ユーロドル(EURUSD)の値動きの要因は?リスクや今後の見通しも

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為替市場では、米ドルとユーロ、日本円の存在感が突出して高く、BIS(国際決済銀行)が3年ごとに公表している通貨別取引高の2019年のデータによれば、米ドルが40%程度、ユーロが15%程度、日本円が10%程度と、これら3通貨で約7割のシェアを握っています。

そして、通貨ペア別の取引量の中では、ユーロドルが23%で世界第1位の取引シェアを誇る通貨ペアとなっています。ちなみに、ドル円の取引量は18%で、ユーロドルに続いて第2位となっています。

ユーロドルは円が関係しないドルストレートの通貨ペアであるため、日本人からすれば外国同士の強弱を判断しなければなりません。また、アメリカ関係の報道は日本でもまだ多いほうですが、ヨーロッパは日本から遠く、日本国内では大きなニュース以外はあまり報道されない傾向にあります。

そのため、ユーロ各国の政治や経済状況など、どのような材料が注目されているのかといったことをイメージしづらく、どう取引して良いか分からない通貨ペアというイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。

しかし、ユーロドルは取引量が多く流動性が豊富で値動きが比較的穏やかであることから、取引しやすい通貨ペアの一つなのです。今回は、ユーロドルの特性について解説していきます。

目次

  1. 外国為替の特徴
  2. ユーロドルの特性
    2-1.経常収支
    2-2.外貨準備
    2-3.インフレ
    2-4.金利差
    2-5.政治問題
    2-6.地政学リスク
    2-7.財政政策
  3. まとめ

1.外国為替の特徴

商品の輸出入、外国証券や海外不動産への投資、企業の海外進出など、国際的な取引の多くは外国為替を利用して金銭の受払いが行われます。取引に際しては、まず決済通貨を決め、自国通貨から決済通貨に交換しなければなりません。その通貨の交換比率を「為替レート」と呼びます。為替市場は株式市場のように取引できる時間帯が決まっているわけではなく、月曜日から金曜日まで24時間いつでもどこからでもアクセス可能です。

近年、グローバル化が進み人と物の流れが活発化するに伴い、特にアクセスが簡単な為替市場に多くの投機筋が参入してきたことで、為替レートの変動要因が増加しています。為替レートは24時間世界のあらゆるニュースに反応し、基本的には2国間の強弱によりレートが変動します。更に、そこから2次的・3次的にその他の通貨ペアにも影響が波及するなど、為替市場は非常に複雑化して読みづらくなってきています。

2.ユーロドルの特性

以下、ユーロドルの特性について解説します。

2-1.経常収支

経常収支に関しては、万年黒字国はドイツとオランダだけで、その他の国は概ね赤字です。圧倒的なドイツの黒字により、ユーロ圏全体でも黒字となっており、大規模な経常赤字のアメリカと比較すると、フローの流れとしてはユーロ買い方向となります。

2-2.外貨準備

米ドルに次ぐ流動性を誇るユーロは、第2の基軸通貨となりうるポテンシャルがありますし、EUとしても国際的なユーロの存在感を高めようとしています。世界中の中銀が、外貨準備の量を調整する際には、米ドルとユーロの調整が最も多くなるのですが、昨今では政治的に不安定だった米ドルを敬遠してユーロの割合が増える傾向にあり、ユーロ買いのフローが継続して出ている流れです。

2-3.インフレ

ECBは、欧州連合のすべての加盟国の金利を決定する欧州中央銀行の略で、ユーロ圏の金融政策は各国の中央銀行に代わってECBの政策理事会が決定し、各国の中央銀行はその指図にしたがって金融調節を行います。物価の安定が経済成長や雇用の増大に資するとの考えの下、金融政策の第一義的な目的は、物価の安定を維持することになっています。

しかし、EU各国で産業構造やインフレ率などが異なり、同じ金利を適用するとどこかの国に矛盾が発生します。財政政策は各国に委ねられている中、ECBが金融政策だけで物価のコントロールをするのは至難の技です。また既にマイナス金利となり金融緩和の限界が近づいている状況で、直接各国の経済に影響を及ぼすのは通貨ユーロの水準だけになりつつあります。

