GPIF、2020年度の運用実績は黒字最大37兆円。コロナ対策で株価上昇

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月2日、2020年度の運用実績を発表した。37兆7986億円の黒字となり、黒字幅は最大となった。年度の運用成績が黒字になるのは2018年以来。新型コロナウイルス感染拡大を受け、主要国では経済対策として大規模な財政支出や金融緩和が実施され、国内外の株価が大幅に上昇。収益率も25.15%で、過去最高となった。20年度の収益率は+25.15% 、収益額は+37兆7986億円。年金積立金の市場運用を開始した2001年度から2020年度までの累積収益額は+95兆3363億円となり、2020年度末の運用資産額は186兆1624億円だった。

資産構成割合(年金積立金全体)は外国株式24.89%(47兆8180億円)、 国内株式24.58%(47兆2273億円)、国内債券25.92%(49兆8078億円)、外国債券24.61%(47兆2943億円)。管理運用委託手数料額(管理運用委託手数料率))は611億円(0.04%)だった。20年度の国庫納付は1兆5818億円、市場運用開始以降(2001年度~2020年度)の累積で16兆8297億円となった。

2020年度のトピックスは①基本ポートフォリオに基づく運用の着実な実施②ESG活動の推進③オルタナティブ投資の充実の3点を挙げる。2020年度から新たな基本ポートフォリオに移行し、市場が大きく変動する中で、資産配分の見直しやリスク管理等を精緻かつ機動的に実施。この結果、20年度の収益率は+25.15%となり、実質7年ぶりに複合ベンチマーク対比の超過収益率がプラス(+0.32%)になった。

ESG活動では、環境・社会問題などの負の影響を減らし、運用資産全体の長期的なリターンを向上させるため、ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資を推進。20年度は投資原則を一部改訂し、被保険者の利益のために、投資先及び市場全体の持続的成長が長期的な収益の拡大に必要というESG 投資の背景となる考え方を明確化した。また、外国株式を対象とした2つのESG 指数「【ESG総合型】MSCI ACWI ESGユニバーサル指数」「【テーマ型(女性活躍)】Morningstar ジェンダー・ダイバーシティ指数(愛称『GenDi』)」を選定し、その指数に基づくパッシブ運用を開始している。

オルタナティブ投資では、より大きな分散効果が期待できるオルタナティブ資産(インフラストラクチャー、プライベート・エクイティ、不動産)を着実に積み上げ、運用の効率化、さらに年金財政の安定化を目指し、新たにプライベート・エクイティ(グローバル・戦略分散型)、不動産(グローバル・コア型 / 共同投資ファンド領域)の2つの運用受託機関を選定した。

20年度の業務概況書で、植田栄治理事(管理運用業務担当)兼CIOが2020年の運用を総括している。新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年2月~3月の2ヶ月間で日経平均株価は20%近く下落するなど、全資産のボラティリティは引き続き非常に高い状態(値動きが激しい状態)を維持する中で、GPIFは第4期中期計画の初年度を迎えた。同時に基本ポートフォリオ変更によって全運用資産に占める外国債券の比率が10%増(15%→25%)となり、年度初めには寄託金償還への対応も必要となった。これらに伴い、年度前半のGPIFの保有するポートフォリオでは①値下がりしたリスク資産への資金配分②基本ポートフォリオ変更に伴う外国債券への資金配分③寄託金償還、国庫納付、大幅な市場の動きによるリバランス資金の確保等を目的とした必要流動性額のアセスメント④高ボラティリティ環境下での基本ポートフォリオに沿う運用が重要となった。

このため、まず市場環境の悪化により低下したポートフォリオにおける株式の比率を50%近傍まで戻し、追加で約1.6兆円を外国債券のアクティブファンドに配分することによって、外国社債を購入し、リスク資産を増額。流動性対応では、過去のストレステスト等から必要流動性を再計算した上で、キャッシュアウト等対応ファンド(残高約8.7兆円)の廃止、短期資産の大幅減額(約2.8兆円減)を決め、1兆円規模の寄託金償還にも対応した上で、ポートフォリオのフルインベストメント(投資がされていない余剰の現金を出来る限り残さないこと)を実現出来た。

その後、株式市場の回復傾向が鮮明になり始めたが、市場のボラティリティは引き続き高位で推移し、推定トラッキングエラーが100bp程度(ある時点における1年後の超過収益率の変動幅が1標準偏差で100bp程度、すなわち約68%の確率で±1%以内の変動幅になることが見込まれること。1bp〈ベーシスポイント〉は0.01%)と比較的高い状態が継続した。そこでポートフォリオの収益率を基本ポートフォリオの複合ベンチマーク収益率に近づけるべく、新しい基本ポートフォリオ移行に伴う外国債券への配分に加え、全4資産内でのリスク低減にも努めた。外国債券ではドル建て債券とユーロやポンド建て債券の比率を数兆円規模で大幅調整、国内株式ではスタイルリスク低減のため、スマートベータ型の4ファンド(合計約2.9兆円)を解約している。

年度後半には株式市場をはじめとしたリスク資産の価格急回復はより確実となり、2020年3月に一時1万7000円を割った日経平均も12月末には1万円以上上昇。GPIFの保有するポートフォリオでも市場の上昇に伴い株式の比率が高まったため、リスクマネジメントの観点から内外株式の売却を進めた。

2019年度に新型コロナウイルス感染症の影響で−5.2%を記録した収益率は、2020年度は+25%超の(費用控除後の総利益額約37.7兆円)。また、実質7年ぶりに基本ポートフォリオに対する4000億円超の超過収益(+32bp)を獲得できた。ポートフォリオのリスクについても、20年度は計13兆円以上の内外株式を売却し、リスク低減が図られ、超過収益率の1日の最大変化幅も第1四半期の4分の1程度になり、ポートフォリオのリスクとリターンの比率は大きく改善した。

2020年度までの累積の収益率については、2001年度以降で+3.61%(累積収益額約95兆円)、株式の比率が50%の基本ポートフォリオになった2014年10月以降の累積収益額は約54兆円となった。以上からGPIFの保有するポートフォリオは短期では市場でのイベントに影響を受けるものの、長期では目標である賃金上昇率+1.7%を確保できる可能性が高い。

ESG 投資では、2020年度は、新たに外国株式の2つのESG指数の採用を行い、グリーンボンドやコロナ債などの投資を進めた結果、ESG指数に基づく株式パッシブ運用とグリーンボンド等の債券投資を合わせた狭義のESG投資額は約11.8兆円となった。

【参照レポート】GPIF「「2020年度業務概況書」

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HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム

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