出光興産のESGの取り組みや将来性は?株価推移、配当も

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大手金融機関や投資家が投資先を検討する際、ESGを重視する傾向が強まっています。企業側は外部からの期待に応えるため、ESGを経営で取り入れるようになりました。

今回は出光興産のESG関連の取り組み、業績、株価推移などについて紹介します。石油業界にとってESGは逆風とも言えますが、同社はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

※2022年12月1日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 出光興産の概要
  2. 出光興産のESGに関する取り組み
    2-1.2050年カーボンニュートラル
    2-2.水素・アンモニアサプライチェーン
    2-3.バイオマス燃料の供給拡大
    2-4.環境配慮型SS「apollostation Type Green」の展開
  3. 出光興産の10年間の株価推移と業績
    3-1.10年間の株価推移
    3-2.業績
  4. 出光興産の将来性
  5. 出光興産の配当・優待情報
  6. まとめ

1.出光興産の概要

銘柄 出光興産
証券コード 5019
株価 3,220円
PER(会社予想) 2,95倍
PBR(実績) 0.56倍
配当利回り(会社予想) 3.73%
主な事業内容 石油販売、石油化学、原油・石炭開発

※2022年12月1日のデータ

出光興産は原油の調達や石油製品の製造、ガソリン・軽油・灯油などの販売を手掛ける企業です。連結の売上高は6.7兆円、従業員数は連結で1.4万人です。

一般消費者によく知られている事業は、SS(サービスステーション)でしょう。apollostation、出光SS、シェルSSを運営しています。中でもapollostationは2021年から開始した新ブランドで、開始時には全国およそ6,400カ所あるSSの塗装やユニフォームなどを一新しました。

2.出光興産のESGに関する取り組み

石油業界は事業運営でのCO2排出量の多さから、SDGsやサステナビリティの取り組みを強く求められている業界の1つです。

ここからは、同社におけるESGの取り組みのうち、E.環境面の取り組みについて紹介します。

2-1.2050年カーボンニュートラル

出光興産は、2050年までに自社操業によるCO2排出量のカーボンニュートラル(CO2排出量ネットゼロ)を目指しています。そのための取り組みを、既存事業領域の強化、新規事業領域の早期確立の両面から推進しています。

既存領域は、省エネ・消費電力のゼロエミッション化、環境配慮型商品・サービスの提供、再生可能エネルギー発電の拡大の3つです。新規事業領域は、バイオマス燃料の供給拡大、サーキュラービジネスの拡大、革新的技術の開発・社会実装の3つです。製油所や事業所を、これら6つの機能による低炭素・資源循環エネルギーハブへ転換していきます。

トランジションプランとして、2030年までの技術確立期、2040年までの資源確保期、2050年までの拡大期としています。現在の技術確立期は、排ガス転換技術などのリサイクル、バイオエタノールやバイオプラスチックなど非石油の資源活用などが主な取り組み内容です。

2-2.水素・アンモニアサプライチェーン

GHGとは温室効果ガスのことで、地球温暖化の防止のために世界的に削減が求められています。もっとも有名なGHGはCO2で、その他にもメタン、一酸化窒素などもあります。

出光興産ではGHG削減のための取り組みを多数実施しており、今回はそのうち2つを紹介します。

まずバリューチェーン全体でGHGを削減するため、水素・アンモニアサプライチェーンの構築を推進しています。同社の徳山事業所は2014年に原油精製設備を停止し、石油精製事業からの転換をいち早く完遂しました。

2021年2月には従来比約30%の省エネルギー効果のある、高効率ナフサ分解炉の稼働をスタートし、さらに2022年稼働予定のバイオマス発電所の建設など、脱炭素に向けた取り組みを加速させています。

2-3.バイオマス燃料の供給拡大

2つ目に紹介するGHG削減の取り組みは、バイオマス燃料の供給拡大です。再生可能エネルギー発電と同様に、低炭素なエネルギー供給を目指す取り組みです。

具体的には「ブラックペレット」というバイオマス燃料の開発です。木材を粉砕・乾燥などして作るもので、従来の燃料に比べて耐水性・粉砕性に優れ、石炭と同様に取り扱えます。既存設備を改造することなく石炭の使用量を削減し、再生可能エネルギーであるブラックペレットの使用割合を高めていけます。

