国際通貨基金(IMF)が、暗号資産を含むデジタル通貨に対する今後の対応方針を説明するブログを、7月29日に公開した。「暗号資産を国の通貨に採用するのは早計だ」との見出しを使用している。
IMFは1944年の設立以降、世界190ヶ国が加盟する国際機関となっており、主に加盟国における為替政策の監視や国際収支が悪化した加盟国への融資などを行なっている。毎年開催されている年次総会には各国の中央銀行総裁が参加するなど、世界金融の安定化になくてはならない組織だ。
ブログでは、CBDCや民間発のデジタル通貨が対応する中、IMFとしてどのようにこの流れに対応していくのかについて見解が示されている。前提として、IMFはデジタル通貨を次のように評価した。
「新たなデジタル形式の通貨は、決済を安価かつ迅速化し、金融包摂を推進し、レジリエンスを高め、決済プロバイダーの競争を促進し、国境を超える送金を円滑にする可能性がある。」
一方で、相当な規模の投資に加えて、デジタル通貨の提供と規制における官民の役割の明確化など、難しい政策的選択が必要になるとの懸念も示している。暗号資産については、他のデジタル通貨とは根本的に異なる性質を持っているとした上で、「暗号資産を国の通貨に採用するのは早計だ」と結論づけた。
暗号資産が広範に使われるようになると、マクロ経済の安定へ悪影響を及ぼす可能性があるという。財やサービスの価格が法定通貨と暗号資産の両方で設定された場合、家計や企業はどちらの通貨を保有すべきか選択するのに相当な時間とリソースを使うことになり、その分生産的活動に費やす時間が減るだろうという見解だ。
また、金融政策の効果も薄れることになると懸念している。通常、外国通貨を自国通貨として採用する国は、他国の金融政策の信頼性を輸入し、経済と金利を他国の景気循環と一致させたいと考える。暗号資産を広範に採用する場合、どちらの効果も期待できないと分析した。
その他にも、すべてのモノの価格がビットコイン建てになった場合、国内物価が極めて不安定になることを指摘。また、マネーロンダリングやテロ資金供与対策が採られなければ、自国で流通する通貨が犯罪に使用される結果になってしまうことを懸念した。
以上を踏まえIMFの結論としては、デジタル通貨の台頭が顕著となる中でビットコインなどの暗号資産を国の通貨として採用することは、他国に優位な立場を取るための近道としては賢明ではないとしている。
【参照記事】The Rise of Public and Private Digital Money
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