中国住宅バブル崩壊で豪ドルはどうなる?ロックダウンの影響やコモディティについて解説

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ロックダウンの影響もあり、中国経済が鈍化する兆しが見えています。一部では、住宅バブルが崩壊するとの観測まで出ています。

実は、中国経済はオーストラリア経済と密接に関係しています。豪ドル相場を予想する上で、中国経済の動向は押さえておきたいポイントです。

そこで今回は、プロトレーダーである筆者が、今後の豪ドルの方向性について、2022年9月現在の中国経済の現状を交えながら解説していきます。

※本記事は9月13日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. オーストラリアの最大の貿易国は中国
  2. ゼロコロナ政策で、中国経済が後退
  3. 豪ドルは長期的に上昇しやすい相場環境
  4. 豪ドルへの投資の注意点3つ
  5. 現在の豪ドル円の水準とエントリーポイントの目安
  6. まとめ

1.オーストラリアの最大の貿易国は中国

まず、豪ドルが中国に影響される理由を確認していきましょう。ポイントは、オーストラリアの産業構造や貿易関係です。

オーストラリアは、鉄鉱石や石炭、ポーキサイト等様々な資源を採掘できる、資源国です。2022年9月現在、世界経済がスタグフレーションで後退する中、資源価格の上昇で恩恵を受けている国でもあります。

住宅市場が大きく高騰する等、物価上昇の波はオーストラリアにも押し寄せてはいます。ただし、資源価格の上昇の恩恵により、他の国々と比較して経済の痛みは少ないと言えるでしょう。

オーストラリアの最大の貿易国は中国です。中国に対して資源の輸出量が大きいため、中国への輸出量がオーストラリアの経済やGDPに影響を与えると言われています。

資源依存型の産業構造から脱却を図ろうと、オーストラリアは観光産業に力を入れています。しかし中国からの影響は依然大きいままです。中国側も輸入量を意図的に減少させ、オーストラリアとの交渉材料に利用しています。

2.ゼロコロナ政策で、中国経済が後退

2022年9月現在、中国経済はゼロコロナ政策により、コロナ感染者を0にするためにロックダウン等を行なった影響で、大きく景気が後退しつつあります。特に不動産市況は施工中のマンションの工事が進まず、住宅ローン債権者がデモを起こし、銀行に対する住宅ローンの支払いを拒否するなど、混乱が続いています。

中国の不動産牽連のディベロッパーの株価も大きく急落しています。従来、中央銀行であるPBOCは、市場に流して力技で景気を下支えする政策を行うことを躊躇していました。住宅バブルの原因の一つとして、過去行なってきた大規模な景気刺激策があると認識しているためです。

しかし経済刺激策として、先日約20兆円のパッケージを準備したと発表しました。ロックダウンの経済への影響は予想以上に大きく、不動産関連セクターは危機に直面しており、中国政府が重い腰を上げたとも言えそうです。

中国の通信機器大手であるファーウェイでは、世界経済が長期的な後退期に入る中では、規模追求から利益とキャッシュフロー確保へと焦点を切り替えなければならないとのコメントを、創業者が社員に向けて出しました。

参考:ロイター「ファーウェイ、景気後退下で焦点は規模追求から利益確保へ=創業者

中国経済がすぐに持ち直すというシナリオは描きにくく、世界経済が高インフレで打撃を受けている中、中国だけ回復するのは難しいでしょう。

3.豪ドルは長期的に上昇しやすい相場環境

以上の中国経済の動向を踏まえ、2022年9月以降の豪ドルの相場を解説します。

オーストラリアは、資源を保有している国です。資源を国内で消費すれば、輸入物価の上昇が抑制されます。他の先進国と比較しても、インフレは落ち着きやすいと言えます。インフレが先進国で最初に落ち着く方向に進む可能性が考えられます。

利上げ幅は他のインフレに悩まされている国よりも、大きくはならないでしょう。米国のような利上げを大きく急ピッチで行っている国の通貨の方が、短期的には上昇しやすいでしょう。

一方で長い目でみると、オーストラリアのインフレが先に落ち着き、経済の打撃が他の先進国と比較しても小さい場合には、豪ドルは先に経済が回復し、良い意味での利上げ方向に進む可能性が出てきます。長期的には、利上げを継続する可能性があります。豪ドルは、下落したタイミングで買っていくFX戦略も、選択肢の一つでしょう。

また中国経済は習近平国家主席の一党独裁制です。経済が大きく落ち込めば、体制が揺らいでしまう可能性があり、政治地盤を固める上で譲れないポイントです。中国経済が急激に落ち込むとは考えにくいでしょう。景気が悪化すれば、中国政府は力技で底堅く推移させるような政策を打つ可能性があります。

一時的に中国株が急落し、豪ドルも下落する局面では、豪ドルは買い場とも考えられるでしょう。

4.豪ドルへの投資の注意点3つ

豪ドルは米ドルや日本円等と比較し、流動性が低い通貨になります。急激な変動が生じる可能性もあるため、リスク管理を行いましょう。

リスク管理を行うのは豪ドルに限ったことではありません。ただし、流動性が薄く値動きが生じやすい通貨の場合は、よりセンシティブに行う必要があります。

また短期的な視点では、中国の不動産バブル崩壊がこのまま進むのかに注意しましょう。中国政府は、バブル崩壊を食い止めるために景気刺激策として大きな金額を投入する予定です。一方で、この金額で十分なのか、そして他のセクターに波及しないのか等、まだまだ不透明な部分が数多く残されています。

政府の予想を上回って中国経済が崩れた場合には、豪ドルも影響を受けるでしょう。中国はコモディティ消費量が大きい国です。豪ドルに波及する流れとしては、中国経済が下落→コモディティ価格の低下(需要後退)→オーストラリアからの輸入量が減少→オーストラリアの貿易収支が悪化→豪ドル下落となります。

5.現在の豪ドル円の水準とエントリーポイントの目安

現在豪ドル円は足元の円安の環境下で大きく上昇を続けており、97円台に到達しています。

豪ドル相場
※図はTradingViewより筆者作成

次の上値の目処としては2014年の102円、そして2013年につけた105円が視野に入っている状況です。足元の上昇を考える上で、豪ドルが強いわけではなく、日本円が弱いだけという点がポイントです。

下記のAUD/USDのチャートをご覧下さい。対ドルでは豪ドルが売られていると分かります。豪ドル円は上昇トレンドです。

豪ドル円チャート
※図はTradingViewより筆者作成

フィボナッチリトレースメントで見ると、90円付近が一旦の目処になりそうです。ただし、現在の水準から7円ほど下落した水準であるため、じっくりと押し目待つ必要があります。

相場は無理してエントリーを行うと、負ける確率が高くなります。焦らず、エントリーの水準まで待ってからエントリーを行うようにしましょう。

6.まとめ

今回は豪ドルの方向性を、中国経済との関連性から解説しました。

為替市場は色々な要因で変動します。その時々のポイントが分かるようになると、値動きを予想しやすくなります。

今回の記事に興味を持った方は、豪ドルの取引の開始を検討してみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12