今回は、ビットコインの希少性と通貨の価値について、ビットコインを使った投げ銭やコンテンツの購入ができる「Spotlight」のチーフエンジニア 小川 裕也 氏に解説していただきました。
目次
- ビットコインの価値・希少性はどこから生まれるのか?
1-1. 供給量を超過する需要がボラティリティを高くする
1-2. 数学的な計算によって支えられる価値の源泉 - 通貨としてのビットコインに流動性がもたらす影響
2-1. 需給バランス・市場規模ともに未熟でボラティリティが高い
2-2. 流動性低下と価格高騰が生む悪影響とその対策 - 流動性の対策で生まれた副産物 – 誰でもできるビットコイン資産運用
- まとめ
2,100万BTC、これはビットコインの総発行数です。ドルや円などの法定通貨は各国中央銀行によって発行数がコントロールできるのと違い、ビットコインの場合は発行数が既に決められています。それゆえに、ゴールドのように希少性があり、デジタルゴールドなどと形容されたりします。
今回はビットコインの希少性と通貨としての価値について考察してみます。
ビットコインの価値・希少性はどこから生まれるのか?
1-1. 供給量を超過する需要がボラティリティを高くする
ビットコインの発行枚数は2,100万BTCと有限です。この有限な発行量はビットコインに希少性を与えているのでしょうか?
例えば、水道水から汲んだコップ一杯の水を街中で売るか、一滴の水もない砂漠地帯で売るかを比較すれば、後者のほうが高く売れるでしょう。どちらも水道水という希少性のない水ですが、砂漠では需要が供給を上回るために価格が高くなります。基本的に価値が付くものはすべて希少性があり、価格は需要と供給のバランスによって決まります。これはビットコインにおいても同様です。
ここでビットコインの供給サイドを見てみると、ビットコインは10分ごとに6.25BTCが採掘され、4年に1度この発掘量が半減されます。これは供給サイドが柔軟に対応できないことを意味しており、需要が超過した場合、供給が追いつかなくなり価格高騰の原因になります。供給サイドは固定されている一方、需要サイドが変動的かつ需要が高いことから、ビットコインの価格はボラティリティが高い現状となっています。
つまり、ビットコインの希少性は2,100万BTCという有限な発行量から生まれているのではなく、需給の関係から生まれていると考えることができるでしょう。需要があるから価値が付き希少性が生まれるわけですが、ではなぜビットコインに需要があるのでしょうか?
1-2. 数学的な計算によって支えられる価値の源泉
これまでの通貨(法定通貨など)は、政府や銀行への信頼によって成り立ってきましたが、ビットコインはそのような第三者への信頼を拠り所とせず、数学的な計算によって支えられています。これがビットコインの価値の根源です。
また、ビットコインは通貨として耐久性や携帯性、代替可能性などを備えているのが特徴です。これらの特徴が人々を魅了し、はじめはサイファーパンクなどに代表されるギークたちのコミュニティに広がり、次にアーリーアダプターと呼ばれる新しいもの好きなユーザに広がり、今では一般大衆へも広がってきました。これまでの通貨はトップダウン式で採用が進んできましたが、こうした成り立ちから見るとビットコインはボトムアップ式な通貨と言えるでしょう。
最近では、米国企業などもビットコインの保有を始めるなど、ネットワーク効果によってビットコインの需要がどんどん高まっています。もうこの流れを止めることは難しいでしょう。この需要に対して、固定されている供給サイドの発行量が追いつかず、今後さらに価格が高騰すると予想されます。
ここでは、ビットコインの価値とそこから生まれる希少性についてみてきましたが、次に通貨としてのビットコインに流動性がもたらす影響についてみてきます。
通貨としてのビットコインに流動性がもたらす影響
2-1. 需給バランス・市場規模ともに未熟でボラティリティが高い
ビットコインに価値がつき、需要が供給を継続的に上回ることで、高いボラティリティが発生します。法定通貨であれば、中央銀行は金利をコントロールすることで、通貨の価格を安定的に保つことができます。しかし、中央管理者のいないビットコインにはこうした調整を果たすための金利が存在せず、また供給量が固定されていることで、激しく価格変動しています。
ビットコインは誕生してまだ10年しか経っておらず、経済規模が未成熟で、人間の「強欲さ」がこの成長率を大きく上回っていることが原因だと考えることもできるかもしれません。通貨として成り立つには安定した需給調整の機能と大きな市場規模が必要であり、ビットコインはまだまだ成長段階といえます。
2-2. 流動性低下と価格高騰が生む悪影響とその対策
前回の記事では、機関投資家や米国企業などが、長期投資や価値の保存としてビットコインを買い入れており、それによりビットコインの流動性が低下し、また価格高騰への影響がでていることについて触れました。
ところで、流動性の低下や価格高騰は、一般ユーザによるビットコインへのアクセスの妨げになるのでしょうか?
