雇用統計のポイントは?インフレやアメリカの景気についても解説【2024年5月】

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2024年5月現在、アメリカで雇用統計が発表され、労働市場全体が調整局面に突入した可能性が示唆されました。

本稿ではプロトレーダーの筆者が、雇用統計のポイントや経済状況との関連性、相場動向を解説します。是非参考にしてみてください。
※本記事は2024年5月7日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. アメリカの労働市場全体が調整局面に突入か
  2. 雇用統計を受けた最初の反応は金利低下・ドル売
  3. 雇用統計のポイント4つ
    3-1.労働市場の軟化を示す数字がでてくるか
    3-2.非農業部門雇用者数・失業率・平均時給は必ずチェック
    3-3.平均時給と失業率がより重要
    3-4.確報値もチェックする
  4. まとめ

1.アメリカの労働市場全体が調整局面に突入か

アメリカ雇用統計では、総じて弱い数字が並びました。

雇用統計

指標 結果 予想 前月
非農業部門雇用者数 17.5万人 24.3万人 +31.5万人
失業率 3.9% 4.0% 3.8%
平均時給
(前年同月比)
+3.9% +4.0% +4.1%

失業率は前月から上昇しましたが、予想よりも堅調な数字となりました。平均時給は低下しており、インフレが抑制されてきたと評価できます。

非農業部門雇用者数も6ヶ月振りの低い伸びに止まっており、これまでの堅調な数字から変化が見られました。過去2ヶ月分も2.2万人下方修正されています。

非農業部門雇用者数は、過去15回で12回下方修正されている点がポイントです。足元の速報値は、アメリカの労働市場を過大評価している傾向があります。

不完全失業率は2021年11月以来の高水準となっており、広義の失業率を見ても数字が上昇してきていることが確認できました。

一方でインフレ抑制の観点からはネガティブな数字としては、フルタイムの労働者が増加し、パートタイムの労働者が減少している点が挙げられます。これまではフルタイムの雇用者が減少する一方で、パートタイマーの上昇が続いていため、逆の動きとなっています。

2024年5月の雇用統計を総括すると、アメリカの労働市場全体が本格的な調整に入ったことを示唆する数字が出てきているため、6~7月で大きく軟化する可能性があります。単月の数字のみでは判断できないものの、長期的に見ても、平均時給が下落トレンドを描いており、失業率も緩やかに高止まりしています。非農業部門雇用者数も減少傾向になっていることから、今回の雇用統計の数字は素直に受け止められるでしょう。

2.雇用統計を受けた最初の反応は金利低下・ドル売

雇用統計を受けた市場の動向を確認してみましょう。
ドル円チャート
※図はTradingView[PR]より筆者作成

上記のチャートは、ローソク足がドルインデックス、水色がS&P500指数、オレンジが米国債2年金利です。雇用統計で弱い数字が発表された後の最初の反応は、金利低下・ドル売りでした。

株式市場では、先物が上昇するような動きを一瞬見せたものの、上値を追っていく展開にはならず失速しています。金利は発表直後に低下で反応しましたが、継続せず反発しています。

ドルインデックスは、雇用統計後の下落幅を取り戻しています。さらに上値を追う展開になるとは考えにくく、プロトレーダーの筆者としては戻り売りを想定しています。

2年金利は一時的に5.00%を超えた水準で推移していたものの、その後低下に転じました。インフレ抑制と労働市場の軟化が見られている局面では、金利の上昇幅も限定的でしょう。

3.雇用統計のポイント4つ

2024年5月の雇用統計は、ポジションがドルロングの傾いている中で発表されたという前提をまずは押えたうえで、雇用統計のポイントを4つ確認しましょう。

3-1.労働市場の軟化を示す数字がでてくるか

アメリカのインフレは再度高止まりしており、物価がなかなか低下してこない状況です。労働市場の軟化はサービス価格の低下に直結することから、今回の雇用統計では、労働市場の軟化を示す数字がでてくるかに注目が集まりました。

3-2.非農業部門雇用者数・失業率・平均時給は必ずチェック

雇用統計は、非農業部門雇用者数・失業率・平均時給が主要な項目です。まずはこの3つの数字が、「予想対比で良好な数字となっているか?」を確認しましょう。ちなみに、複数のアナリスト予想の中央値が経済指標の予想値となります。

良好な数字が出てきた場合は経済が好調と判断され、理論上は、金利上昇・ドル高・株高で反応します。ただし、2024年5月現在の市場環境では、金利上昇・ドル高・株安の動きになります。労働市場の抑制がポイントになっているタイミングでは、予想よりも強い数字が出た場合には、労働市場は軟化していないと判断できるためです。

市場環境によって異なるため、相場のポイントを理解しながら値動きを確認してみてください。

3-3.平均時給と失業率がより重要

インフレ動向に注目が集まるなかでは、非農業部門雇用者数よりも平均時給と失業率がより重要になります。平均時給の動きは賃金に直結しており、サービス価格の変化の参考になるためです。

3-4.確報値もチェックする

雇用統計には、速報値と確報値があります。確報値はまれに大幅に修正されるため、前月の雇用統計の評価が変わる場合があります。

なお足元では、非農業部門雇用者数は、過去15回中12回翌月に下方修正されています。速報値だけで判断せずに、確報値まで確認しましょう。

4.まとめ

本稿では、アメリカの雇用統計のポイントと、ドル円を中心とした相場動向について解説しました。

トレードの際には、発表された経済指標の数字と、ポジションの傾きや方向性とが一致するか(ギャップが発生するか)が収益源となるため、是非確認してみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12