2020年のFX市場をプロが解説。2021年にFXを始める人が知っておきたい相場の見方

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2019年は米中の貿易交渉がニュースの中心となり、2020年は新型コロナウイルスから目の離せない年でした。2008年にリーマンショックを経験していた世界は、3月のコロナショック時には、前例のない規模で迅速に財政・金融政策を打ったことで、リーマンショックのような大惨事は免れました。

しかしその後、実体経済は深手を負ったままなのに、日経平均株価が史上最高値を更新したことを始め、特徴的で記憶に残る出来事が続きました。今回は、これからの取引に活用するための、2020年のFX市場の振り返りと、ポイントについて解説します。

目次

  1. リスク“オフ”相場への反応は?
    1-1.2020年2~3月、コロナ感染拡大によるリスクオフの動きは?
    1-2.2020年3~4月、更なるリスクオフの動きは?
    1-3.2020年7月以降、新しいリスクオフの動きは?
  2. リスク“オン”相場への反応は?
    2-1.2020年4~8月、低金利下でのリスクオン
    2-2.2020年11月以降、ワクチン開発成功後のリスクオン
  3. コロナ禍とインフレの関係性は?

1.リスク“オフ”相場への反応は?

2020年のリスクオフ相場の要因と、市場の反応について解説します。

1-1.2020年2~3月、コロナ感染拡大によるリスクオフの動きは?

2020年2月後半から3月中旬までは、コロナ感染拡大によるリスクオフが市場のテーマでした。1月後半から中国武漢にて新型コロナが発生したというニュースは出ていましたが、アジアの一部の地域の話として片付けられ市場全体には波及していませんでした。

実際に、米国経済も失業率は半世紀ぶりの低さとなったことや 、景気指数も強い指標であったため、リスクオン相場が継続していました。

ところが、新型コロナ感染が欧米にも急速に拡大し、それから3週間足らずのうちに急変しました。FRBは、2020年3月3日に約11年ぶりとなる緊急利下げを実施し、更にその後3週間で、世界のほぼ全ての中央銀行が追随して利下げや緊急緩和政策を行いました。

一方で、トランプ政権は当初、移動制限などのコロナ対策は経済にマイナスだという理由で後ろ向きでした。対策の遅れに対する市場の不満と不安が高まるなか、2020年3月9日のNYダウは2000ドルを超える歴史的暴落が起こりを引き起こし、ドル/円は101円前半まで円高が進みました。

この場面では、リーマンショック以降続いてきた一般的なリスクオフ時に見られるUSD買い・JPY買い・CHF買いの反応になりました。ただし、リーマンショック直前のような異常なポジションの偏り(JPYショート・CHFショート)はありませんでしたので、当時の様に極端にJPYやCHFが対USDに対して買われることはなく、USDJPYやUSDCHFの下がり方はリーマンショック当時と比較するとおとなしいものとなりました。

しかし、依然としてリスクオフと言えば「JPY買い>USD買い」という反応でした。

1-2.2020年3~4月、更なるリスクオフの動きは?

「究極のリスクオフ」とは、リスクオフが行き過ぎたことで、持っている資産を全部投げ売りして決済通貨であるUSDを調達しなければならない相場のことです。金融機関は実際にUSDが不足しているから調達したいわけではなく、「不足しそう」という不安から調達を試みたものでした。

しかし、それが連鎖反応を起こしマーケットが壊れてしまったのが、3月中旬から月末にかけてのいわゆる「USD取り」という動きで、「JPY買い<USD買い」の関係となり、リスクオフにもかかわらずUSDJPYは急騰しました。

この局面の特徴は、全資産売りになるということです。株は勿論のこと、リスクオフ時には通常買われるはずの米債やゴールドまでも売られました。こうなると、USD調達のためには相場の水準や流動性などには構っていられないという投資行動が、想定できないとんでもない値動きを引き起こします。

この時と同じようなパニック相場が、2020年4月に原油市場で見られました。先物市場での原油ロングは期日がくると現物化してしまうのですが、コロナ禍で原油需要がありませんでした。売れ残った原油により貯蔵庫がほぼ満タンの状態だったことから、原油の現物を貰ったところで保管する所が無いという問題がありました。

困った業者や投機筋は、我先にと原油ロングを投げ売り、とうとうマイナスの値付けがされました。このような、相場観など関係なく、事務的に資産を投げ売らなければならない相場が究極のリスクオフです。

その後の3月下旬には、迅速に主要中銀がFRBとUSD供給のためのスワップ協定を締結したことで、金融市場は一旦落ち着きを取り戻し、その後一気に反転していきました。

1-3.2020年7月以降、新しいリスクオフの動きは?