石炭とブラックペレットの混焼試験が、徳山事業所や千葉事業所で実施されました。2030年に200万トンのグリーンエナジーペレット供給を目指し、東南アジアを中心に製造拠点拡大を目指すとしています。

2-4.環境配慮型SS「apollostation Type Green」の展開

「apollostation Type Green」は2022年11月から新たに展開されている、国産木材を活用するなどした環境配慮型のSSです。1号店は高知県南国市で、2022年度中に兵庫県神戸市と埼玉県飯能市での開所も予定されています。

国内林業の新興に寄与するよう、国産木材を活用して建築されています。木材活用により、SS1か所あたり約100万トンのCO2削減が見込まれるとしています。また太陽光発電パネルやEV急速充電器も設置され、循環型社会のニーズに適合するよう設計されています。

Type Greenを含め、今後も次世代社会に対応した新たなコンセプトのSSを展開する計画です。

3.出光興産の10年間の株価推移と業績

ここからは、出光興産の株価推移や業績内容について見ていきましょう。

3-1.10年間の株価推移

10年前の株価は約2,000円で、2016年後半まではほぼ横ばいでした。2016年11月から大きく上昇し始め、2018年10月に6,000円を超えてピークとなりました。その後は下落に転じ、2020年11月には2,000円強と上昇前の水準に戻りました。

2020年12月からはやや上昇し、執筆時点では3,000円前後で推移しています。

3-2.業績

出光興産の直近4年間の業績推移は下記のとおりです。

項目 2019/3 2020/3 2021/3 2022/3
売上高 44,251 60,458 45,566 66,867
営業利益 1,793 △38 1,400 4,344
経常利益 1,691 △139 1,083 4,592

単位:億円

2020年3月期は売上こそ大きく伸びたものの、営業利益と経常利益は赤字になりました。2021年3月期は売上高こそ下がりましたが利益は黒字回復、2022年3月期は売上高・利益とも大きく拡大しました。

現在進行中の2023年3月期ですが、1Qと2Qは売上高・営業利益ともに前年を大きく上回っています。その主な要因は、原油価格上昇、円安進行による在庫影響、石炭市況の高騰などです。

2022年度の業績見通しについて、11月に上方修正が発表されました。ウクライナ危機や世界的なインフレなどは依然不透明ですが、原油価格の変動や高騰が続く石炭価格などを勘案した結果です。

4.出光興産の将来性

出光興産の将来性について、業績と事業内容、ESGの両面から考察します。まずサステナビリティやESGは、石油業界にとっては基本的に逆風です。ウクライナ危機により、ヨーロッパでは一時的に化石燃料に頼らざるを得ない状況も見受けられますが、長期的には脱炭素の加速は確実視されています。

出光興産も再利用可能エネルギーなど数々の取り組みを推進していますが、同社の取り組みも今後さらなるスピードアップが求められるでしょう。

直近の業績は好調で、2022年3月期は売上・利益ともに過去最高を記録しました。2023年3月期も、現在のところ前年を上回るペースで推移しています。国内の業界では確固たる地位を確立しており参入障壁も高いため、今後も収益は見込めるでしょう。

ただ業績の好不調は、資源価格と為替の動向に左右される面も大きいことが懸念材料です。直近は価格高騰と円安により業績にはプラスの影響になりましたが、逆の方向に進めばマイナスをもたらします。またこれらの要素は、1企業で対処することは不可能です。

大変難しい課題ではあるものの、資源価格や為替がどのように推移しても一定の利益を確保できる体制が求められているのではないでしょうか。

5.出光興産の配当・優待情報

1株あたり年間配当 2022年3月期実績:170円(記念配当の50円を含む)
2023年3月期予定:120円
主な株主優待 なし

配当に関して、2023年3月期は減配であるかのように見えますが、前年度は「創立110周年記念配当」として50円が追加で配られました。その分を差し引くと、今年度も前年と同水準の配当金となっています。

まとめ

出光興産のESG関連の取り組み、業績などについて紹介してきました。石油業界はGHG排出量の大きい業界であり、同社はGHG削減のため、バイオマス燃料の供給拡大、水素・アンモニアのサプライチェーン、再生可能エネルギー発電の拡大などの取り組みを実施しています。

直近の業績は、資源価格の高騰や円安の影響もあり、過去最高を記録しました。今後、ESGの取り組みも業績にプラスの影響をもたらせるか注目です。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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