2022年7月現在、世界中の中央銀行で利上げが行われる中、スワップポイントに注目が集まる市場になってきました。FXでトルコリラや南アフリカランド等の新興国通貨に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、相対的に金利の高い新興国通貨に焦点を当てて解説していきます。
※本記事は6月27日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 新興国通貨の代表はトルコリラ、南アフリカランド、ブラジルレアル、メキシコペソ
- 新興国通貨の特徴を2つ紹介
2-1.値動きが大きい
2-2.スワップ金利が高い - 新興国通貨をトレードする上での注意点
3-1.高金利という理由だけでトレードを行わない
3-2.高いレバレッジは利用しないこと - 新興国通貨でトレードを行うコツ
4-1.国の特徴を理解して保有する
4-2.先進国の動向はチェックすること - まとめ
1.新興国通貨の代表例はトルコリラ、南アフリカランド、ブラジルレアル、メキシコペソ
2008年のリーマンショック前まで、多くの投資家が高金利通貨を保有し、金利収入と為替差益どちらも狙っていました。その後リーマンショックが起き、リスク回避通貨である日本円が大きく買われる展開となり、円高が止まらなくなりました。レバレッジを利用していたため、金利収入以上に為替差損が出た投資家もいました。
新興国通貨は怖いというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、新興国通貨は特徴を捉えてトレードを行うことでリスクコントロールしやすくなります。
既に成長した国もあるため一概には言えないものの、新興国通貨は成長の最初のステージにある国の通貨を指します。ブラジル、ロシア、中国、南アフリカ、インド、トルコ、メキシコ等が代表的な国です。
ロシアや中国といった経済大国も含まれており、違和感を感じる方もいるかもしれません。先進国以外の国のことを指していると大まかに捉えましょう。
2.新興国通貨の特徴を2つ紹介
新興国通貨の特徴について説明します。
2-1.値動きが大きい
新興国通貨の特徴として全体的に「値動きが大きい」という特徴があります。先進国と比較して流動性が低いことが主因です。取引量が小さいとも言い換えられます。
※図はTradingViewより筆者作成
上記は代表的な新興国通貨である、トルコリラ、南アフリカランド、ブラジルレアル、メキシコペソ、そして先進国のユーロを全て対ドルのレートで表したチャートです。
チャートは2019年半ばかからスタートしています。緑の太いラインがユーロドルの値動きであり、新興国通貨と比較すると上下の変動が小さいことが分かるでしょう。
トルコリラドルは右軸では2列目のオレンジです。198%となっており、トルコリラの弱さが目立っていることが分かります。
新興国通貨で儲けるためには、まずこの新興国通貨の値動きの大きさを知っておきましょう。
2-2.スワップ金利が高い
次に新興国通貨の特徴としてはスワップ金利が高いことが挙げられます。新興国の政策金利が高いことには理由があります。
通常先進国が政策金利を引き上げるときは、好景気を抑制する目的です。新興国の場合はそれ以上に自国からの資金が流出しやすいという特徴があります。好景気でなくても、資金流出を防ぐために政策金利を高く設定し、自国通貨を保有しておくメリットを作ります。
先進国の景気が良くなり、先進国通貨の金利が高くなった場合には、新興国通貨を保有して金利を得るよりも、値動きが小さい先進国通貨の方が投資家も安心して保有できます。そのため、新興国通貨を売って、先進国通貨を購入するというフローが生まれやすくなります。
先進国が政策金利を引き上げていく場合、新興国は景気がいいか悪いかにかかわらず、自国通貨安に歯止めをかけるために政策金利を引き上げる傾向があるのです。
3.新興国通貨をトレードする上での注意点を2つ紹介
新興国通貨でトレードする場合の注意点を説明します。
3-1.高金利という理由だけでトレードを行わない
スワップポイント狙いで高金利通貨に絞ってトレードを行うことは控えましょう。年間5%金利収入を得ることができる場合、通貨が5%下落しても損益分岐点は割れないということになります。
例としてトルコリラ円の為替の推移をご覧ください。
※図はTradingViewより筆者作成
2008年リーマンショック前まではトルコリラ円は100円以上で推移していたものの、現在では7円台まで下落しています。長期間スワップポイントで稼いだとしても、為替レートが10分の1以下になれば金利収入でカバーすることは難しくなります。
3-2.高いレバレッジは利用しないこと
長期的にFXで資産運用を行うという場合は、高レバレッジでのトレードは避けましょう。新興国は値動きの幅が大きいため、レバレッジを利用するとストップロスに引っかかる可能性があります。
長期的に資産運用で新興国通貨をトレードしたい場合、プロトレーダーの筆者は、レバレッジは2倍までと考えています。
トルコリラ円の場合はレバレッジ2倍でも、ロスカット水準まで追い込まれている場合が過去にはありました。レバレッジは慎重に判断しましょう。
4.新興国通貨でトレードを行うコツ
新興国通貨でトレードを行うコツを解説します。
4-1.国の特徴を理解して保有する
新興国通貨でトレードする場合には国の特徴を理解しておきましょう。
2022年7月現在の相場はコモディティ高となっています。ブラジルやメキシコ、南アフリカランド等は資源を多く保有しており、資源価格の上昇の恩恵を受けられます。そのため、通貨安で推移しにくい相場環境と言えます。
一方でトルコリラは資源を保有しておらず、資源輸入国です。観光業が国の大きな産業の一つとなっていることから、コロナ環境下で観光客が減少しており、売られやすくなっているという特徴があります。
新興国の中で高金利という共通の特徴があっても、国ごとの産業構造は異なります。通貨別に強弱がついてくることから、国の特徴を理解して長期的なスパンで運用することが大切です。
4-2.先進国の動向はチェックすること
新興国通貨のトレードを行う場合も先進国の動向をチェックしましょう。新興国は先進国の経済動向に合わせて連動して動くためです。
特に先進国の資金が新興国に流れて経済成長が起きることや、新興国の資源の輸出先が先進国の場合が多いため、経済は密接に連動しています。
2022年7月現在では株安が進行する中、利上げによって通貨安は防衛されます。今後利下げ局面に転じた場合、新興国の通貨もバラバラな動きになりやすいでしょう。
5.まとめ
新興国の通貨を簡単に金利が高いからといって保有し、レバレッジを掛けると想定外の損失に見舞われる可能性があります。
まずは国々の特徴、先進国の動向、そして足元のマーケットの動向から通貨を選択し、金利の高い通貨に着目してからトレードを検討してみましょう。
中島 翔
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