【特集コラム】あなたのビットコインは安全?「自分で管理するお金」ビットコインの保管方法とは

今回は、暗号資産初心者にとって難解な「ビットコインを所有する」という概念と暗号資産の世界で推奨されるビットコインの保管方法について、ビットコインを活用したコンテンツプラットフォーム「Spotlight」のチーフエンジニア 小川 裕也 氏に解説していただきました。

目次

  1. ビットコインを所有する
  2. ビットコインの保管とリスク
  3. ビットコインをスマートコントラクトで保管する
    3-1. スマートコントラクトの活用
    3-2. 鍵保管サービスの活用
  4. まとめ

ビットコインを所有するとはどういうことでしょうか。例えば、不動産や株は、国や企業がそれを管理したり発行する主体として存在し、その信頼や法律によって所有するという概念が生まれます。しかし、ビットコインの所有概念はそれとは少し異なっています。本稿ではビットコインの所有や保管方法(取引所やウォレット)について解説します。

ビットコインを所有する

最近はビットコインを筆頭に暗号資産全体の価格が上昇してきており、暗号資産に興味をもつ方が増えてきているのではないでしょうか。もしみなさんがビットコインを購入したいと思った場合、基本的には国内の暗号資産取引所へ口座を開設して購入することになると思います。ビットコインなどの暗号資産を購入後、どのように保管するかについて考えてみたいと思います。

まず初めに、ビットコインを所有するとはどういうことかを見ていきましょう。取引所でビットコインを購入し、そのまま取引所へ預けている場合、もちろんそのビットコインは購入者のものです。そのビットコインを他の暗号資産へ交換したり、他のビットコインウォレットへ出金することができます。しかし、もしその取引所がハッキングなどの被害を受けてコインが流出してしまった場合、あなたのビットコインは戻ってこないかもしれません。

このような事例は2014年に発生した「マウントゴックス事件」をはじめ、国内外の取引所を問わず頻繁に起きています。ビットコインを取引所へ預けていて、それが盗難などにあった場合は、ユーザーは債権としての権利をもつとされ、取引所へはビットコインの返還請求権があるとみなされます(東京地裁の判例解説より)。また、その取引所が経営破たんに陥った場合、預けていたビットコイン全額が返還されない場合もありますが、これは銀行へお金を預ける際に生じる債権による返還請求権と同じ考えであるとみなされます。このようにビットコインを取引所などへ預ける場合、基本的には銀行へ預金をするのに近い状態として法的なルールによってその資産が保護されていると考えることができます。

では、ビットコインの所有権を主張するにはどうすればよいでしょうか?それはビットコインの「秘密鍵」を持つことです。取引所にビットコインを預ける場合、秘密鍵は取引所が管理することになりますが、この鍵を自分で管理している限り、ビットコインの所有権を主張することができます(ここでの所有権があるというのは、日本の法律で守られているという意味ではありません)。

ビットコインの鍵を管理するには、いわゆるウォレットと呼ばれるアプリを使います。ウォレットでビットコインの鍵を保管している限り、そのビットコインはあなたのものなのです。

ビットコインの保管とリスク

私たちは現金を財布で保管したり、また、大金の場合は金庫を使ったり、タンス預金のような方法で保管することができます。ビットコインでは前述の通り、ウォレットというアプリを使うことで自分で保管ができます。

ビットコインなどの暗号資産を取引所へ預けておくことはとても便利で使い勝手が良いのですが、ハッキングなどによって流出するリスクがあります。頻繁にトレードをする場合は、取引所に預けておくほうが便利ですが、高額な金額を保持したり、長期投資したりする場合は、取引所から自分のウォレットへ引き出したほうがハッキングによる盗難リスクを軽減することができます。

ただし、ウォレットは自分自身で管理しないといけないので、ウォレットをなくした場合やパスワードを忘れた場合などは復元することができず、紛失するリスクがあります。ビットコインを所有・保管する場合、大きく2つのリスクが存在します。それは盗難リスクと鍵の紛失リスクです。

  • 盗難リスク:取引所などの第三者へ預ける場合にリスクが高くなる。リスク低減策としては、自分のウォレットで保管する。その場合、ウォレットの鍵を紛失するリスクがでてくる。
  • 鍵紛失リスク:自分のウォレットで管理する場合にリスクが高くなる。鍵を紛失するとはコインを紛失することを意味する。