かつてECBは、ユーロの実効レートが10%上昇すると(ユーロ高)輸入物価が下がり、CPIが0.3~0.4%押し下げられると試算していましたが、現在のような低インフレの環境下では、ECBの本音はユーロ安であることから、ユーロが買われ過ぎるとたびたびECB高官からユーロ高に懸念を表明する発言が出てきます。

2-4.金利差

現在の金利状況(ユーロの方が米ドルよりも金利が低い)では、ユーロドルの取引でスワップを得るためには売り(ショート)ポジションなので、長期投資の方はユーロロング(買い)はしにくくなります。ただ、ユーロ高が進行すると、こういった長期投資家のユーロ売りが出てきますが、日本人が円高になるとクロス円のロングを仕込むという投資行動に似ています。

2-5.政治問題

ユーロは2002年に取引が始まったばかりの新しい通貨で、EU圏27か国のうち19か国が使用しています。上述してきたように、経常収支においても黒字国と赤字国が存在すしたり、南欧と北欧で財務状態が全く変わったりするので、ユーロの水準一つとってみても統一見解が作りにくく、とにかく政治問題が頻発します。

2010年欧州ソブリン危機、2014年ギリシャ問題、2016年イギリスのEU離脱、2017年フランス大統領選(ルペン率いる極右政党国民戦線が躍進)、2018年・2021年のイタリア政治問題、その他ドイツ選挙、スペインカタルーニャ独立、小さいものも含めたら数えきれないほど出てきます。

EU圏で議論し決定したことは、それぞれ国内の議会に持ち返り採決をする流れとなりますが、安易に妥協した案を持ち返ると国内世論の反発を受けますので、EU内で決定するまでにかなり時間がかかることが普通です。

また、イタリア・フランス・ドイツでもそうですが、極右と言われるユーロ離脱も辞さない政党が躍進中で、毎回選挙のたびに不安要素が増えます。

しかし、議案は最終的には合意せざるを得ないことばかりなので、政治問題でユーロドルが売られたところは買い場ともいえます。

2-6.地政学リスク

EU圏は、ロシア、アラブ諸国とも地理的・経済的に深い関係があり、それらの国々で紛争・テロなどが起きたり、経済危機懸念が高まったりすると、ユーロが売られやすくなります。

一方で米ドルは「有事のドル買い」と言われるように、地政学リスクが顕在化すると買われる特性があります。したがって、EU圏が絡む地政学リスクが大きくなると、特にユーロドルは売られやすくなります。

2-7.財政政策

EU圈の場合、通貨と政策金利は統合したにもかかわらず、財政は統合できておらず、制限はあるものの基本的にはそれぞれの加盟国が責任を担って運営する仕組みとなっています。

そのため、短期金利は同一ですが、長期金利は国ごとにばらつきがあります。財政が健全なドイツなどと比較してイタリア、スペイン、ギリシャの国債利回りは高くなるのが普通です。

財政政策が別で長期金利が異なることは、本質的に矛盾しておりどこかで問題が表面化する可能性があります。財政統合で域内の財政調整ができるようになれば、加盟国の間でばらつきがある経済力などの是正につながると期待されますが、昨年、コロナ対策として欧州共同債が決まったことは画期的な第1歩とも言えます。

常にEU解体リスクと隣り合わせで、政治的要因で売られることが多かったユーロですが、欧州共同債決定後は大きく買われました。

まとめ

ユーロドルの特性を考えると、この先暫く変わらない材料としては、経常黒字によるユーロ買いと金利差によるユーロ売りが挙げられますが、これら二つの材料は相殺されてしまいます。したがって、突発的に発生する政治リスクや、株の上下動に伴うリスクオンオフの雰囲気に振らされる展開が当面続きそうです。

流動性は豊富で値が飛ぶことは少ないですし、世界の中心の通貨ペアでオーソドックスに変動しますので、ユーロドルの取引も検討してみてはいかがでしょうか。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」