【特集コラム】ビットコインの価格高騰はどこまで続くのか?

今回は、ビットコインの価格高騰の背景について、ビットコインを使った投げ銭やコンテンツの購入ができる「Spotlight」のチーフエンジニア 小川 裕也 氏に解説していただきました。

目次

  1. ビットコインの価格高騰、3つの背景
    1-1. 価値の保存機能に企業が注目
    1-2. 機関投資家の参入と株式市場
    1-3. 決済プラットフォーマーの参入
  2. 企業や機関投資家の参入による影響
    2-1. 流動性の低下
    2-2. 個人間送金の衰退
    2-3. スケーリング問題の再来
  3. まとめ

昨年12月から価格が上昇し続け、その勢いが止まることを知らないビットコインですが、なぜこれほどまでに価格が高騰しているのでしょうか?今回はビットコインの価格高騰の背景についてみていきたいと思います。

ビットコインの価格高騰、3つの背景

1-1. 価値の保存機能に企業が注目

まず最初に注目したいのが、MicroStrategy社やSquare社などの米国企業がビットコインを購入し、資産の一部を米ドルからビットコインへ換えていることです。新型コロナの影響もあり、景気が落ち込んでいるため、各国中央銀行は量的緩和を持続させていく方針です。昨年、米国FRBは量的緩和を再開し物価上昇を目指しているなか、いち早くインフレヘッジとして米国企業はビットコインを購入しだしました。

法定通貨は中央銀行によって供給量のコントロールが可能な一方、発行上限が2,100万BTCと決まっているビットコインは法定通貨よりも価値の保存機能に優れているとされています。今後はインフレヘッジとして注目され、他の企業も追随する形で購入することが予想されます。

1-2. 機関投資家の参入と株式市場

次に、機関投資家の参入があげられます。グレイスケール社はビットコイン投資信託(以下、GBTC)を運用する会社で、現在ビットコインを世界一保有している会社です。その保有数は570,000BTCを越えており、ビットコイン流通量の約3%に達しています。GBTCは証券として扱われるため、機関投資家がビットコインの現物を保有する必要がありません。そのため、ウォレット管理やビットコインの流出・紛失リスクがなく、簡単にビットコインへ投資することができます。また、証券口座が使えるので税制面でもメリットがあります。

さらにGBTCは証券なので株式市場で売買ができます。今までビットコインの売買であれば仮想通貨取引所やDEXのみでしか売買できませんでしたが、GBTCは株式市場で売買ができます。これによりこれまでビットコインは他の市場との相関関係があまりありませんでしたが、新しい市場へ流入することで、仮想通貨市場の高いボラティリティが緩和される可能性がでてきます。

現在の米国ではビットコインETF(上場投資信託)は認められていませんが、GBTCや他のビットコイン関連ファンドによる実績や制度が整えば、ビットコインETFも承認されるかもしれません。それにより今後ますます機関投資家の参入も期待されています。

1-3. 決済プラットフォーマーの参入

決済プラットフォームを提供するPayPal社は昨年仮想通貨の売買サービスを開始しました。また同社は今年2021年に買い物の支払いに仮想通貨が利用できるサービスを提供する予定で、それにより仮想通貨の普及が広まる可能性があります。さらに、アダルト動画大手のPornHubが決済手段を仮想通貨のみに限定したこともビットコインをさらに注目させた理由の1つではないでしょうか。

上記3つの観点から見て、今の状況は2017年末の仮想通貨バブルとは大きく異なることが分かります。2017年のバブルは個人投資家による投機筋が目立ちましたが、今回の価格高騰の背景には、企業や機関投資家の存在があります。では、今後もビットコインの価値は上昇するのでしょうか?以降では企業や機関投資家の参入による影響について見ていきます。

企業や機関投資家の参入による影響

2-1. 流動性の低下

ブロックチェーン分析企業であるChainalysis社によると、ビットコインの流通量(現時点で約1,860万BTC)の60%が非流動的であると分析しています(下記図のオレンジ色)。これは「価値の保存」という特徴に魅力を感じている人が多く、ビットコインの蓄積をメインとしている所謂「ホドラー」が大多数を占めていることを表しています。

