ESG投資信託の運用状況は?成績や純資産推移、主要投資先の取り組みも【2022年10月】

ESGは、世界的な潮流となっています。日本では、東京証券取引所が2022年の市場再編時に、上場企業に財務諸表にあらわれないESGへの取り組み状況を開示することを求めるようになりました。ESGの取り組みが可視化されることで投資家の判断の材料となるため、企業のESGへの取り組みが注目されています。

そこで、今回はますます拡大すると予想されるESG投資信託の運用成績、純資産額や主要投資先の取り組みについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年9月29日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 運用成績の良いESG投資信託
    1-1.HSBC ESG米国株式インデックスファンド
    1-2.グローバルESG株式インデックスファンド
    1-3.野村インデックスファンド・先進国ESG株式
  2. 純資産額の多いESG投資信託
    2-1.野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース
    2-2.グローバルESGバランスファンド(為替ヘッジなし)
    2-3.ダイワ上場投信-MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数
  3. まとめ

1 運用成績の良いESG投資信託

ESG投資信託(インパクト投資を含む)の1年のトータルリターン(運用成績)は、円安が進んだため、海外株式を中心に投資する投資信託が上位を占めています。

ここでは、運用成績の高い3銘柄の運用成績や、主要投資先のESGへの取り組みを見ていきましょう。

1-1 HSBC ESG米国株式インデックスファンド

運用成績がもっとも高かった投資信託は、HSBC ESG米国株式インデックスファンドで9.75%です。

運用は、マザーファンドへの投資を通じて行われています。2022年8月末時点での組み入れ銘柄数は482銘柄です。上位10位銘柄は高い順に、アップル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、マイクロソフト、シスコ・システムズ、メルク、シティグループ、インテル、コカ・コーラ、アマゾンです。

上位3銘柄の組み入れ比率が全体の30.2%を占め、上位10銘柄では43.8%に上ります。上位10銘柄のウェイトが高いので、ファンドの価格変化は10銘柄の動向次第となりそうです。

2021年10月上旬に約15億円だった純資産額は、2022年9月末には約18億円となりました。トータリターンは高いものの、純資産額が積み上がっていないファンドです。

信託報酬(0.1265%)を含む管理費用は0.2465%(税込)と低い水準と言えそうです。

次に、主要投資先のESGへの取り組みの例を紹介します。

  • アップル(AAPL):2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束。
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ):国連が定めた持続可能な開発目標である*SDGs17の目標のうち、11の目標をカバーする取り組みを実施。
  • マイクロソフト(MSFT):2030年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、廃棄物ゼロを目標とする。2021年の進捗状況は、250万トンのCO2除去、130㎥の容積効果が期待できる水補充プロジェクトに投資。

*SDGs17の目標:2015年9月の国連サミットで決定されたSDGs国際目標。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すため、17のゴールと169のターゲット、231の指標から構成。17のゴールとは、貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー、水・衛生、エネルギー、成長・雇用、イノベーション、不平等、都市、生産・消費、気候変動、海洋資源、陸上資源、平和、実施手段。

1-2 グローバルESG株式インデックスファンド

運用成績の2位は、グローバルESG株式インデックスファンドの9.57%です。主要投資対象ファンドへの投資を通じて先進国株式に投資しています。2022年8月末時点の組み入れ銘柄数は437銘柄です。

上位10位銘柄は高い順にマイクロソフト、テスラ、エヌビディア、エンフェーズ・エナジー、ユナイテッドヘルス・グループ、ウエスト・マネジメント、エマソン・エレクトリック、ベスタス・ウィンド・システムズ、ネスレ、ベライゾン・コミュニケーションズです。上位10銘柄の組み入れ比率は全体の26%です。

純資産額は2021年10月上旬の約94億円が2022年9月末には約140億円に増加しています。順調に資金が流入しているファンドと言えそうです。

主要投資先のESGへの取り組みの例を紹介します。

  • エヌビディア(NVDA):2025年までに、電力使用量の100%を再生可能エネルギーからの調達を目指す。エネルギー効率の高いGPU開発に取り組む。SDGsの17のゴールに、それぞれ持続可能な開発目標を採択。
  • エンフェーズ・エナジー(ENPH):太陽発電パネルにつなぐマイクロインバーターの世界トップメーカー。同社製品により約390万世帯の1年間分に相当するエネルギーの発電が可能。これはガソリン35億ガロンに相当。
  • ユナイテッドヘルス・グループ(UNH):2030年までに医療費を手頃な価格にする。ユナイテッド・ヘルス財団から1億ドルを拠出し、2033年までに1万人の臨床専門家を訓練する。

