フラクショナルNFTとは?1つのNFTを複数人で所有する方法

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. フラクショナルNFTとは・作成方法
  2. 実例
  3. メリット・デメリット
  4. まとめ

NFTは「代替不能」という言葉が示すとおり同じものが2つと存在せず、1つのNFTを保有できるのは1人だけという特徴を持っています。しかし、1つのNFTを「分割」することによって擬似的に1つのNFTを複数人で保有できる手法が登場しています。この記事ではそうした分割NFT、いわゆるフラクショナルNFTの実例や作成方法に加え、メリット・デメリットもご紹介します。

フラクショナルNFTとは・作成方法

フラクショナルNFTとは、基本的には分割できないNFTの所有権を何らかの方法で分割し、複数人で1つのNFTを保有できるようにしたものです。これにより、アートや不動産などの資産を共同所有するような柔軟な運用が可能になります。

現在のところ、フラクショナルNFTはほとんどの場合Fractional.artというプロトコルを利用して作成されています。そのため、このプロトコルでNFTの所有権を分割する手法が事実上フラクショナルNFTの作成方法のスタンダードと言えるでしょう。

Fractional.artは元になるNFTをNFT Vaultと呼ばれる専用のスマートコントラクトにロックします。すると、このコントラクトはそのNFTの分割所有権を表すトークンをERC-20またはERC-1155のトークン形式で発行します。これが分割されたNFT、すなわちフラクショナルNFTです。これらのトークンは任意の数のユーザーに分配することができ、このトークンを保有しているユーザーは「NFTの分割された所有権の一部を保持している」ということができます。したがって、トークン保持者は元のNFTが第三者に売却された場合には保有しているフラクショナルNFTの量に応じたETHの払い戻しを受けることができるほか、場合によっては元のNFTの管理自体により深く関与することもできます。

実例

では、具体的にどのような場面でフラクショナルNFTが利用されているか見ていきましょう。現在のところ、フラクショナルNFTの仕組みは主にアートの分野で注目されています。

まずは、PleasrDAOというDAO(自律分散型組織)が挙げられます。この組織はカルチャーの面で価値があるNFTを複数人で資金を出し合って購入・保有する投資DAOです。PleasrDAOは21年6月に、ドージコインというトークンのシンボルとなっている犬のNFTを購入しました。その際不特定多数の人々からこのNFTオークションに参加するための資金を募り、最終的に1,696ETH(約7億円、3月30日時点)を集めて落札に成功しています。NFTの所有権はERC-20規格に準拠した代替可能トークン(FT)として、$DOGというティッカーシンボルを与えられて資金の出し手へ分配されました。このトークンは現在7,000以上のアドレスによって保有されており、これは1つのNFTがそれだけの人々に分割されて所有されていると言いかえることもできます。

【参照元】Doge | ZORA

第二に、AzukiというNFTブランドが進めている分散型IP(知的財産)管理の試みがあります。このブランドは10,000個のNFTで構成された同名の人気コレクションをリリースしており、既に活発に取引されています。この現状を踏まえ、開発チームはコレクションを構成するNFTのうち1個に「Bobu」という名前を与え、その所有権を20,000個のERC-1155トークンに分割して売り出しました。チームはこの試みを、NFTの管理に参加する権利を早い段階から所有権保有者に与えることでWeb3時代におけるIPの構築・管理の分散を実験するものだとしています。この言葉の通りBobuのフラクショナルNFTをリリースする際には、Azukiチームとコミュニティメンバーからなる「委員会」の設立や、フラクショナルNFTの参加者が参加できる「投票」システムが構想されており、例えばBobuを利用した商品を制作するかといった提案を期待しているようです。

他に、任意のNFTを分割して購入するためのツールも登場しています。Partybidというツールは特定のNFTを共同購入するためのグループを即席で作り、購入できればそのNFTの所有権をFractional.artで分割してフラクショナルNFTとして配分することができるツールです。数十人のグループで数百万円相当のNFTを購入している例も見られ、1人1人の負担を抑えつつ人気NFTを部分的に所有できるツールとしても利用されているようです。

メリット・デメリット

フラクショナルNFTの利点としては、高価な資産を比較的少ない負担で所有できることが挙げられます。現在のフラクショナルNFTの主な用途はデジタルアートですが、例えば不動産や物理的なアート作品などにも応用できると考えられます。さらに元のNFTはスマートコントラクトによって安全に保管され、NFTとその所有権の記録も全てブロックチェーンに記録されるため、所有権の分割に従来の契約方式を用いる場合に比べてより高い透明性を確保することができます。

