2月、3月の為替相場は円高へ動きやすい?現役ファンドマネージャーが季節要因やアノマリーを解説

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為替相場は、季節ごとに推移の傾向がみられることがあります。投資をしている方には、それらを見て為替相場の推移を予想している方もいるのではないでしょうか。

今回は2月から3月にかけての為替相場の動き方とその背景、またアノマリーの取り入れ方について解説します。

目次

  1. 1.「節分天井、彼岸底」
    1-1.2月の為替の特徴は?
    1-2.3月はの為替の特徴は?
  2. アノマリーとは?その背景は?
  3. 投資する場合、アノマリーの取り入れ方は?
  4. まとめ

1. 「節分天井、彼岸底」

2月の格言に、「節分天井、彼岸底」があります。これは日本株のアノマリーですが、2月の節分頃に天井を付けて、3月の春分の日の彼岸の頃に底値になることを示しています。様々な投資家がこのアノマリーの信憑性を実証していますが、データとして存在するものはありません。しかし、その裏にある実需の動向は、知っておく必要があります。

1月から2月は、北半球では冬になります。12月まで、米国クリスマス商戦の盛り上がりの反動がきますし、特に緯度が高い欧米英では、天候が悪く消費活動が落ちます。

これらの悪い状態は、1か月後の2月・3月の経済指標に現れることから、実際に米株は2月から3月の途中までのどこかで底をつけて、そこから反発というパターンとなるという事例が多くありました。したがって、時期のずれはありますが、日本株もつられて同じようなパターンになることがあります。

1-2.2月の為替の特徴は?

2月は円高になると印象を持っている方もいるのではないでしょうか。

この背景には、米国債の償還・利払いがあります。債券の満期日には債券保有者に額面金額を払い戻さなければなりません。このことを償還と呼び、償還のタイミングで利息がつきます。

米国債は2月、5月、8月、11月と4半期ごとに償還期限が集中しますが、特に2月と8月に大量に償還期限が来ます。特に、日本の投資家は米国債保有残高が大きいため、大量の償還された米ドルが円に換えられることで円高圧力が強まります。

多くの場合は、利払い日が2月中旬に設定されています。利払い金額は、実際に口座に入金される前から分かっているので、米ドルが口座に入ったのを確認してから円転するのではなく、利払い日の前数日から米ドル高円安のタイミングを狙って、米ドル円の売りフローが出てきます。

1-3.3月の為替の特徴は?

3月になると多くの日本企業が決算期に突入します。輸出企業のように、海外で商品を売って外貨を保有している企業は決算に向けて、外貨を円転するニーズがあります。

円転せずにそのまま外貨で保有することもありますが、あまり大量に外貨を保有していると決算の金額が定まらないことや、給料など日本国内での円建ての支払いもあるため、大部分は円に戻すというオペレーションを実施します。

特に、取引量が多い米ドル円では、売りの圧力がかかる月となります。ただし、企業も全く円転をせずに3月まで外貨をため込むというわけではなく、毎月計画的に少しずつ円転をしていきます。その時に目安となるのが、4半期に1度発表される日銀短観の中のドル円採算レートです。

このレートと比較して、円安にいるのであれば、実際に手元に外貨がなくても、ある程度将来のモノの売れ行きを予想しながら、多めに円転していきます。その場合、3月の決算月に至るまでに、円安にいる時間帯が長ければ、ある程度円転は済んでいることになります。

一方で、円高の時間が長ければ、円転ができていないことになりますので、積み上がった外貨の円転圧力が3月末日に向けて日に日に高まっていきます。

3月末日の2営業日前(3月末が受け渡し日になる日)までは何とかして高いところで米ドル円を売りたいということで、売りオーダーを置いて粘るので、円安のチャートポイントでは上値が重くなります。

それでも売りオーダーがつかない場合は、最終日の東京仲値で一気に米ドル円を売ることになります。したがって、日銀短観の採算レートと実際の為替相場を過去半年程度比較しながら、3月の円買い圧力を予測することになります。

2.アノマリーとは?その背景は?

投資には「アノマリー」という言葉があります。アノマリーとは、理論的な根拠のない、頻繁に繰り返されるパターンのことです。

相場の世界のアノマリーには、長年の経験によって培われたものや、後になって根拠がみつかった法則など、完全に根拠がないと言い切れないものまで幅広く存在しています。

例えば、3月は欧米の企業にとってはただの4半期の1つに過ぎませんが、日本の企業や投資家にとっては一年で最も重要な決算期にあたり、特徴のある投資行動をします。

3.投資する場合、アノマリーの取り入れ方は?

アノマリーに乗るべきか、無視すべきか、投資をする上で迷うことがあるのではないでしょうか。上記に挙げたように、後付けでそれらしい理由をつけることはできますが、そういった取引がどこまで相場に影響を及ぼしているのか明確ではありません。

しかし、相場は参加者の心理がそのまま値動きに反映されます。根拠の有無にかかわらず、参加者の売買に偏りがあると、同じ傾向の値動きが起こります。

最近は、コンピューターで解析することが容易であり、このような相場の傾向はすぐに算出されます。データを元に、確率のよい取引に乗る参加者が多く、一旦同じ傾向が出ることがあります。

また、相場の世界のアノマリーには、長年の経験によって培われた格言や、後になって根拠がみつかった法則など、完全に根拠がないと言い切れないものが多く存在しています。有名なアノマリーはそれだけでも相場に影響を与えているので、覚えておいて損はありません。

しかし、そればかりに固執せず、日頃から相場を見る習慣を付けることが必要です。一時的に同じ方向に相場が動いたとしても、多くの人が同じポジションを持っていると、値動きの幅が小さくなり、むしろ逆向きの材料が出てしまい、FXなどで一斉にロスカットというシーンはよく見かけます。

したがって、アノマリーを積極的に活用するのではなく、結果としてアノマリーと「重なった」という状況と認識をするのが良いのではないでしょうか。まずはアノマリーと関係なく為替の動きを見極めて行動し、それがたまたまアノマリーと重なっていたという考え方です。逆に、トレンドと反対方向のアノマリーがある場合には少し意識する程度に取引をすると、ちょうどいいかもしれません。

4.まとめ

今回は、2月と3月の主に日本で行われている実需取引を中心にご紹介しました。為替相場における季節ごとのアノマリーについては、恐らく何かしら原因はあるのだと思いますが、論理的な理由はありません。

世界の国々で異なる事情があって、相場は動いていきます。例えば、2月と3月は、北半球では冬ですが、夏である南半球では消費活動は活発に行われているはずで、全く違った実需取引が行われています。

このような世界中の国々で発生している全ての商慣行を熟知するのは難しく、その国に暮らして実際に体験しないと理解できないことは多々あります。したがって、為替相場の様に海外との関係が重要になる投資については、ある程度アノマリーは存在するという前提に立って慎重に取引をする必要があります。

2月か3月になって、仮に米ドル円を買いたいという相場観になった時には、ふとこのアノマリーを思い出して、少し引き付けて押し目を待つことや、米ドル円を売りたい場合は、利食いは3月中旬までに行うというように、自分の相場観に、アノマリーの考え方を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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