2022年9月現在、日本の政策金利が引き上げられない環境下で、アメリカでは物価高抑制のために急ピッチで利上げが進行しています。日米の金融政策の方向性の違いはスワップポイントにも影響してきています。ドル円でもある程度スワップポイントを期待できる水準になってきました。
そこで今回は、ドル円のスワップポイントで資産運用する方法を解説します。プロトレーダーである筆者が、注意点についても紹介するので、参考にしてみてください。
※本記事は9月20日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 長期的な資産形成でFXを利用する場合は、スワップポイントに注目
- ドル円スワップポイントはどのくらい発生するのか?
- レバレッジの危険性
- 資産運用でFXを利用する場合は、レバレッジは2倍程度で運用を
- 現在の市場環境からスワップポイントで運用する方法
- まとめ
1.長期的な資産形成でFXを利用する場合は、スワップポイントに注目
スワップポイントとは、2国間の政策金利の差から発生する金利です。通貨を保有すると、その国の政策金利を基準とした通貨金利が発生します。
通貨を保有する場合、ある国の通貨を買い(ロング)、別の国の通貨を売ります(ショート)。ドル円であれば、金利が高い米国の通貨であるドルをロングし、金利が低い円をショートすると、スワップポイントを受け取れます。逆に、政策金利が低い通貨をロングにして、政策金利が高い国をショートにするとスワップポイントはマイナスとなります。
長期的な資産運用でFXを利用する場合は、スワップポイントを効率よく得る戦略を考えてみるのも、一つの選択肢です。
2.ドル円スワップポイントはどのくらい発生するのか?
スワップポイントは、FX会社ごとに異なります。90円は1lot(1万通貨)当たりで比較してみましょう。
FX会社別・ドル円のスワップポイント
GMOクリック証券 | 93円 |
みんなのFX | 92円 |
松井証券のFX | 89円 |
※2022年9月20日現在
※スワップポイントは原則固定
上記を見る限り、大体90円程度のスワップポイントが得られることが分かります。これは1日あたりに得られる金額のため、年間では90円×365日=32,850円がスワップポイントとして得られる計算です。
1lotのポジションを構築するために、必要な証拠金を確認してみましょう。
1ドルを140円として計算した場合、1万通貨のロングポジションを構築するには、140円×1万通貨=140万円となります。
保有している日本円で、1万通貨を購入した場合の利回りは、32,850円÷140万円=0.023(2.3%)となります。
FXでは、レバレッジを掛けられます。少ない証拠金で、大きな金額を動かせる機能です。日本のFX会社での最大レバレッジは25倍です。
1万通貨を購入するために必要な金額は140万円です。ここで、レバレッジを25倍掛けると、140万円÷25=56,000円が1lotのロングポジションを保有できます。
レバレッジ25倍で考えた場合、32,850円÷56,000円=0.586(58.6%)となります。ドル円を、レバレッジ25倍でロングすれば、58%の利回りが期待できます。
数字で見るとリターンの大きい利回りではあるものの、長期的には25倍のレバレッジを掛けることは大きな危険を伴います。FX初心者は、レバレッジ25倍で取引を行った場合、証拠金の大半を失う事態に陥りかねません。実際にトレードする場合は、レバレッジ2~3倍などを目安に設定するのが良いでしょう。
3.レバレッジの危険性
レバレッジを利用すれば、利回りは大きくなります。一方で、為替レートは常に変動しています。為替レートの変動から生じる損失や利益は、証拠金の元本に直接影響します。
証拠金を56,000円入金し、1ドル140円で1lotロングポジションを保有した場合を例とします。1lotで1円変動が生じると、評価損益は±1万円です。
140万円で1lot保有した場合であれば、1円マイナスになったとしても証拠金は139万円になります。一方で、レバレッジ25倍の場合は、証拠金56,000円は、46,000円まで減少する計算です。証拠金が17%も毀損するのです。
3円程度マイナスになった場合は、証拠金の50%以上を失う計算です。レバレッジ25倍の危険性が分かります。
長期的な資産形成のためにスワップポイントを利用する場合は、レバレッジは低めに設定しましょう。
4.資産運用でFXを利用する場合は、レバレッジは2倍程度で運用を
資産運用でレバレッジを利用して運用する場合は、初心者の方は2倍程度で運用することが望ましいでしょう。リスク管理に自信があっても、レバレッジは3倍までが目安です。
2022年9月現在のスワップポイントであれば、レバレッジ2倍としても、4%以上の利回りが期待できます。ただし、証拠金から換算した場合における損失の割合も2倍になるため、注意しましょう。
5.現在の市場環境からスワップポイントで運用する方法
急激な円安の市場環境で、これからFXで資産運用を行うにはどうすればいいのかを、プロトレーダーである筆者が解説します。
まず必ず行うべきことは、エントリーの分散です。ドル円は現在143円(2022年9月15日現在)付近で推移しています。歴史上でもかなりの円安水準です。ただし、この水準では、利用できる証拠金を全て利用して、ロングポジションを取ることは危険でしょう。
アメリカと日本に明確な金融政策の差があるからといって、為替市場が永久的に円安で推移とは言えません。好景気による利上げではなく、物価高を抑制するための「悪い利上げ」を行っているという状況です。物価が落ち着けば、利上げを止める可能性があります。
ドル円のエントリーポイントを、筆者は130円台と見ています。130円台でロングポジションを保有し、次に120円台でロングポジションを積み増していくような、余裕を持ったスタンスで、相場をチェックしてみてください。
ドル円が、すぐに120円台になるとは期待ができません。ただし、長期的にドル円を保有し、スワップポイントを積み上げたい場合は、少しでも円高になったタイミングでのエントリーを狙いましょう。
もしも140円でロングポジションを構築し、年間に32,850円のスワップポイントを得たとしても、為替レートが136円以下になった場合は、スワップポイント以上に評価損を計上してしまいます。
為替レートは変動が大きいものです。無理なエントリーは行わずに、円高になってからゆっくりエントリーを狙いましょう。
6.まとめ
ここではドル円のスワップポイントで運用する方法について解説しました。
2022年9月現在は歴史上でも稀に見ない円安水準です。一方で、円安水準が今後継続するのか、反転するのかは、誰にも分りません。
投資家としてできることは、リスク管理です。無理なリスクは取らずに安定した運用を心がけましょう。
中島 翔
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