また近い将来にクリエイターエコノミーが発展し、例えばイラストレーターのようなクリエイターが活動から正当な報酬を得られるようになった社会では、ファンがクリエイターの作品にアクセスするための費用が現在よりも高くなる可能性があります。なぜなら現在は作品にアクセスするためのコストがゼロ、または比較的低いという現状があり、だからこそクリエイターはそこから報酬を得るのが難しいのであって、「クリエイターが正当に評価され、報酬を得られる」社会では、それを享受するファンの負担がある程度増加することが見込まれるからです。イラストレーターがNFTマーケットに出品した作品が数十〜数百万円で落札されることがある現状も、この予想を裏付けています。しかしこれは多くの人に作品を届けたいというクリエイターの思いに背くことになるだけでなく、分散化、ユーザー主権というWeb3の理念にも反すると考えられます。

フラクショナルNFTはこのような状況の打開に関しても有用だと言えます。たとえば閲覧にNFTによる認証が必要な作品があるとします。この場合、(システムが許すなら)認証用のNFTを共同購入して所有権を分割し、フラクショナルNFTを持つ共同購入者が皆そのコンテンツにアクセスできるようになるといった可能性が考えられます。また、フラクショナルNFTを上手く使えば、クリエイターが作成・販売するNFTを購入したい、しかし取引価格が高額で手が出せない、という場合に共同購入という選択肢を取ることもできます。

従来のフィジカルなアートは分割することができず、それゆえ共同購入しても実際にコンテンツにアクセスできるのは一人だけという不都合がありました。一方でNFTの場合、それが持つ画像や映像、音楽などといったデータは本質的にはNFTに紐付いたメタデータに過ぎず、無限に複製できるものです。しかしだからこそ、フラクショナルNFTによって部分的な所有権を持つユーザーは所有権こそ完全ではなく一部にすぎないものの、完全なコンテンツにアクセスすることができます。これは、一部であっても構わないから作品の所有権を持ちたい、というファンの欲求にも応えるものになるでしょう。

一方の課題としては、まず法的なリスクが挙げられます。代替不可能なNFTは基本的に証券とは見なされませんが、フラクショナルNFTは分割されたトークンそれぞれが代替可能であるため、有価証券に該当すると判断されて規制を受ける可能性があります。これに関しては、米証券取引委員会(SEC)のコミッショナーであるHester Peirce氏が「米国で未登録で販売すると証券法違反に当たる可能性がある」として警鐘を鳴らしています。日本でも同様のリスクを考慮すべきでしょう。

また、元のNFTの所有権としてのフラクショナルNFTがあまりに多くの人々に分散しすぎると、時間が経ったあとで元のNFTを第三者に売却・転送するといった提案をしても十分に注目されず、投票が定足数に満たないために実質的にNFTがまったく動かせない塩漬けの状態になってしまう可能性も考えられます。開発・運営に継続的に注意を払う必要があるDeFiプロトコルのガバナンストークンとは異なり、NFTは基本的に一度入手してしまえばその後にアクションが取られづらいため、より一層忘れ去られるリスクは増すことになります。フラクショナルNFTの保有者の関心を継続的に元のNFTの管理に向けさせる方法、あるいは万一元のNFTが動かせなくなったときのための最終手段が求められているのかもしれません。

まとめ

ここまで見てきたように、NFTの分割所有を可能にするフラクショナルNFTには、NFT、ひいてはデジタル経済に触れるための敷居を低くする効果が期待できます。これからの発展次第では、資産の保有方法に新しい考え方を持ち込むことになるかもしれません。その一方で法的なリスクに対応する必要があるのはもちろん、フラクショナルNFTが基本的にFractional.artという単一のプロトコルを用いて作成されていることから、その作成・運用方法に技術的に改善の余地があるともいえそうです。こうした視点から動向を見守っていく必要があるでしょう。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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寺本健人

寺本健人

Fracton Ventures株式会社リサーチャー。DeFiを中心にクリプト全般のリサーチを行いながら、Solanaブロックチェーンの普及を担うCollectiveグループの一員としても活動。またJPYC株式会社にてリサーチを担当するとともに、UXD Protocolでも活動を行っている。