大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY)の幹部は、企業がパブリック・プロックチェーンを利用することのメリットを主張した。EYは、パブリックなイーサリアム・ブロックチェーンを推奨している。米国の経済誌フォーブスが4月26日、伝えている。
4月に開催されたオンライン会議「EY Global Summit 2020 I Going Public」で、EYのグローバルブロックチェーン部門リーダーのポール・ブロディ氏が基調講演を行った。同氏によると、パブリック・プロックチェーンを利用することにより、企業は特定ベンダーの独自技術への依存を排除でき、ソフトウェアの総保有コスト(TCO)を削減でき、開発担当者を抱えずともブロックチェーン・ネットワーク構築による効果を享受できる利点がある。
しかし、これらの達成には課題が伴う。コンプライアンスや規制に準拠し、企業の持つ個⼈情報や顧客資産を守ることが前提となるからだ。
EYは、今年3月にマイクロソフトやイーサリアム開発企業であるコンセンサスと共同で「Baseline Protocol」を立ち上げた。Baseline の最終目標はパブリックなイーサリアム・ブロックチェーン上で動作し、企業が機密データを共有するためのミドルウェアとして機能することだ。
Baseline Protocolはトランザクションの秘匿化技術「ゼロ知識証明」を採用し、プライベートな情報をオープンにせずに当事者間で検証できる。Baselineのスマートコントラクトはビジネスロジックを保護した形で、組織間のP2P通信を可能にする。したがって、Baselineに準拠しているビジネスパートナーは競合他社にビジネスの詳細を知られずに、ERP、CRM、サプライチェーンシステムなどのデータを共有できる。
現在、Baselineの取り組みはチェーンリンクやメイカーダオなどのブロックチェーンプロジェクトのサポートを得ている。また、イーサラム財団、コンセンシス、イーサリアム企業連合(EEA)は資金を供給し、開発リソースを割り当てる計画だ。
一方で、Baselineの懸念はイーサリアムに特化している点にある。大型アップデート「Ethereum 2.0」の計画が長引けば、イーサリアムのスケーラビリティの問題解決も先送りとなる。フォーブスは、「ベンダーロックインをプロトコルロックインに置き換えたくはない」として「このミドルウェアが他のブロックチェーンにも接続できることが望ましい」と指摘している。
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高橋奈夕
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