為替介入でドル円はどうなる?前回2022年の相場展開やアメリカの利下げ動向も解説【2024年5月】

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2024年5月現在、為替介入と思われる動きをきっかけに、ドル円が急落しました。

本稿ではプロトレーダーの筆者が、前回2022年の為替介入について踏まえながら、ドル円相場を解説します。是非参考にしてみてください。

※本記事は2024年5月6日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. ドル円の急落
  2. 前回2022年の為替介入
    2-1.2022年の為替介入では市場トレンドが緩やかに変化
    2-2.米国債が原資に
  3. 2024年5月のドル円のポイント
    3-1.利下げ見通しが減少すれば更にドル高になる可能性も
    3-2.仮にドル円が上昇しなければ急落する可能性も
  4. まとめ

1.ドル円の急落

まずはドル円が急落した時の5分足チャートを確認しましょう。
ドル円急落
※図はTradingView[PR]より筆者作成

2024年4月の金融政策決定会合を受け、ドル円は155円台から160円を越える水準まで上昇しました。為替介入と見られる動きが発生すると、159円台から155円台前半まで下落し、一時157円まで上昇するも、154円台半ばまで下落するなど、相場は乱高下しました。

植田日銀総裁から、足元の円安に対して何かしら懸念するコメントや、金融緩和を縮小させるための国債の買い入れなどの政策がまったく出なかったため、2日で5円も円安が進行しました。日本政府も日銀も為替にはノータッチと多くの市場参加者が判断し、短期的な投機筋による仕掛け的な円売りが、ドル円の上昇を加速させました。

1ヶ月で10円かつ2日間で5円の上昇は、政府も過度な変動とみなしたのか、為替介入と思われる下落が発生しました。しかし2024年5月時点では、鈴木財務相はノーコメントを貫いています。前回2022年の為替介入でもコメントを出しておらず、市場を試す内容となりました。

一方で、日銀の当座預金予測を確認すると、為替介入の規模は5.5兆円程度と計算できます。プロトレーダーの筆者としては、5.5兆円で5円程度しか動かなかったことに驚きました。金融政策決定会合前の水準である155円台まで戻っただけであり、トレンドを変化させる効果があったとは言えないでしょう。

2.前回2022年の為替介入

2-1.2022年の為替介入では市場トレンドが緩やかに変化

前回の為替介入は、2022年9月に、3回に分けて実施されました。最初は9月22日に2.8兆円の介入を実施しており、145円を超えたタイミングでした。その後10月21日に、150円を超えたタイミングで5.6兆円、3日後の24日に7.000億円の円買い介入を行いました。前回の総額9.2兆円と比較すると、今回の5.5兆円規模の為替介入はまとまった金額だと評価できます。

一国で行われる為替介入は、短期的な変動をもたらすだけであり、効果がないと言われています。しかし2022年の為替介入では、市場心理を考えたオペレーションを行ったため、市場トレンドが緩やかに変化しました。

2024年4月の円買い介入でも心理的効果が反映され、ドル円の上昇が止まるかに注目です。

2-2.米国債が原資に

為替介入に利用できる原資は、外貨準備高の内の外貨預金の部分だけだと考えられていました。外貨預金は全体の1割程度しかないことから、介入原資は多くないと言われていました。しかしデータを見ると、外貨預金が為替介入に利用された様子はなく、外貨準備のうち大半の割合を占めている米国債を売却して米ドルを調達し、原資にしていたことが分かりました。

米国は為替介入を歓迎しないため、合意を得てから行われると言われています。多額の米国債を売却すれば金利が上昇するため、米国側に報告したうえでオペレーションを行っている可能性があります。今回は事前に、G20にて日米韓の共同声明を出し、アジア通貨の下落に関して懸念を表明していたことから、アメリカの合意は得られていたものと推測されます。

3.2024年5月のドル円のポイント

3-1.利下げ見通しが減少すれば更にドル高になる可能性も

前回2022年は、アメリカのインフレが抑制されてきたタイミングだったことから、為替介入後に円高圧力を作ることができず、ドル円はさらに上昇しました。しかしその後、アメリカの金利低下をきっかけに下落しています。

今回2024年のドル円相場は、投機的な円売りが短期的な上昇の要因となっているものの、アメリカの金融政策の方向性が与える影響は大きいでしょう。2024年4月現在、アメリカの経済状況は底堅く、インフレ懸念が再燃しています。年内の利下げ見通しが減少し、金利上昇していることから、ドル高に推移しています。

特に利下げ見通しに関しては、2024年の年初に年間6回予想されていたものの、直近では1回もしくはなしとの予想が増えています。ドル高のポジションを再度構築し始める動きもみられています。

3-2.仮にドル円が上昇しなければ急落する可能性も

短期的には、ドル円のポジション動向も押さえておきたいポイントです。ドル円の急落以降、ロング(買い)ポジションが急増しています。

ドルロング
※図は取引画面より筆者作成

みんなのFXのリアルタイムポジション(2024年4月30日時点)を確認すると、為替介入前には80%弱の投資家がドル円をショートにしていました。しかし5円ほどの円高の動きによってロングポジションは一掃され、為替介入での押し目買いから、ロングにポジションに傾ける投資家が増えたことが分かります。

ロングポジションが増加するタイミングで、仮にドル円が上昇しなければ、下落しやすくなるでしょう。大きなトレンドは円安である一方、短期的にすぐに数円動く相場状況であるため、強気でロングポジションを取ると損失が発生する可能性があるため、慎重にトレードしてみてください。

4.まとめ

本稿では大幅な円高の要因や為替介入について、2022年と比較しながら解説しました。

円安トレンドが継続しやすい地合いではあるものの、アメリカの利下げ動向次第では円高方向へ進む可能性もあります。ポジションを構築する際には、値動きの激しい動きになる可能性を考慮しましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12