ニュージーランドドル円の値動きの特性は?取引のリスクや注意点も

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オーストラリアドルとともに、先進国通貨の中では相対的に金利水準が高いということで個人投資家などに人気の高いニュージーランドドル。ニュージーランドの国鳥にちなんで、「キウイ」とも呼ばれています。

為替市場では、米ドルとユーロ、日本円の存在感が突出して高く、BIS(国際決済銀行)が3年ごとに公表している通貨別取引高の2019年のデータによれば、米ドルが40%程度、ユーロが15%程度、日本円が10%程度のシェア率です。これら3通貨に続く第4位がポンドとなり、5%前後のシェアを占めています。ポンド以下はどの通貨も取引高は少ないのですが、ニュージーランドドルはポンドの1/5程度の取引高となっています。

先進国といってもニュージーランドの経済規模は比較的小さいため、ニュージーランドドルの流動性もあまり高くなく、取引を行う際には激しい値動きに注意が必要となります。今回は、ニュージーランドドル円の特性について解説していきます。

目次

  1. オーストラリアとの相関
  2. ニュージーランド円の特性
    2-1.投機筋
    2-2.金利差
    2-3.貿易
  3. まとめ

1.オーストラリアとの相関

ニュージーランド円の特性の前に、まずは同じくオセアニア通貨として分類されるオーストラリアドルとの相関について話をしなければなりません。

両国は海を挟んで隣同士で貿易や観光分野で経済的に密接なつながりを持っています。貿易相手国としては、輸出・輸入ともにオーストラリアが15%前後で第2位となっていますし、ニュージーランドは観光収入がGDPの10%以上を占める観光立国なのですが、その40%がオーストラリアからの観光収入です。

このような密接なつながりは、為替市場にも影響を及ぼし、ニュージーランドドルはオーストラリアドルと似たような値動きをする傾向があります。実際には、両国の経済構造は全く異なるのですが、両通貨の連動性が高いというイメージが定着していることが、連動性を高める要因になっていると考えられます。

この両通貨の相関の高さを利用して、オーストラリアドルとニュージーランドドルの通貨ペア(以後AUD/NZD)での取引が個人投資家の間で人気が出てきています。似たような動きをするため、値動きが穏やかであることと、両国の中銀(RBAとRBNZ)は同じ方向を向いていることが多く大きなレンジから外れにくいことから、レンジトレードに向いています。

また、仮に中銀の方向性に違いがある場合は、しっかりとトレンドが出てくれますし、レンジブレイクの材料も分かりやすくなっていることが特徴です。

更に、このAUD/NZDを見ることで、マーケットの雰囲気を感じる方法をご紹介します。AUD/ZNDを分解すると以下のようになります。

AUD/NZD=(AUD/USD)/(NZD/USD)

基本的にAUD/USDレートはNZD/USDレートよりも大きくなりますので、AUDもNZDも同じく100ポイント動いたとすると絶対値が小さいNZDの方が変動率は高くなります。つまり、お互い100ポイントずつ上昇するなら、分母にあるNZD/USDの上昇率の方が高いため、AUD/NZDは下がり、逆に、お互い100ポイントずつ下落するのであれば、AUD/NZDは上昇するのです。

勿論、両通貨ペアが同じ値幅動くという仮定の話ですが、リスクオンだとAUD/NZDは下がりやすく、リスクオフだと上がりやすい傾向にあり、AUD/NZDの値動きを見ながらマーケットの雰囲気を感じ取ることが出来るのです。

2.ニュージーランド円の特性

以下、ニュージーランドドルの特性と日本円との関係などを解説します。

2-1.投機筋

ニュージーランドドルは投資家リスク意識の変化を反映しやすいという特徴があります。ニュージーランド自身が資源国というわけではないのですが、高金利になりやすいということと、資源国で株との連動性が高いオーストラリアドルとセットで見られているため、リスクオンになればニュージーランドドルにとってプラス材料になる一方、リスクオフはマイナス材料になります。

逆に円は、これらの通貨の対極に位置し、リスクオンでは売られ、リスクオフでは買われます。したがって、ニュージーランド円は、リスクセンチメントに敏感に反応しやすくなります。

2-2.金利差

ニュージーランドは慢性的な経常収支の赤字を抱えているため、何らかの方法で外貨を呼び寄せ国内にお金を供給することが重要課題とされています。しかし、ニュージーランドは米国のような大国でも機軸通貨を発行している国でもないので、なるべく高金利を維持することで外国からの投資を呼び込む必要があるわけです。

また、インフレ懸念も高金利の背景にあります。ニュージーランドの失業率はOECD諸国の中で非常に低い水準にあり、住宅や家計消費などの内需も堅調です。このため、常にインフレ圧力があり、金利が高止まる要因の一つとなっているわけです。

ただ、高金利によって通貨価値が上昇すると、輸入物価が下がることでデフレ懸念が浮上したり、輸出減・輸入増となってますます経常赤字が拡大したりするという問題が発生してしまいますので、そのコントロールが大変です。

一方で日本は長らくデフレ状態が続き、低金利となっていますし、出口も見えない状況です。したがって、長期でニュージーランド円を保有する場合には、買いから入ってスワップポイントを得るという取引手法が取られがちです。

2-3.貿易

ニュージーランド経済は貿易依存度が高く、GDPの約70%を占めています。最大の輸出先は2013年にオーストラリアから中国へと変わり、輸出全体の2割強が中国向けとなっています。輸入の第1位も中国ですから、ニュージーランド経済は中国経済の動向にある程度影響を受けます。

ニュージーランドドルは資源国通貨と言われていますが、オーストラリアドルとは全く性質が異なります。ニュージーランドは原油や鉱物などの資源を産出せず、酪農業が主要輸出産業であり、全輸出の3割弱を酪農製品が占めています。そのため、ニュージーランドドルは原油や金よりも乳製品といった農産物価格の影響をより受けやすいという特徴があり、ニュージーランドドルをみる際にはそれらの動向に注意する必要があります。

ニュージーランドは世界最大級の酪農製品輸出国ですが、その中でもフォンテラ社は、世界的な乳製品企業です。フォンテラ社の生産者乳価の動向や株価動向がニュージーランドドルに影響を及ぼすことも珍しくありません。乳製品価格は、月に2回開催されるフォンテラ社主催の電子オークションである「グローバルデイリートレード(GDT価格)」がニュージーランドの乳製品価格の基準になる指数で、チェックする必要があります。

近年では肉類などの輸出額も増加してきましたが、酪農製品等や肉類といったソフト・コモディティは、生活必需品も多く、ハード・コモディティに比べ、景気の影響を受けにくいとも考えられます。また、下記の通り、輸出先が分散していることから、一部の国だけの景気動向に左右されることは少ないとも考えられます。

  • 輸出相手国 中国:22.4%  オーストラリア:16.4%  アメリカ:9.9%  日本:6.1%
  • 輸入相手国 中国:19%  オーストラリア:12.1%  アメリカ:10.5%  日本:7.3%

まとめ

ニュージーランドは先進国であり、かつ先進国の中では金利が高めで、貿易量が少ない割には、投機筋が入り込みそれなりに取引されています。しかし、オーストラリアドルと比較すると流動性はかなり劣りますので注意が必要です。

これは、ニュージーランドの国債の発行量が少ないことから、投資家と言っても長期の機関投資家のような腰の据わったフローが入ってこないことが原因の一つです。ただ、近年はニュージーランド債の人気が高まりつつあり、債券市場が活況になるにつれて為替市場の流動性も徐々に増えていくのではないでしょうか。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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