相場の注目ポイントは労働市場?ドル円の上昇や米株も解説【2023年4月】

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2023年4月現在、アメリカの金融不安から、市場の焦点は労働市場へ移りつつあります。

プロトレーダーの筆者が、市場環境を整理しながら、労働市場が注目されている理由や、ドル円の動向、株式市場のシナリオを解説します。

※本記事は2023年4月10日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 労働市場が注目される理由
  2. 現在の市場の動き
  3. 今後の市場を考える上で大切なこと
  4. 上記から考えるドル円と株式市場の動向
  5. まとめ

1.労働市場が注目される理由

市場では、インフレ動向が注目されています。インフレ動向を占う上で、労働市場に注目が集まっています。

2022年からインフレがなかなか止まらなかった原因として、タイトな労働市場の継続が挙げられます。労働市場がタイトであるということは、企業側が労働者を必要としているにも関わらず、求人への応募者が少なく、労働者の需要が多すぎる状態を指します。企業側は労働者を確保するために、時給や給料を引き上げます。

労働市場がタイトになれば、企業は賃金の引き上げ合戦をします。労働者が増加しない限り、賃金はインフレします。好景気での賃金上昇は良い流れと言えます。

しかし2022年は景気がいいというよりは、コロナショック以降、一旦労働市場から撤退した労働者が市場に戻ってきていない割合が多い状況でした。企業側もある程度の売上が立っており、堅調な個人消費が継続していたため、求人が増加していたという側面があります。需要の増加に供給が追い付いていない状況でした。

インフレ動向を予測するために、労働市場が着目されている理由は、もう一つあります。FRBはインフレを3つの要因に分解して考えています。

まず物の価格の動向、そして住宅市場の動向、最後にサービス価格の動向です。労働市場はこの3つの中で、サービス価格の動向に関連してきます。

要因分解をしてそれぞれ3つのインフレ動向を確認すると、物の価格は落ち着いてきています。住宅市場の動向も売買動向が低下してきており、賃料の低下に反映されることが予想できます。

中央銀行としても、サービス価格の動向に注目しています。サービス価格は賃金動向とも言い換えられます。労働市場のスラックと呼ばれる状況が、どのように変化するかが注目されます。

3月は金融セクターへの不安がマーケットのテーマでした。4月はマーケットの焦点が、賃金動向に戻ってきたと言えるでしょう。

2.現在の市場の動き

4月4日に発表された求人件数の指標・JOLTSは、予想以上の大幅な低下となりました。予想が1,040万件に対して、結果が993.1万人と大幅な減少となり、市場は大きく反応しました。

JOLTSで大きく相場が反応することは今までなく、市場参加者の中では驚きが伺われます。求人件数が大幅に低下すると、堅調だった企業側の数字の悪化が予想できます。企業業績の悪化はインフレ抑制につながるため、市場参加者は大幅な減少に反応したのでしょう。

この経済指標を受けて米国債金利は大幅低下しており、米ドルが売られる動きとなりました。また株式市場も久しぶりの調整安となっており、短期的な上昇の利益確定のフローが入ったと理解できる動きになっています。

ドル円は円高圧力も加わり、131円台まで下落するなどの下落を見せています。当然JOLTSだけで労働市場がどのようになるのか判断はできません。市場が明らかに労働市場、賃金動向に焦点を変化させてきたことが先日の経済指標の反応から判断できます。

3.今後の市場を考える上で大切なこと

JOLTSの動きから、雇用統計の重要性が増しています。雇用統計の項目として、非農業者雇用者数や失業率はもちろん、平均時給と労働参加率も重要です。

平均時給はその名の通り、時給がどれだけ上昇したのかを前月比と前年同月比で比較する指数です。賃金動向の変化を示します。特に前年同月比の伸びが鈍化しているかどうかは見るようにした方がいいでしょう。

プロトレーダーの筆者は、労働参加率も重要な指標と考えています。労働参加率が上昇すると、その分労働市場における労働者の供給サイドが上昇します。労働市場の逼迫度合いが緩和されるため、インフレ抑制効果が働きます。

4.上記から考えるドル円と株式市場の動向

2023年4月現在、ドル円は131~133円台で推移しています。JOLTSの指標が発表された後は、大きく円高ドル安で反応しました。

直近は労働市場の緩みが出る期待感が残るため、米国債金利も上昇しにくい地合いが続き、またドル円の上昇も限定的になると考えられます。一方でドル円がさらに大幅下落する動きになる可能性は低いでしょう。下落しても130円付近が限界だと考えます。

方向感は出にくく、雇用統計の数字次第でさらに下落するかどうかという動きになりそうです。株式市場は一旦短期的な楽観的な見通しが徐々に後退しており、景気鈍化や悪化に対しての懸念が高まってきています。

米国株式市場の上値もそろそろ止まる可能性があり、日本株も米国株につられると考えた場合は株安方向での動きが続く可能性があります。円高圧力が加わりやすいことになるため、株式市場の動向から判断してもドル円の上値は引き続き重く135円を越えるという動きよりは、130円を割れる確率の方が高いと、プロトレーダーの筆者は考えます。

雇用統計次第で短期的に上方向に反応する可能性もあるものの、上昇した場合は戻り売りの機会になるでしょう。

5.まとめ

今回は市場の焦点が変化してきたため、変化と、今後のFXトレードに役立つ視点を解説しました。

トレードでは予測は必要です。しかし一方で、自分の予測したシナリオを過信せず、相場の急変に備えるなどのリスク管理をしましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12