2021年4月19日~25日の為替動向、月末にかけての見通しは?ファンドマネージャーが解説

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2021年4月19日~4月25日の週は、材料がありながらも、米株・米金利は小動き、為替は若干のドル安となりました。また、ビットコインの下落を受け、市場には動揺が見られた場面もありました。

この記事では、時系列・各国の動きを、1週間の動向と、月末へ向けての展開を、ファンドマネージャーが解説します。

目次

  1. 2021年4月19日~4月25日の振り返り
  2. 月末にかけての注目材料は?3つ解説
    2-1.バイデン施政方針演説
    2-2.FOMC
    2-3.月末需給

1.2021年4月19日~4月25日の振り返り

2021年4月19日~4月25日は、4月18日にビットコインが一日で15%の下落を見せるなど、月曜日の東京時間はややリスクオフの雰囲気となりました。しかし、海外勢参入後から株が底堅く推移すると、リスクオンのUSD売りが優勢となり、USDJPYは108円割れ、EURUSDは1.20超え、GBPJPYは1.40超えと節目を超えていきました。

しかし、4月22日にバイデン政権がキャピタルゲイン税を20%から39.6%に引き上げる計画との報道があり、高値圏にあった株が一気に調整局面となりました。為替市場では、リスクオフのUSD買い・JPY買いとなる局面もありましたが、共和党の反対により議会通過の実現性が低いことから株が反転。週末にかけて、再びリスクオンのUSD売りが優勢となりました。また、BOC(カナダ中銀)の政策決定会合で国債購入額の減額を発表したことなど、タカ派となったことからCAD買いが目立ちました。

先週まで調整気味に低下していた米金利は、1.5%台後半の低位で推移する形となりました。変異株の拡散、度重なるFOMCメンバーからのハト派発言により、利上げ織り込みは2023年末までに3回程度まで減少しました。まだ、FOMCメンバーによる予想を集計したものと比較すると織り込みが進んだ状態ですが、2月末に金利が急上昇する前の水準までは戻ってきており、大体金利の調整も終わったと考えられます。

しかし、名目金利は低下していますが、期待インフレ率は高止まりしているので、最近の高い物価指標を受けて根強い金利先高観は残っている状態です。

また、今週最も注目を集めたのが、バイデン大統領が計画しているというキャピタル税の大幅増税です。マーケットの織り込みは、増税はコロナ終息後、早くても年後半から議論開始であり、増税幅も想定外に大きかったことから、一気にリスクオフで反応しました。対象は、年収1億円以上の超高所得者のみとなっていますが、該当者が株を売却するという連想が生まれ、その他の株式保有者の売りを誘う形となりました。

アメリカは日本と違い、暗号資産も株も同じく20%の税率となっており、そのため売りが働いたため、大幅下落となりました。したがって、仮想通貨との連動を強めているAUDJPYも小幅に下落し、クロス円全般の下落に波及しました。

ただ、このかなり思い切った増税幅を伴う案では、共和党の反対にあうことは必至であり、議会通過の可能性が低いこと、更には欧州の良好な経済指標を受け、株が戻ったことから、クロス円も下げ止まりました。

4/21の日銀政策決定会合は、国債購入額の減額は予想していた人が多かったものの、フォワードガイダンスの部分で、今後の利上げ時期を2023年から2022年後半に前倒ししたことはサプライズとなりました。

FRBは、2023年は利上げをしないというメンバーが過半数となっていますが、基本的にアメリカ経済の影響を多分に受けるカナダは、金融政策面でFRBよりも先手を打ってくることは考えにくい状況です。そんな中、パンデミックからの回復は想定よりも早いとし、2021年のGDP成長率見通しも大きく上方修正するなど、マクレム総裁になってからは経済指標が反映された分かりやすい判断を下しています。