残りの40%については、20%のビットコインが秘密鍵の紛失などにより消失していると報告されています(下記図の黄色)。そのため、流動性のあるのビットコインは全体の20%で、主に取引所などで売買されています。しかし取引所がもつビットコイン残高も減少傾向にあり、今後長期投資目的で買い集める企業が増えることで流動性が低下すれば、新規参入者への障壁になる可能性があります。


【引用元】Chainalysis Insights:”60% of Bitcoin is Held Long Term as Digital Gold. What About the Rest?

2-2. 個人間送金の衰退

ビットコイン価格の高騰に伴い、ビットコイン送金の送金手数料も高騰しています。以前の記事で送金手数料について紹介しましたが、現時点で10分以内に送金を完了させるには約1,000円ほどの手数料がかかります。企業や機関投資家であれば豊富な資金があるので、数千円程度の手数料は取るに足らないでしょう。しかし、ビットコインの原点である個人間送金という目的に対して、高額な手数料は大きな障壁となっています。

お金には「価値保存機能」、「交換機能」、「価値尺度機能」の3つの機能があり、いずれも欠かすことのできない機能です。このままでは交換機能がうまく働かず、ビットコインはお金としてではなくゴールドのような資産へ向かっていく可能性があります。

2-3. スケーリング問題の再来

そして価格高騰による影響はスケーリング問題へと帰着します。スケーリング問題とは、ビットコインを初めとしたブロックチェーン全般が抱える問題で、ブロックチェーンを使うユーザーが増えることで送金処理が遅延し、それが原因で送金手数料が高騰する問題です。

今後、一般企業などの参入が続くと、価格高騰はもちろんですが、それに比例してビットコインの取引件数が多くなり、既存のビットコインブロックチェーンでは処理が追いつかなくなります。スケーリング問題の解決策はライトニングネットワークと呼ばれるレイヤー2ソリューションが主流となりつつも、まだまだ取引所や一般ユーザーへの普及は進んでいません。

ライトニングネットワークでは、電子マネーのように事前にビットコインをライトニングネットワーク対応ウォレットへチャージして使います。ビットコイン送金の都度ブロックチェーンへの書き込みをする必要がなく、ブロックチェーンのスペースを逼迫しない技術です。

既存の金融システムにもオンライン取引や、電子マネー・クレジット決済などのオフライン取引があるように、ビットコインにも同等な仕組みが構築されつつあるのです。今年ビットコインは、匿名性の向上やスケーリング問題の緩和が期待されているTaprootと呼ばれる大型アップデートが実施される予定で、まだまだビットコイン・ブロックチェーンの進化は続くでしょう。

以上より、企業や機関投資家の参入によるビットコインの価格高騰の背面下でも、スケーリング問題への取り組みは着実に進んでおり、今後5~10年での展望として、ビットコインの価値の保存としての需要はもちろん、決済手段としての需要も増えると筆者は期待しており、価格は今後も上昇していくと予想しています。

まとめ

ビットコインの価格高騰の背景には、価値の保存として注目した企業によるビットコイン購入や、既存の証券として扱われるビットコイン投資信託への機関投資家の参入、さらに決済プラットフォーマーによる暗号資産の取扱など、主に企業による買い付けが影響しています。しかし、企業や機関投資家の参入による価格高騰により、個人間送金として機能しなくなる可能性があり、いわゆるスケーリング問題が今後さらに顕著になると予想されます。この問題を解決するには、オフチェーン技術であるライトニングネットワークのアダプションや、さらなるブロックチェーンの改善が進められており、技術の進歩と比例して価格も上昇傾向になると思われます。

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小川裕也

小川裕也

金融系SIerとして在職中にビットコインと出会い、その革新性に魅了されフリーのエンジニアとなる。ビットコインを活用したデジタルコンテンツを配信できるプラットフォーム「Spotlight」を開発・運営。仮想通貨が実社会で活用できるサービスの研究開発をしている。