1-3 野村インデックスファンド・先進国ESG株式

3位は、野村インデックスファンド・先進国ESG株式の9.52%です。マザーファンドを通じて投資をしています。

2022年8月末時点の組み入れ銘柄数は102銘柄です。組み入れ上位10銘柄は、アップル、マイクロソフト、アルファベットAとC、ジョンソン・エンド・ジョンソン、エヌビディア、プロクター・アンド・ギャンブル、VISA、ネスレ、ホーム・デポです。上位10銘柄の組み入れ比率は全体の39.7%です。

純資産は16億円と、積み上がっていないファンドと言えそうです。

主要投資先のESGへの取り組みの例を紹介します。

  • アルファベット(GOOGL):2020年8月に、環境関連と社会貢献に使途を限定したサステナビリティ債を57.5億ドル(当時約6,000億円)発行。この財源を基に、クリーンエネルギー、グリーンビルディング(建物全体の環境性能が高まるように設計された建物)、エネルギー効率、人種平等などに投資。
  • プロクター・アンド・ギャンブル(PG):2040年までにネットゼロ目標を掲げ、従来のエネルギーから再生可能エネルギーへの切り替えを推進。2022年9月にサンバレー再生可能エネルギープロジェクトにおいて、エネルギー供給会社であるENGIEと200MWの電力購入契約を締結。
  • VISA(V):ESGガイドラインに沿った長期的なビジネス戦略を展開。2年に1度、ESG戦略周知のため、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)ガイドラインに従った評価を実施。

投資信託の運用成績上位3銘柄(トータルリターン1年を基準)

以上のファンドの概要をまとめました。

ファンド名 トータルリターン(%) シャープレシオ 最大申込手数料(%) 信託報酬(%) 解約手数料(%)
年初来 1年 1年
HSBC ESG米国株式インデックスファンド -2.63 9.75 0.55 3.3%以内 0.1265
グローバルESG株式インデックスファンド -4.01 9.57 0.46 3.3%以内 0.8635
野村インデックスファンド・先進国ESG株式 -4.36 9.52 0.52 2.2%以内 最大0.297 0.3

※税込表記

2 純資産額が多い投資信託

次に、純資産額の多い投資信託を見ていきましょう。上位1位と3位銘柄は野村ACI先進医療インパクト投資のため、日本の銘柄を投資対象としているダイワ上場投信-MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数を取り上げます。

2-1 野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース

純資産額1位は、野村ACI先進医療インパクト投資 Bコースの823.72億円です。マザーファンドを通じて投資するファミリーファンド方式で運用しています。

ファンドはAからDコースの4銘柄が設定されており、AとBが資産成長型(年2回分配)、CとDが予想分配金提示型(毎月分配)です。なお、AとCが為替ヘッジあり、BとDが為替ヘッジなしです。

2022年9月末時点の純資産は4銘柄で約2,000億円です。このうち、為替ヘッジ無しのBとDの合計純資産額が70%に相当する約1,400億円です。為替ヘッジ無しが人気のようです。

組み入れ銘柄数は45銘柄で、上位10位銘柄の全体に対する組み入れ比率は56.1%です。銘柄は、ユナイテッドヘルス・グループ、ブリストロ・マイヤーズ、ダナハー、アボット・ラボラトリーズ、CVSヘルス、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ゾエティス、バーテックス・ファーマシューティカルズです。

主要投資先のESGへの取り組みの例を紹介します。

  • ブリストロ・マイヤーズ(BMY):2020年にESG戦略を策定し、健康の平等性、ダイバーシティ&インクルージョン、環境責任へのコミットメントを強化。愛知工場では、国際標準化機構(ISO)の環境マネージメント規格であるISO14001の承認を取得。
  • ダナハー(DHR):生活と地球を改善するような環境に配慮した製品を革新し、持続可能でよりよい世界を目指す。2021年の新入社員の43%が女性で、かつ多様な人材を採用。
  • アボット・ラボラトリーズ(ABT):アボット基金を設立し、ヘルスケアへのアクセスを拡大するような革新的アイデアや医療教育の促進に投資。

2-2 グローバルESGバランスファンド(為替ヘッジなし)

グローバルESGバランスファンド(為替ヘッジなし)の純資産額は764億円です。モーニングスターが選んだ2021年ESG型部門の優秀ファンド賞を受賞しました。

基本投資比率は米ドル建て債に50%(ESG先進国社債マザーファンドに35%、米ドル建てESG新興国債マザーファンドに15%)、株式に25%(ACI ESGグローバル小型株マザーファンド)、REITに25%(ACI ESGグローバルREITマザーファンド)です。

