ドル円急落の原因は?雇用統計の結果や今後のドル円動向も解説【2023年12月】

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2023年12月現在、アメリカでは雇用統計が発表されました。雇用統計の発表前には、ドル円が急落しており、今後の動向に注目が集まっています。

本稿ではプロトレーダーの筆者が、雇用統計の結果や、ドル円急落の背景、今後のドル円動向を解説します。是非参考にしてみてください。

※本記事は2023年12月12日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 雇用統計
  2. ドル円急落の背景
    2-1.植田総裁発言
    2-2.12月の季節性
    2-3.個人投資家のロスカット
  3. 今後のドル円動向
  4. まとめ

1.雇用統計

非農業部門雇用者数 19.9万人 予想18.0万人、前回15.0万人
失業率 3.7% 予想3.9%、前回3.9%
平均時給(前月比) 0.4% 予想0.3% 前回0.2%
平均時給(前年同月比) 4.0% 予想4.0%、前回4.1%

雇用統計は、総じて強い数字となりました。雇用統計を受けて、米国債金利は大幅に上昇しました。特に2年金利が大きく上昇し、雇用統計前まで売られていた米ドルの買い戻しフローが発生しています。

FRBによる利下げ期待は後退し、債券投資家の強気なセンチメントが崩れ、2024年3月に予想されていた利下げ開始の確率も低下しています。

ただし、この動きが継続するかは、CPIやFOMCなどの経済指標次第でしょう。

2.ドル円急落の背景

2-1.植田総裁発言

ドル円の急落の一つ目のポイントは、植田総裁による「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」との発言です。市場参加者が日銀の金融政策の変更を警戒する中、政策変更を連想させる言葉だったためです。

参照:ブルームバーグ「金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁

ただし、植田総裁の発言だけが、ドル円が6円も円高に振れた原因ではありません。ドル円の急落の背景には、ドル円をロングで保有していた投資家の損切り注文があります。

多くの機関投資家は、日本円売り・ドル買いで金利差益を享受する、キャリートレードを行っていました。2023年秋からは、米国の利下げへの警戒感が出始め、多くの投資家がドル円のロングポジションを解消するタイミングを見極めている中、植田総裁の発言がきっかけとなったのでしょう。

植田総裁の発言が、雇用統計前日だったことも、大きな値動きの発生に関係しています。

労働市場の動向が注目される中、JOLTSの数字が大きく低下し、労働市場の軟化が確認されたため、雇用統計も弱い数字が出る可能性がありました。仮に雇用統計の数字が弱ければ、ドルは売られます。もしドル売りとなれば、ドル円も下落するため、雇用統計前に多くのポジションが解消されました。

また、雇用統計の後には、アメリカのCPIとFOMCが控えており、強気でドル円を保有するよりは、一旦利益を確定しようと判断したのでしょう。

2-2.12月の季節性

12月という季節性も、ドル円急落の背景として挙げられます。

多くの海外機関投資家は、クリスマスまで休暇を取得します。そのため連休を取得する前に、リスク量を調整します。

また、クリスマスにかけて市場参加者が減少していくため、12月は流動性が大きく低下し、値幅が大きくなる傾向があります。ただしトレンドは発生しにくく、相場が一瞬大きく動いた後、再度反発する動きが出やすくなります。

2-3.個人投資家のロスカット

3つ目の背景として、短期的な個人トレーダーによる、ドル円の押し目買いが挙げられます。相場は、個人投資家が大きな損失を出すタイミングで動きやすくなります。

ドル円は、上昇トレンドが継続していたことから、急落前はロングポジションが優勢でした。トレンドに乗るためにドル円を買いたい個人投資家が多く、147円付近から小さな押し目を拾っていく個人投資家が多かったようです。

急落によって、多くの個人投資家がロスカットに遭ってしまい、その短期的なロングポジションの解消フローが急落の材料に含まれています。

3.今後のドル円動向

雇用統計は強かったものの、再度利上げを促すような状況ではありません。

元々雇用統計前までは、アメリカ経済が鈍化する兆しがあり、市場では利下げを織り込んでいました。行き過ぎた利下げ予測が、今回の雇用統計によって修正されたと言えるでしょう。

FRBの利上げがないと考えた場合、ドルの上値は限定的となります。プロトレーダーの筆者としては、ドル円が再度150円以上を突破するとは考えておらず、戻り売りが無難な戦略であると考えています。

ただし、雇用統計が強いことや、CPIとFOMCが残っていることから、上下に振れる展開は予想しておきましょう。ある程度上の方で細かく分散して指値を出しておきつつ、下落を利益に変えていくFX戦略は、選択肢の一つになるでしょう。

2023年の高値を更新する可能性は低く、ドル高円安トレンドが一服する可能性が高いと言えます。

仮にドル円が再度上昇した場合、152円付近では為替介入が意識されるため、エントリーの水準をどこまで引き付けられるかがポイントになります。エントリーを分散して、指値で売り上がっていくポジションを取る場合、指値が全て成立したと仮定して、事前に最大損失額を計算しておきましょう。

ドル円のショートポジションを構築する場合は、スワップポイントがマイナスになり、長期保有が難しくなるため、エントリータイミングの見極めが重要になります。

4.まとめ

本稿では、アメリカの雇用統計の結果や、ドル円が急落した背景と今後の展開を解説しました。

12月は流動性が低く、ボラティリティが激しくなる月であるため、無闇なエントリーは避けるようにしましょう。FX初心者の場合は、クリスマス明けに海外の機関投資家が市場に戻ってくるまでは、様子見のスタンスがいいでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12