例えば、1BTCが1億円まで高騰したと仮定します。一見するとこの価格では誰もが買える価格ではありません。しかし、ビットコインは 0.00000001 BTC を最小単位としており、理論的には1円から購入することができます。さらに1BTCが100億円となったとしても、ビットコインの通貨単位をデノミネーション(この場合、金額の桁数表示を大きくする)することで、さらに小さな単位から購入や送金が可能になります。ビットコインはゴールドのような物質とは異なりデジタルであるがゆえに、いくらでも通貨単位を調整することで、価格が高騰しても一般ユーザでもアクセスできる単位を作り出すことができます。
しかし、いくら理論的に1円単位で購入や送金ができるといっても、送金手数料なども比例して高くなるため、通貨としては実用的に使うことは難しいでしょう。これは、ビットコインのブロックチェーンのスペースが小さいことに起因しています。現状の小さなスペースに、多くの人が送金データを書き込もうとすれば、競争が働き、送金手数料が高騰してしまうのです。
そこで送金ごとにブロックチェーンへ送金データを書き込まないように考案されたのが、ライトニングネットワークとよばれるビットコインを拡張したオフチェーン技術です。このライトニングネットワークを活用することで、より小さな単位のビットコインでも実用的に安い手数料で送金することができるようになります。さらに朗報として、現在ではこのライトニングネットワークへ流動性を提供することで金利が得られるようになってきているのです。
流動性の対策で生まれた副産物 – 誰でもできるビットコイン資産運用
イーサリアムやアルトコインなどではステーキングと呼ばれる、仮想通貨を売買せず保有したままで金利が得られる仕組みがあります。ビットコインには今までこのような仕組みはありませんでした。しかし、ライトニングネットワークでは流動性を提供することで金利を得ることができます。
ライトニングネットワークはまだ成長段階であり、流動性として提供されているビットコインは1,000BTC(2021年2月19日、記事執筆時点で約50億円)程度ですが、それでも年利1~5%を得ているユーザもいます。流動性の提供をするには自分でノードとよばれるサーバーを運用する必要がありますが、自分自身でビットコインの資産運用ができるのは画期的ではないでしょうか。
今まではビットコインを自身で取得する手段としてはマイニングが主流でしたが、これからはビットコインの流動性提供による資産運用も注目されるでしょう。現状のライトニングネットワークは市場規模は小さいですが、ビットコインが今後ますます成長することが予想されるなか、ライトニングネットワークの重要性や需要も高まってくるはずです。
まとめ
ビットコインの価値の源泉は数学に裏づけされた通貨であり、そこからコミュニティによる信頼が構築され採用が広まり、価値が付き希少性が生まれました。しかし、ビットコインの供給が一定であるため、需要に柔軟な対応ができず価格の変動が激しくなりがちなのが現状です。
今後ますます価格高騰が予想されるビットコインですが、通貨単位をデノミネーションすることでより多くの一般層へのアクセスが可能になり、また少額決済のためのライトニングネットワークへの需要も増えてくるでしょう。
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小川裕也
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