ドイツの家庭用蓄電池メーカーのゾンネン(sonnen)は新たに仮想発電所(バーチャル・パワープラント:VPP)を立ち上げたことを3月12日、発表した。VPPは電力供給の最適化にブロックチェーン技術を活用し、取引参加者は価値の安定した仮想通貨で支払う。
ゾンネンはエネルギー部門でブロックチェーンの使用を支援するグローバルな非営利組織Energy Web Foundation(EWF)と提携していた。ゾンネンはEWFのブロックチェーンプラットフォームEnergy Web Chainを活用し、EW Origin SDKで構築したVPPで過剰電力と貯蔵容量をマッチングする。
ゾンネンのスマート蓄電池「sonnenBatterie」を利用するグリッドオペレーターは貯蔵容量をVPPに通知できる。EW Originのソフトウェアは過剰供給をVPP上で利用可能な貯蔵容量と照合して、再生可能エネルギーの損失を防ぐ。VPPとグリッドオペレーター間の取引はEnergy Web Chainのスマートコントラクトを通じて処理され、ステーブルコインDAIベースの仮想通貨EW DAIで即時に支払われる。
ドイツは2018年4月に国の電力源の85%を再生可能エネルギーが占めたが、電力供給の最適化と二酸化炭素排出量(CO2)の削減が課題となっていた。2018年全体でドイツは5.4テラワット時の再生可能の余剰電力が生じ、ベルリンの年間電力消費量の1年間分をロストしていた。ドイツのエネルギーミックスの平均発電効率で換算すると、このクリーンな電力を有効活用していれば260万トンのCO2が節約できた。
ゾンネンでeServices部門の責任者を務めるジャン=バティスト・コーネファート氏は、仮想発電所が「これまで欠けていた電力網の技術的構成要素」としており、ブロックチェーンとスマートコントラクトによって「従来のシステムよりも効率的なスマートグリッドを提供できる」と語っている。同社はアメリカやオーストラリア、イタリア、イギリスでも仮想発電所を展開する意向を示している。
2015年9月の国連サミットで、2030年に向けて17の目標と169のターゲットを定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。以来、社会課題解決をビジネスに取り入れる企業の動きが活発になってきている。世界中で地球温暖化の懸念が広がる中、ゾンネンは再生可能エネルギーの地産地消に取り組んでいる。昨年2月にゾンネンは英蘭資本の石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルによって買収されていた。
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高橋奈夕
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