日銀金融政策決定会合でドル円はどうなる?急伸の理由や今後の相場展開も解説【2024年4月】

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2024年4月現在、日銀金融政策決定会合を受け、ドル円は一時158円まで急伸しました。政策変更は予想通り据え置きとなったものの、円安を牽制する発言や政策はなく、市場にとってサプライズとなりました。

本稿では、プロトレーダーの筆者が、日銀金融政策決定会合や、ドル円の動きを解説します。是非参考にしてみてください。

※本記事は2024年4月28日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 日銀金融政策決定会合
    1-1.政策金利は据え置き
    1-2.植田総裁の会見では円安を懸念するコメントなし
  2. 158円台前半まで円安が進行
  3. ドル円の今後のポイント
    3-1.為替介入は日本時間の早朝に注意
    3-2.積み上がった日本円ショートが解消されれば一気に円高が進行する可能性も
  4. まとめ

1.日銀金融政策決定会合

1-1.政策金利は据え置き

日銀金融政策決定会合では、政策金利は、市場の予想通り据え置きとなりました。前回2024年3月にマイナス金利を脱却してから、更に引き上げる動きにはなりませんでした。

無担保コールレート翌日物の誘導目標が、全会一致で0-0.1%に決定されました。また長期国債には方針の変更がありませんでした。国債の買い入れについては、減額する可能性が予想されていたものの、実際には変更はありませんでした。

展望レポートでは、物価見通しを引き上げています。生鮮食品を除く消費者物価指数は前年度と比較して2024年は+2.8%、2025年は+1.9%としました。

日本の物価上昇率の基調的なトレンドは、需給ギャップの改善に加えて、賃金と物価の好循環が引き続き強まるとしており、物価指数は安定して上昇する見通しであるとしています。

緩和的な金融環境が継続するとし、円安対策は発表されませんでした。

1-2.植田総裁の会見では円安を懸念するコメントなし

植田総裁の会見では、円安を懸念するコメントは出ませんでした。2024年度物価見通しに対する円安の影響を、「今のところ大きな影響を与えているということではない」とし、円安がさらに加速しました。

参照:ブルームバーグ「日銀総裁、円安が基調物価に影響なら判断材料に

日銀金融政策決定会合の1ヶ月ほど前には、物価見通しに円安が影響を与えるようであれば、金融政策を変更する可能性があるとの発言が繰り返され、円安が進行していたため、さすがに円安対策や懸念が表明されるだろうと予想されていました。しかし実際の会見では、円安懸念を突き放す印象の発言が目立ち、市場関係者は肩透かしを食らい、円安が一段と進行しました。

参照:ブルームバーグ「円安による輸入物価上昇、基調物価に反映なら政策変更

2024年3月には「金融政策は為替相場を直接コントロールの対象としていない」と言及し、市場参加者を驚かせています。

参照:ロイター「金融政策は為替対象とせず、経済・物価への影響「十分注視」

総じて植田総裁は、かなりのハト派的な発言を繰り返し、市場参加者にとってはサプライズとなりました。

2.158円台前半まで円安が進行

日銀金融政策決定会合の結果を受けた市場の動きをチェックしましょう。下記はドル円と日経平均株価の先物のチャートです。
日銀政策決定会合後のドル円チャート
※図はTradingView[PR]より筆者作成

12時過ぎに日銀金融政策決定会合の結果が発表され、予想通り国債買い入れも減額とならず金融緩和継続の方針となったことから、ドル円は円売り圧力が強まり上昇しました。発表前は155円台半ばでしたが、その後156円台まで駆け上がる動きとなっており、植田総裁の会見を迎えます。日経平均先物も円売りと同時に買われる動きとなっており、ドル円と日経が同時に上昇する動きとなりました。

そして植田総裁の会見では、円安対策に関するコメントが出なかったことから、投機筋から一気に短期的な円売りで攻められ続け、NY引けには158円台前半まで止まらない動きとなっています。

日銀は為替に関する責任は負っておらず、為替介入への決定権は持っていないものの、152円台から円安に対する牽制発言が出ていたことから、何かしらのコメントや国債の減額等の具体的な政策が出されると思われていました。しかし予想に反して何のコメントもなかったことが、円売りを加速させました。

一時的に急落が発生したものの、短期で終了しています。背景は明確に特定されていませんが、アルゴリズムが反応した可能性や、レートチェックの影響だと言われています。為替介入前には、レートチェックと呼ばれる現在のレートを日銀がチェックする動きが発生し、チャートが急落します。ただし、為替介入ではない限り持続性はありません。

3.ドル円の今後のポイント

3-1.為替介入は日本時間の早朝に注意

ドル円が158円台前半まで急激に上昇したため、プロトレーダーの筆者としては、すぐにでも為替介入が入ってもおかしくない状況だと考えます。

しかし日本政府の外貨準備を見ると、預金は20兆円ほどしかなく、介入をすると外貨準備高の預金部分が枯渇することから、まず米国債を売却して介入のための米ドルを調達するでしょう。

また、為替を動かす場合には、流動性が薄い時を狙う可能性があります。1日を通して流動性が薄くなるのはオセアニア時間であり、日本時間の早朝ならば小さな金額で為替を大きく動かすことができるため、注意しましょう。

東京時間の10時過ぎや、欧州時間の朝方である16時あたりも、為替介入が発生しやすいと言われています。一方でNY時間は、取引量が大きいことから介入のための資金が潤沢に必要になるため、可能性は低いでしょう。

3-2.積み上がった日本円ショートが解消されれば一気に円高が進行する可能性も

次に投機筋の先物ポジションについて解説します。
投機筋のポジション
参照:外為どっとコム「IMMポジション

上記は日本円の、IMM先物ポジションです。日本円ショートに傾いています。通常はここまで積み上がらないため、歴史的にもかなりの傾きと言えます。

日本円ショートのポジションを保有している短期筋やヘッジファンドが、為替介入が入ったタイミングで日本円を買い戻す展開が予想されるため、大きな値幅になるでしょう。

また、日銀金融政策決定会合の1~2週間前からポジションを保有しているなど、コストが悪くなっている投資家から、ポジションを切り始めることが予想されるため、為替介入以外のフローでも、円高になりやすいでしょう。

ポジションが傾いている状況から、2024年4月現在の水準からドル円を買いたいと考えている場合は、再考を検討してみてください。買う場合のタイミングとしては、為替介入後の押し目を狙いましょう。

ただし、日本の単独介入は持続性がなく、ドル円は上昇トレンドにすぐに回帰し、為替介入が複数回行われる可能性があります。そのため介入のオペレーションを数回に分けて、ロングポジションを潰しに行く工夫を行うと考えられます。

4.まとめ

本稿ではプロトレーダーの筆者が、日銀金融政策決定会合の結果と市場の動きや、これからのドル円のポイントについてアップデートしました。

ドル円は値動きが激しくなっています。しっかりとリスク管理を行い、注意してトレードしましょう。難しい相場展開が予想されるため、買いたい場合は焦らず押し目を待ってみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12