アメリカの雇用統計は予想を大幅に上回る強さに 今後のドル円相場や注意点も解説【2024年2月】

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2024年2月現在、アメリカの雇用統計にて予想を大幅に上回る強い数字が発表され、市場の注目が集まっています。一方で労働市場に関するその他の指標を見ると、決して労働市場が強いと言い切れないデータが出ており、慎重に判断する必要があります。

本稿ではプロトレーダーの筆者が、アメリカの雇用統計や労働市場のその他の指標を整理し、ドル円を中心に今後の相場展開を解説します。是非参考にしてみてください。

※本記事は2024年2月5日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. アメリカ雇用統計の結果
  2. 労働市場のその他の指標
    2-1.アトランタ連銀賃金トラッカー
    2-2.チャレンジャー人員削減数
    2-3.労働コスト指数
  3. 雇用統計を受けたトレーディング戦略のポイント

1.アメリカ雇用統計の結果

アメリカ雇用統計

指標 結果 予想 前月
失業率 3.7% 3.8% 3.7%
非農業部門雇用者数 35.3万人 18.0万人 33.3万人
(21.6万人から大幅上方修正)
平均時給(前月比) +0.6% +0.3% 0.4%
平均時給(前年同月比) +4.5% +4.1% +4.3%
(+4.1%から上方修正)

雇用統計詳細
参照:BLS「ニュースリリース

アメリカの雇用統計を確認すると、非農業部門雇用者数は予想の2倍程度の数字になっており、前月も11.7万人も上方修正されました。平均時給も急激に伸びてきており、非の打ち所がない数字となっています。

雇用統計発表前は、アメリカの労働市場は緩やかに伸びているとの見方が大半でしたが、実際の数字は急激な伸びを示しており、インフレ再燃の懸念が強まる可能性がある数字となっています。

一方で、今回の雇用統計の詳細を確認すると、決して強い数字とは言い切れない点には注意が必要です。

フルタイムの雇用者数は引き続き減少傾向が継続している一方で、パートタイマーの数字は上昇しているため、内容の詳細を確認すると決して良い内容とは言えません。また非農業部門雇用者数の伸びとは対照的に、家計調査の雇用者数は-3.1万人減少となりました。1月における全体の就業人口は伸びておらず、就業者全体の数字は上昇していません。

また雇用統計の調査が行われた期間、アメリカでは大寒波が襲っており、雇用者が時給を上げて労働者を確保するなど、数字を変動させるイレギュラーな要因がありました。週平均労働時間も大幅に減少しており、労働時間の短縮も影響している可能性があります。

そのため今回発表された雇用統計にはいくつものノイズが発生している可能性があり、数字を表面的に受け取り、トレードに反映できないと考えられます。労働市場の需給を図るためには、その他の経済指標も含めた総合的な判断が必要でしょう。

2.労働市場のその他の指標

2-1.アトランタ連銀賃金トラッカー

アトランタ連銀賃金トラッカー
参照:アトランタ連銀「賃金トラッカー

上記は、アトランタ連銀が出している賃金トラッカーです。賃金トラッカーを見ると、賃金が低下しており、再度賃金インフレを意識するような動きにはなっていないことが分かります。

2-2.チャレンジャー人員削減数

チャレンジャー人員削減数
参照:TRADING ECONOMICS「チャレンジャー人員削減

上記は雇用統計の2日前に発表される、チャレンジャー人員削減数です。1月の人員削減数は急増しており、この数字を見る限りでは、労働市場がタイトになっているとは言えません。

チャレンジャー人員削減数の動きは、1月に実施されたハイテク関連の大量解雇とも整合性が取れます。

2-3.雇用コスト指数

雇用コスト指数
参照:Investing.com「雇用コスト指数

雇用コスト指数は、雇用者が支払うコストの変化を示しており、2022年の夏頃をピークに右肩下がりで低下しています。雇用が逼迫している様子はなく、コスト自体は低下傾向が続いているため、雇用統計の動きとは異なっています。

雇用統計以外の指標を確認すると、予想を大幅に上回る強い雇用統計の数字との整合性が取れない部分があることが分かります。2024年2月の雇用統計は、大寒波の影響も踏まえて考えると、後にイレギュラーな数字だったと評価される可能性があるでしょう。

3.雇用統計を受けたトレーディング戦略のポイント

雇用統計の数字は、労働市場に関するその他の指標を見ると、決して労働市場が強いと言い切れないデータが出ており、慎重に判断する必要があるものの、多くの市場参加者が強い数字だと素直に判断し、ドル買いに転じやすい地合いになることが予想されます。

また、3月に利下げする可能性はないと判断できるものの、先物市場では一部利下げ期待が残っていることから、3月の利下げ確率が0%程度になるまではドル高が進行する可能性があります。

米国債は、需給が緩む状況ではなく、利下げの回数から見ると、長期ゾーンでは債券が買われやすい地合いが継続するでしょう。金利の上昇は継続しにくい相場展開が予想されるため、長期的にはドルショート目線でFX戦略を立てることは、選択肢の一つになるでしょう。

仮に利下げ織り込みが年間に1回まで修正されれば、ドル高方向に目線を転じる必要性がありますが、プロトレーダーの筆者としては、利下げが後連れしただけではドルロングに転じるほどの材料にはならないと考えます。今後の相場展開としては、短期的にはドル高が進む可能性があるものの、長期的にはドルは下落する展開を予想しています。

次にドルインデックスのチャートを確認します。
ドルインデックス
※図はTradingView[PR]より筆者作成

ドルインデックスは、足元の上値抵抗線となっていた水準を雇用統計後のドル高によって突破しており、更なる上値余地を作った格好となりました。この動きから、短期的にはドル高が進行する可能性があると判断できます。

色々な材料が錯綜しているため、まずは雇用統計を市場がどのように消化するかに注目してみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12