仮想通貨取引所Coinealは、ブロックチェーンセキュリティ企業CYBR(以下、CYBR社)のIEOを中止した。ブロックチェーンメディアTHE Blockが7月29日付で報じている。CYBR社は、CoinealがIEOの販売数を虚偽に表示し、上場にかかった取引所手数料を欺いたと主張している。
IEOは、新規に発行したトークンを取引所に委託し、取引所が販売することによってIEOを企画したプロジェクトチームが資金調達する方法だ。CoinealとCYBR社によっておこなわれたIEOでは、CYBR社がCoinealへ上場手数料として11.5 BTC(約76,590米ドル)を支払いトークン販売が開始された。当初はトークン供給量の約40%にあたる約210万米ドル分の売上高を記録したものの、IEO終了時にはトークン供給量の56.56%の販売にとどまったという。
THE BLOCKによると、CYBR社がこの結果に対して疑問を投げかけ、IEO調達額の資金の交換を求めたところ、CoinealはCYBR社のトークン上場を取り下げトークン購入者へ返金を行うことを発表したとしている。最終的にCYBR社は上場手数料として11.5BTCを支払ったのみで、IEOから資金を調達することはなかったという。
IEOは、ICOとは違って取引上場があらかじめ決まっていることやトークン購入者も利用しやすい環境で売買ができるなど、ICOに代わる資金調達手段として注目を集めていた。しかし、今回の報道により、IEOのプロセスには不透明な部分が多分にあり、ICO同様に依然として何かしらの虚偽が起きている可能性を払拭できないという実態が明らかとなった。もちろん、事前にトークンの上場が決定していることやマーケティング戦略の一環として、IEOが進んでいくことは想像に難くない。規制も定まらない現状では、仮想通貨投資家はさまざまな可能性を考慮して自衛の対策を怠らず、投資判断を行うことが求められていくだろう。
藤田 正義
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