アメリカ雇用統計とCPIでドル円はどうなる?日銀の金融政策の動向も解説

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2023年1月時点では、ドル円はアメリカの雇用統計やCPIを受け、大きく下落する動きが続いています。日本銀行の動向にも影響を受けているため、複雑に感じる方も多いでしょう。

今回はプロトレーダーの筆者が、アメリカ雇用統計とCPIを受けたドル円の動向を解説します。値動きの予想や、日銀の金融政策の動向についても解説します。参考にしてみてください。

※本記事は2023年1月18日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 雇用統計は平均時給がポイント
  2. CPIを受けドル売りは加速
  3. 今後のドル円のポイントは2つ
    3-1.賃金動向が落ち着いてくるかどうか
    3-2.日銀の金融政策の動向

1.雇用統計は平均時給がポイント

2023年1月の雇用統計の結果について解説していきます。まずは数値面からチェックしましょう。

  • 非農業部門雇用者数 +22.3万人(予想+22万人)
  • 失業率 3.5%(予想3.7%)
  • 平均時給 対前年比+4.6%(予想+5.0%)

主要な数字だけ見ると平均時給以外は良好な数字が出ています、タカ派になり得るとも考えられる数字と言えるでしょう。平均時給は鈍化しており、利上げペースの後退が意識される数字と言えます。

市場はドル売りで反応しました。2023年1月時点では、市場は労働市場を見ていることが改めて確認できました。

アメリカの注目点としては、インフレ率の推移とFRBの政策スタンスの変化が挙げられます。FRBはインフレ率の推移を予測する際に、3つの要因に分解していることが、2022年12月のパウエル議長の発言から分かります。

参考:FRB「Transcript of Chair Powell’s Press Conference

まずは財の価格です。財の価格は物の価格を指します。市場では、物の価格のインフレは、ピークアウトが既に織り込まれています。

次に住宅価格です。住宅価格もピークアウトして鈍化傾向となっています。市場では既に織り込み済みと言ってもいいでしょう。

最後にサービス価格です。サービス価格は賃金動向で左右する数字です。現状では、サービス価格は堅調に上昇しています。マーケットでは、サービス価格の鈍化に注目が集まっています。

平均時給はサービス価格に直接的に影響します。今回の雇用統計では、平均時給以外は良好な数字が出ました。しかし平均時給が意識されて、相場が動いたと整理できます。

ドル円は、ドルが売られ135円付近から132円台まで下落しています。ドル売りは、引き続き継続する動きとなりました。

2.CPIを受けドル売りは加速

次に市場で大きく注目されたCPIについて解説します。

結果は以下の通りです。

  • 総合CPI 対前年比+6.5%(予想+6.5%)
  • コアCPI 対前年比+5.7%(予想+5.7%)

数字は、予想通りの結果となりました。しかし2022年12月から更にインフレ率が大幅に鈍化すると予想がされていたため、予想通りの数字でも市場は反応し、ドル売りに拍車が掛かる動きとなりました。

CPIの内訳は、いくつかポイントがあるため解説します。

まずCPIの大幅低下に寄与した項目として、はエネルギー価格の下落が挙げられます。中古車価格の下落も総合CPIの下落に繋がりました。

しかしエネルギー価格の下落は、既に市場では予想されていました。ポイントは雇用統計と同様に、サービス価格の低下が確認できるかどうかでした。

サービス価格の鈍化に関連した項目は低下していませんでした。市場は、CPIの内訳を無視した値動きになったと筆者は感じています。

家賃は高止まりしているものの、住宅市場の低下が確認できました。家賃の低下は遅れて反応するため、気にする必要はないでしょう。ただし、その他の項目でFRBが安心してタカ派スタンスを弱めるような数字が確認できない点は注意した方がいいでしょう。

CPIの発表の後、2月のFOMCにおける利上げ見通しは、0.25%の織り込みが、70%超から90%超まで上昇しました。CPIを受けてドル売りが進行しました。

CPIが発表される日の午前中に、日銀の政策変更の可能性が読売新聞から報道されました。ドル円は、海外勢が円買いで仕掛けたことで大幅に下落しました。

CPIが発表された日の午前中は、ドル円は132円台で推移していました。しかしCPIを受けて、ドル売り円買いが進行しました。一時127円台まで急落する等、値動きの激しい展開が続いています。

3.今後のドル円のポイントは2つ

3-1.賃金動向が落ち着いてくるかどうか

アメリカの賃金動向が落ち着いてくるかが、引き続き重要なポイントです。サービス価格の低下には、タイトな労働市場が緩和され、労働者が採用しやすい環境になる必要があります。労働者が採用しやすくなれば、採用難による賃金の引き上げが落ち着きます。

2022年の夏場から、転職により年収を引き上げるジョブホッパーと呼ばれる人たちは減少しています。年収が上がりにくい市場へ変化しつつあるものの、求人数は高止まりしています。企業側が採用に苦労している状況は継続しています。

賃金動向を確認するために、求人広告数の推移や、毎月の雇用統計の平均時給、CPIの内訳であるサービス関連の数字はチェックしておきましょう。

2023年は、米国債金利は低下傾向となっています。多くの市場参加者は、ドル円も下落しやすい環境になる予想しています。

しかしプロトレーダーである筆者としては、FRBは急激にタカ派姿勢を緩めず、短期金利は高止まりしたままになると予想しています。ドル円の下落は、125円付近で一旦落ち着くと考えています。

ドル円は下落する雰囲気が強くなっています。しかした資金フローを確認してみると、日本円ショートのポジションの買い戻し圧力が、150円から2023年1月現在の水準までの下落に寄与していると分かります。

IMM先物ポジションを見る限りでは、今後は日本円のショートはある程度買い戻されるでしょう。円高の進行には、新規の円買いのポジションが必要となります。つまり円を買う材料が欲しいタイミングだと言えます。

3-2.日銀の金融政策の動向

米ドルの下落は米国債金利で見つつ、ドル円の動きは日本円の動きも確認する必要があります。

ドル円は18日発表の日銀政策会合での結果によって、上下ともに振れる可能性があります。ただし先物ポジションでは円買いのポジションが溜まっておらず、短期的なドル売りのポジションが積み上がっています。125円台を割れるような動きが一瞬出たとしても、その後は売る材料がなくなり、2月は125円-130円のレンジで推移するのではないかと想定しています。

日銀がイールドカーブコントロールの修正を行い、10年0.50%の上限を引き上げた場合は、日米金利差縮小から円買い材料になります。しかし日米の金利差は引き続き大きい状況であることから、長期的にショートポジションは取りづらいでしょう。円買いドル売りの動きは長続きしないと予想し、短期的なドル円のロングポジションを構築するのも、選択肢の一つでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12