参加者は素直に、良好なカナダ国内経済指標を受けてCADロングを積んでいることから、USDCADは1.24台では下げ止まってしまいますが、引き続き戻り売りを狙っている参加者は多いと考えられます。前任のポロズ総裁は2013年6月の就任以降偏ったCAD安誘導を繰り返してきましたが、マクレム総裁になってから、最安値から半分くらい戻した形となります。今後は、マクレム総裁がどの程度の水準をフェアバリューと考えているのかを、探っていく必要があります。

4/22のECBは、内部の意見がまとまっていない印象を受けます。しかしラガルド総裁は、EUR高を止めようと全体の意見を集約し、ハト派を演出しようとしていると見られています。今回は、記者の質問も第2Qに買い入れペースを速めたPEPPを第3Qはどうするのかという点に集中していました。しかし、現時点では全く議論していないと、強くハト派を演出していました。しかし、いずれにしても、6月のECBでは第2Qの追加緩和に対する効果等について発表しなければならず、追加緩和の余地が殆どないなか、EUR安誘導は厳しくなると考えられます。

最後に、相場への反応は薄いですが、ドイツの選挙において緑の党躍進がニュースになっています。今のところ、EUR相場への反応は殆どなく、メルケル首相率いるCDUの苦戦から若干売りで反応しているという程度です。しかし、緑の党は、積極財政を掲げている党であり、緑の党が政権を取った場合、積極財政によりドイツ金利は上昇し、むしろEURにとっては買い材料になる可能性があります。

2.月末にかけての注目材料は?3つ解説

2-1.バイデン施政方針演説

どのような予算案が出てくるのか注目です。今回の報道された案は20%から39.6%と現行の2倍の増税となる案となっています。既に市場は実現可能性が低いとして、4/23に株・為替は戻していますが、どの程度の税率で落ち着くのでしょうか。

バイデン大統領が率いる民主党の基本方針は、貧富の格差の是正が根底にあり、富裕層に対する増税を実現させてくると考えられます。仮に、法人税と同程度の28%近辺で妥協する場合、市場は株売りで反応することもないと見込み、上手くコントロールしたという認識になるでしょう。

しかし、報道された通りの税率が発表され、追加財政案も纏めて議会の通過が危ぶまれるようであれば、大きな株売り・リスクオフ、クロス円の売りに繋がると考えられます。

2-2.FOMC

市場では、政策や声明の変更はないという見方になっています。前回のFOMC以降、FOMCメンバーの発言からも、特段大きな変化は見られませんが、環境は着実に変化しており、油断はできません。ワクチンの接種は進み、経済活動も徐々に再開され、雇用は急回復しています。1.9兆ドルの現金給付の影響か、消費や景況感はかなり上向きです。住宅市場は活況で価格も上昇しており、ベース効果も含まれていますが、見た目の物価上昇は大きくなっています。

また、先週BOCからはタカ派のメッセージが発表されました。アメリカ経済の回復の恩恵を二次的に受けているカナダの方が、利上げの開始時期予想が早いということに違和感があります。日銀は、既に資産買取額の減少(テーパリング)を始めていますが、利上げは2022年の後半であり、『テーパリングは先行してやるけど利上げは相当先』という、今後の世界の中銀のモデルケースになる可能性があります。

万が一、現在のインフレが一時的ではなかったとして、カナダと同じく2022年後半の利上げの可能性も考えておかなければならないということであれば、テーパリングは今年中に開始する必要があり、6月のFOMCもしくは8月のジャクソンホールで、何かしらのアナウンスを出す必要があります。その場合は、今回のFOMCでも、雇用や物価のトーンを上向きに修正し、地ならしをしてくる可能性があります。この場合、純粋にUSD買いとなるでしょう。

2-3.月末需給

2021年3月末は四半期末ということと、月中の値動きから、強烈なUSD売りとなっていましたが、4月はどうなるか見通しにくくあります。しかし、月末にFOMCなどのイベントがあることで、本来ファンダメンタルズで動く相場が、月末の需給で歪められ、本当の市場の姿が見えにくくなることが問題です。

これまでの経験上、月末はファンダメンタルズ通りには動かないので、あまり慌てて追いかけてエントリーせず、チャートポイントまで引き付けることが得策でしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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