事例があります。

他にも、UniswapのフィッシングサイトやDeFiを語ったExitスキャムなど、詐欺の手口は様々です。そのためDeFiに詳しくない段階では、サービスを利用する前に十分に下調べを行う必要があります。

Uniswapの偽装フィッシングサイト広告

6. バブル相場の終了

イールドファーミングは先行者が有利で高いAPRを実現していましたが、参加者が増加すればするほど収益性は落ちていくでしょう。流動性マイニングも実際はプロモーション的性質が強く、一時的な投機熱に依存している側面があります。

UniswapやdYdXなど、一定以上の評価と規模を持っていてかつ未だトークンを発行していないDeFiサービスも複数ありますが数えるほどです。そしてこれら全てが今後トークン発行を実施するとは考えられません。こうした状況を踏まえると、現行のDeFiの成長モデルは持続的ではないと考えるのが自然です。

残念ながら、現在のDeFiトークン市場は投機熱ばかりが先行しているため、実際の価値以上の価格をつけていると思われるものがほとんどです。DeFiトークンの価格は、連続的な流動性マイニングブームが終わった途端に投機熱が冷め急落する恐れがあります。

7. 各国当局による強力な規制措置

現状、まだSECなどの各国規制当局はDeFiに対して明確な規制的枠組みを定めることはできておらず、当然ほぼ何のアクションも取っていません。ただし今後、DeFi市場がさらに巨大化し、重大なセキュリティ事件やその懸念が増していくにつれ、当局の姿勢は変化していくでしょう。

強力な規制によって、DeFi固有のメリットであるパーミッションレスやコンポーザビリティ、ノンカストディアルなどの利点が奪われた場合、一転してDeFiサービスは競争力を著しく失い、市場は収縮するリスクがあります。

さいごに

当然、以上がDeFiのリスク全てではありません。他にも、今年3月の市場クラッシュ時に起きた、市場のボラティリティの高さやガス代高騰に起因したMakerDAOの担保資産流出は記憶に新しいと思います。(※約4億円分のETHが流出)

しかし、上記の項目を把握することで回避できるリスクはあると考えています。初めてDeFiを利用する場合は、以上のリスクを考慮した上で、まずはテストネットを使ったり、少額かつ利益度外視で利用するのが良いかもしれません。

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渡邉草太

渡邉草太

ドイツ・ベルリン在住。放送大学情報コース在籍。2018年頃からブロックチェーン業界にてライターorリサーチャーとして活動。ブロックチェーン学習サービスPoL(ポル)でリサーチャーとして活動中。主な研究・執筆対象はパブリック・ブロックチェーンの分散型金融システム(DeFi)やフィンテック、分散型アイデンティティなど。Twitter : https://twitter.com/souta_watatata