ウォレットにもいくつか種類があり、オンライン上で管理するホットウォレットや、オフライン上で管理するコールドウォレットなどがありますが、ビットコインを取引所へ預ける場合、その保管方法は各取引所へ任せることになります。しかし、「自分で管理するお金」というビットコインの思想的側面からすると、やはり自分で管理してこそ価値を見出せるのではないでしょうか。

自分でビットコインを管理する場合、上記の保管リスクのうち特に鍵紛失リスクに気をつける必要があります。鍵の紛失を回避するためには、鍵のバックアップも重要ですが、その他にも紛失リスクを低減するテクニックがあるので、以降で見ていきましょう。

ビットコインをスマートコントラクトで保管する

現金をタンス預金で管理する場合、盗難にあうリスクはあると思いますが、家の中で紛失することは滅多にあることではありません。また、金庫で管理する場合、その鍵を失くしてしまうリスクはありますが、その場合でも鍵屋などへ持っていけば開けてもらえるでしょう。

しかし、ビットコインの場合、鍵を紛失すると二度と引き出すことができなくなります。このような場合に備えて、ビットコインのスマートコントラクトを活用したり、鍵紛失へ備えるためのサービスが存在しており、これらを活用することでリスクを軽減することができます。以下にその一例を紹介します。

スマートコントラクトの活用

ビットコインには通常のビットコインアドレスとは異なるマルチシグアドレスと呼ばれるアドレスが存在します。通常のアドレスには、それに対応する秘密鍵が1つあり、その秘密鍵を使うことでビットコインを送金することができます。一方、マルチシグアドレスの場合、ビットコイン送金に必要な鍵の数を設定することができます。

例えば、以下の例では、対応する鍵は2つあり、その内の1つがあれば送金ができます。このようなアドレスでビットコインを保管する場合、もし1つの鍵を紛失した場合でも、もう1つの鍵を使うことで送金することができます。

この他にも時限制限付きマルチシグアドレスといった複雑なスマートコントラクトを作ることもできます。例えば、「10年以内にビットコインを送金するには2つの鍵が必要で、10年目以降は1つの鍵で送金できる」というコントラクトを作ることができます。通常、保管期間が長くなるほど、鍵を紛失する危険性が高くなると思うので、このようなアドレスでビットコインを保管するのも鍵紛失リスクを許容するための対策になるのではないでしょうか。

以下の例は、祖父が孫へビットコインを贈与するためのスマートコントラクトです。ビットコインを取り出すためには10年以内であれば、祖父と孫の両方の鍵が必要で、10年以降はどちらかの鍵があれば引き出すことができます。

上記でみたようなマルチシグアドレスによる鍵の保管による鍵紛失リスクを低減する以外にも、鍵の一部を保管してくれるようなサービスも存在します。以下にその一例を紹介します。

鍵保管サービスの活用

  • Casa:m-of-n マルチシグアドレスによる管理サービス。いくつかのプランがあり、例えば2-of-3 マルチシグの場合、3つの鍵のうち1はサービス提供者が保管してくれる。
  • Muun:2-of-2 マルチシグアドレスによる管理サービス。ユーザーは2つの鍵を保管するが、その内の1つをバックアップとしてサービス提供者へ預けることができる。もし自身が保管する鍵の1つを失くした場合、サービス提供者へバックアップ鍵を受け取ることができる。

高額なビットコインを所有する場合は、このようサービスを活用するのも有効的です。

まとめ

ビットコインには自分でお金を管理するという思想があり、ビットコインの鍵を自分で管理して初めて、ビットコインの所有権を主張できます。自分で鍵を管理する必要があるため、紛失リスクはどうしても生じてしまいますが、本稿で紹介したスマートコントラクトによるマルチシグアドレスなどを適切に活用することで、暗号資産取引所など第三者を頼ることなく自分一人でお金や資産の管理をできるようになります。

ビットコインを取引所などへ預けて保管してもよし、また自分自身で保管してもよしと、私たちはビットコインという新しいお金・資産からより多くの選択の自由を享受できるようになったのです。

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小川裕也

小川裕也

金融系SIerとして在職中にビットコインと出会い、その革新性に魅了されフリーのエンジニアとなる。ビットコインを活用したデジタルコンテンツを配信できるプラットフォーム「Spotlight」を開発・運営。仮想通貨が実社会で活用できるサービスの研究開発をしている。