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※本レポート中に記載された見解は、執筆時点での妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。
※本レポートは情報提供を目的としており、有価証券の売買の申し込みやその他勧誘を目的とするものではありません。投資の決定に関しては、ご自身でもよくお調べの上、ご判断いただきますようお願いいたします。
債券市場の動向・振り返り
米国債
米国債市場は長期ゾーンを中心に金利低下する展開となりました。金利カーブはベアフラットニング(※)が継続しており、長期債の金利の低下が顕著になっています。
※ベアフラットニング…短期金利と長期金利の差が縮むことで、イールドカーブ(債券利回りと償還期間の相関を表したグラフ)が緩やかになること
ポイントは、初めて米国債30年金利が20年金利を下回り、逆イールドになっている環境です。
長期国債の金利が低下しているという状況は、マーケットが今後インフレが進行すると考えられます。インフレへ対応するための政策金利引き上げによって、経済成長が鈍化するということを示唆しており、世界的なインフレ懸念は、マーケットに引き続き警戒感を与えている状況です。
しかし、20年金利と30年金利が逆転しているのは過度な反応とも考えているため、再度30年金利をショートして20年金利をロングする選択肢も、トレード戦略では有効と筆者は考えます。
日本国債
日銀政策会合がありましたが予想通りの内容となり、黒田総裁の会見も目立ったコメントはなかったことから、相場への影響はほとんどありません。
自民党が単独過半数によって大規模経済対策を行うとなった場合は、国債増発懸念により緩みにくい地合いになってきていることから、金利低下局面では中期ゾーンを中心にショートを基本として見ておきたいところと考えます。
欧州債券
欧州債券市場は、ECB政策会合で引き続きハト派姿勢のスタンスとなり、ラガルド総裁も物価上昇圧力が緩和するとの見通しも公表しましたが、市場はインフレ対策に追われるとの思惑もあり、中期ゾーンを中心に金利上昇する展開でした。
【参照記事】ロイター「NY外為市場=ドル下落、ECB総裁発言と軟調な米指標受け」
特に南欧諸国の金利の上昇圧力が強かった点が見られました。
株式市場の動向・振り返り
世界
米国市場は堅調に推移するなか、中国上海総合指数は下落。日経平均株価とドイツDAXは小幅な値動きで推移しました。
米国株は良好な決算発表を受けてS&P500指数は最高値を更新してきているものの、足元のインフレ懸念や利上げ方向の金融政策のスタンスを意識して上値は重く推移する可能性があるとマーケットでは考えられている様子です。
日本
10月25~29日の日本株の動きは、10月31日の衆議院選挙投開票を前に上下両方向ともに攻めきれず28,500円から29,000円台前半の間での推移が見られました。
衆議院選挙の結果で自民党が単独過半数を確保すれば、一旦は大規模経済対策の期待先行からの上昇によって30,000円を年末までに狙いにいく可能性があります。一方で野党が善戦して自民党の単独過半数を阻止した場合は、経済対策が進まなくなる可能性があることから、年末の株高が期待しにくくなると考えられます。
為替市場の動向・振り返り
外国為替市場は豪ドルが上昇し、新興国通貨は対ドルで下落する展開。豪ドルは、中銀の金利を最低水準で推移させるようにしているにもかかわらず、マーケットはインフレ期待からの利回り上昇を期待して金利上昇する動きから豪ドルが上昇する展開となりました。
一方でユーロは上値が重く推移しており、ECBでのハト派姿勢を示しているが金利は上昇するもユーロ自体の上昇に繋がりませんでした。
ドル円は米ドルも日本円も方向感があまり出ておらず113円台前半から114円台前半の間での推移が継続しました。
米国債で長期ゾーンの金利の上昇幅が限定的となっていますが、11月からは選挙後になります。自民党が過半数を獲得し経済対策からの株高という動きになれば、ドル円も再度114円台後半を目指す形が考えられますが、過半数を割れてしまった場合は円高圧力が再燃する可能性があります。
ドル円は2017年、2018年の高値が114円台後半での水準となっているため、この辺りでの売り圧力は強まると想定されますが、この水準を抜けてくると、トランプ大統領が就任後に到達した118円台がターゲットになってくるという水準は覚えておきたいポイントです。
しかし、日本としては足元の原油高を背景に輸入物価が急上昇しており、黒田総裁は円安は日本にとっていい影響を与えると発言したものの、原油高はある物価に影響するという可能性があることから、ドル円が急上昇する場合に牽制が入ることも少し考えておく必要があります。ネガティブな円安という考え方がマーケットが意識していることはポイントと考えられます。
【参照記事】時事通信社「黒田日銀総裁、インフレ「国内は限定的」 今年度物価見通し下げ―大規模緩和を維持」
新興国通貨は世界的な金利高の様相の中、ジリ安の動きとなりました。ブラジルレアルは、ブラジル中銀が政策金利を50bp引き上げており、米国の利上げに合わせてブラジルも引き上げていくような状況になっています。ブラジルレアル安は金利だけでみると和らぐ可能性ありますが、ブラジルではボルソナロ大統領の新型コロナ対応に対して追求する動きが強まっており、感染者も底打ちしていることから政情不安が改めて発生するとブラジルレアルの上昇幅も限定的となることが考えられます。
中島 翔
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