このうち、株式は68銘柄に投資をし、上位10銘柄はCNHインダストリアル、ネクストエラエナジー・キャピタルホールディングス、HP、ヘルスピーク・プロパティーズ、NXP BV/NXPファンディングLLC/N、エネル・ファイナンス・インターナショナル、フェデックス、ラルフローレン、スターバックス、WEAファイナンス/ウェストフィールドUK&ヨーロッパです。これら10銘柄で全体の22.8%を占めています。

主要投資先のESGへの取り組みの例を紹介します。

  • CNHインダストリアル(CNHI):農業および建設機器のメーカー。SDGsの優先項目と目標は、飢餓、不平等、保険など6つです。2021年度に世界の5つの工場に太陽光パネルを設置。循環型経済のため、節水、肥料の使用量・廃棄物の削減が可能な農業を目指す。
  • ネクストエラエナジー・キャピタルホールディングス(NEP):風力発電や太陽光発電などクルーンエネルギー事業を展開する米国企業。持続可能性、企業責任、多様性への取り組みなどが評価され、フォーチュン誌の2022年「世界で最も賞賛される企業:電気・ガスユーティリティ業界」1位に選出。
  • HP(HPE):2040年までの温室効果ガス排出量ゼロ目標などを発表。2025年までの事業活動においてカーボンニュートラルを目標。人権、多様性、公平性などを尊重。

2-3 ダイワ上場投信-MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数

ダイワ上場投信-MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の純資産は204億円です。

2022年8月末時点で266銘柄に投資しています。組み入れ上位10銘柄は、トヨタ自動車、ソニーグループ、三菱UFJファイナンシャルG、第一三共、KDDI、日立、東京エレクトロン、リクルートホールディングス、任天堂、ダイキン工業です。なお、上位10銘柄の全体に占める割合は33.0%です。

主要投資先のESGへの取り組みの例を紹介します。

  • トヨタ自動車(7203):2050年までの長期的な取り組みを「トヨタ環境チャレンジ2050」とし、これを核として様々な取り組みを推進。トヨタの森づくりでは森が抱える課題や背景に向き合い、様々な活動を通して持続的な森づくりに取り組む。
  • ソニーグループ(6758):クリエーターとユーザーから学び、感動を創出する製品・サービスを提供。「学び」がソニーと地球のサステナビリティにつながるとして、現実を捉えて学ぶセンシングや捉えた世界から学ぶAI技術を開発。産学連携の強化、多様性の活用などが一例。
  • 三菱UFJファイナンシャルG(8306):ESGデータ集(環境データ、社会性データ)を公表。融資を通じた二酸化炭素の削減効果および経済効果の推移をHP上で確認可能。事業活動においても、同社の金融系グループにおけるCO2削減に向けた取り組みデータを開示。

純資産額(日本市場)上位7銘柄

ファンド名 純資産額(百万円) 最大申込手数料(%) 信託報酬(%) 解約手数料(%) トータルリターン(%) 基準価額(円)
1年 3年
野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース 82,372 3.3 1.815 0.3 7.54 17.5 15538
グローバルESGバランスファンド(為替ヘッジなし) 76,443 3.3 1.705 0.3 0.3 11663
野村ACI先進医療インパクト投資 Dコ-ス 60,746 3.3 1.815 0.3 7.66 17.5 10546
野村ACI先進医療インパクト投資 Aコ-ス 32,928 3.3 1.815 0.3 -17.23 6.01 11557
野村ACI先進医療インパクト投資 Cコ-ス 21,729 3.3 1.815 0.3 -17.14 6 8489
フード・イノべ-ション厳選株式ファンド 21,595 3.3 1.859 6.57 12752
ダイワ上場投信-MSCIジャパンESG 20,496 0.165 -9.85 7.01 2342

※税込表記

まとめ

ESG投資信託の投資先の多くは、海外企業でした。今回取り上げたファンドの中で、日本企業を対象としたファンドは、ダイワ上場投信MSCIジャパンESGのみです。現在のESG投資先は、欧米諸国の企業が主流と言えそうです。

しかし、東証の市場編成後、特にプライム上場銘柄において、ESG課題への積極的な取り組みが求められるようになりました。そのため、多くの企業が、従来の財務データとともに、ESGへの取り組み状況といった非財務データ掲載した統合報告書を発行するようになりました。

投資家は、投資判断材料として企業のESGへの取り組みを利用することが可能となるため、今後は、企業のESGへの取り組みが一層注目されることになりそうです。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。