今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の寺本健人 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
Ads in New York’s Times Square promoting the nonfungible token conference NFT.NYC, Nov. 2, 2021. NFT.NYC, a gathering for nonfungible token enthusiasts, offered a taste of a crypto-filled future. Jeenah Moon—The New York Times/Redux
今回は11月上旬にニューヨークで行われた、NFTをテーマにした大規模カンファレンス「NFT NYC」をご紹介します。NFTはブロックチェーン上に存在するものであり、現実の世界でいったい何をするのか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、今回行われたNFT NYCには合計5,500人以上が訪れ、最終的には大きな成功を収めたようです。この記事では、NFT NYCとはどんな催しであったのかをお伝えし、どうしてそれほどまでに多くの人が集まったのかも考えてみたいと思います。
NFT NYCとは?
2021年の「NFT NYC」カンファレンスは、アメリカのニューヨーク州にて11月2日~4日の会期で開催されました。この催しには一般参加者5,000人以上が参加したほか、スピーカーとしての参加も500人以上にのぼり、今まさに活躍しているNFTアーティストからTikTokのようなメディア企業、NFTの基盤となっているブロックチェーン開発企業まで、NFTに関わるあらゆる分野の人々が登壇して、自身がNFTにどう関わってきたかという個性的な経歴や、これからのNFTのあり方についての展望を語りました。
会期中にはタイムズスクエア近くの4つの劇場で講演やミートアップ(普段オンラインで繋がっている友人と現実世界で会う会)などが行われました。その他、タイムズスクエアの掲示を著名なNFTのイラストがジャックしたり、カンファレンスの中でハリウッドの巨匠・クエンティン・タランティーノ監督がアカデミー賞受賞作品「パルプ・フィクション」のNFTを販売することを発表したりと、NFTがブロックチェーンを飛び出して現実世界に影響を与え始めていることを強く感じさせるサプライズも多数用意されていました。
Quentin Tarantino speaks during the NFT.NYC event in New York. Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
こうしたカンファレンスの様子やジャックされたニューヨークの様子はニューヨーク・タイムズ紙やタイム誌などの主要メディアに取り上げられただけでなく、一般参加者・スピーカーが#NFTNYC2021というハッシュタグをつけて自身のSNSで積極的に発信したため、世界中の人々がその盛り上がりを目にすることになりました。
どうしてここまで盛り上がったのか?
冒頭に述べたとおり、NFTとはブロックチェーン上に記録された所有権の証明でしかありません。所詮はデジタル上にのみ存在するモノであるNFTを何らかの形で現実世界に持ち込むことは、そのあり方を考えると難しいでしょう。
ではなぜNFT NYCはこれほどまでに大きな盛り上がりを見せたのでしょうか。筆者は、NFTにこれまでにない可能性を感じている人々がニューヨークという一つの場所に集ったことで、そこに強固なコミュニティが形成されたからだと考えています。
最近、NFTの価値は「コミュニティ」にあるとする考え方が強まってきています。つまり、NFTの価値の源泉は、NFTに紐付けられた絵画・音楽・映像といったコンテンツだけでなく、同じ種類のNFTを持つ人間どうしで作るコミュニティにも存在する、という考え方です。
NFTとして発行される作品と一般的な絵画に見られる違いの一つとして、NFT作品には同じモチーフをテーマにして数百から数千、ときに数万の作品を一挙に生み出す手法が多く見られるという点が挙げられます。これはNFTがデジタルな方法で生み出される場合が多いためだと考えられます。
例えば広く知られたNFTコレクションの一つであるBored Ape Yacht Club(BAYC)は、類人猿をテーマに10,000個のNFTが発行されています。これはアーティストが用意した様々なパーツをランダムに組み合わせることで実現されています。
こうした背景から、同じコレクションのNFTを保有している人の間では仲間意識が生じる土壌があると筆者は考えています。同じNFTが琴線に触れたのだから、自分と他のNFT保有者は似たもの同士なのだろう、と考えられます。こうして、同じNFTを愛する人の間で強固なコミュニティが形成されます。
とはいえNFTはインターネット上のマーケットプレイスで匿名で取引されることがほとんどであるため、こうしたコミュニティはふつうオンラインで運営されます。しかし、同じコミュニティのメンバーと現実に会ってみたいと考えた時、世界のどこにいるかも分からないのではなかなか難しいでしょう。
そこでその「場」を提供したのがNFT NYCです。
NFT NYCでは主要なNFTコレクションが独自に街頭広告を掲示したり、企画を開催したりと様々なキャンペーンを行ったため、同じNFTを持つコミュニティメンバーが初めて対面する場所としても機能していました。
NFT NYCはカンファレンスとして開催されましたが、そこでNFTのコミュニテイが「現実に現れた」ことはそれと同じくらい大きな意味を持っていると筆者は考えます。オンラインで完結するのが当たり前だったコミュニティにとって、これは今後のあり方や活動の幅において、新たな可能性を開く一歩だと言えるでしょう。
まとめ
NFT NYCという年に一度の場にNFTの未来を信じている人々が集まったことで、ニューヨークの街がひとときNFTに染まりました。それまでNFTを知らなかった人々もこうした光景を目の当たりにし、この新しい技術に触れるきっかけとなった例も少なからずあるのではないかと思います。
また、こうした場で新たにつながりが生まれることで、NFTの次の活用方法が生まれていくのでしょう。そうした新しいムーブメントも楽しみに待ちたいところです。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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寺本健人
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