2020年後半になると株は上昇基調でしたが、時折コロナ関連ニュースにより、細かなリスクオフ局面が訪れる展開となりました。そして、この頃には、2020年前半のコロナショックの時とは違った反応が見られました。

主要国の金利が基本的にゼロ近辺に落ち着いてしまったことにより、調達通貨としてのJPYの魅力が薄れ、市場でJPYショートポジションが溜まることがなくなりました。したがって、新たなリスクオフに対する反応として「JPY買い<USD買い」が主流となり、リスクオフになるとUSDJPYの上昇がみられるようになりました。

2.リスク“オン”相場への反応は?

2020年は、リスクオフと反対に、リスクオン相場の場面も多く見られました。リスクオン相場の要因について解説します。

2-1.2020年4~8月、低金利下でのリスクオン

ゴルディロックス相場とは、景気が過熱も冷え込みもしない適度な状況にある相場のことをいいますが、4月から8月頃までの反転相場がこれに当たります。気温の上昇とともにコロナ感染者数は落ち着き、経済活動は徐々に復活しました。

前例のない規模の財政出動による金余りの状況のなか、金融緩和により金利は低位安定しました。通常であれば景気は過熱してしまう状況でしたが、改善中とはいえ大量の失業者を含んだ雇用データが発表されるなど、実体経済の回復がもう一つ見られないことが、過熱を抑える役割となりました。

このリスクオン相場の特徴は、2点あります。本来リスクオフ時やインフレ時に最も選好されやすいゴールドが買われ続けたこと、そして最も市場に供給されたUSDの価値が下がり続けたことです。したがって、リスクオフになりそうな悪いニュースが出たとしても、経済活動の停滞や制限により行き場を失ったマネーが、株やゴールドに溢れ出てきてすぐに買い支えられてしまうため、リスクオンが継続しUSDが売られ続けました。

2-2. 2020年11月以降、ワクチン開発成功後のリスクオン

2020年11月の米大統領選後、すぐにファイザーによるワクチン開発成功のニュースが世界を駆け巡りました。このニュースは経済活動の本格的な回復が連想されたため、資源価格の上昇にも繋がり、期待インフレが上昇、株は過熱感を伴って上昇し、ゴールドは下落しました。

FRBが金融緩和姿勢を緩めていない状況は不変で、米金利が1%手前で抑えられたことが強いリスクオン相場を演出し、FXでは資源国通貨を中心にUSD売りが進行しました。

3.コロナ禍とインフレの関係性は?

8月のゴルディロックス相場終了後から米大統領選までは、株の上昇とは止まり、USD売りの展開が止まり、調整局面となりましたが、この局面は2021年以降を想像するうえで非常に参考になる期間となります。

この時期は、バイデン氏・トランプ氏どちらが優勢なのかということにも関心が寄せられましたが、その根底となったのは、財政出動の規模でした。バイデン氏率いる民主党は、巨額の財政出動を公約としていたため、事前予想でバイデン氏が優勢と報道されるほど、米期待インフレが上昇し、米金利がレンジを切り上げてきました。

この時市場は、財政出動による「景気回復を受けたリスクオン=USD売り」と「米金利上昇=USD買い」の間で微妙に揺れ動いていました。結果として、その当時はワクチン開発の目途がなく、実体経済の回復力が今一歩の状況下、インフレが見通せなかったことから、レンジ内での推移となりました。

しかし、その後ワクチンが開発されたことで、期待インフレは一層上昇してしまいました。現状は、変異したコロナの発生含めコロナ感染拡大が止まらないことで、実際のインフレ発生に対しては懐疑的な見方が多いですが、2021年はインフレの動向が相場の方向を決めるポイントとなると考えられます。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」