新型コロナウイルスがきっかけとなり、デジタル決済へのシフトが加速するかもしれない。ドイツ銀行のマクロ戦略家、及びハーバード大学の2人の研究員が共同レポートを公表した。シンガポール政府系メディアグループが運営するCNAが3月31日、伝えている。
中国人民銀行の広州支部は、病院やフードコートなど新型コロナの感染リスクの高いエリアで使用された紙幣を洗浄、あるいは破棄している。FRB(米連邦準備制度理事会)では、感染防止策としてアジア地域から回収したドル紙幣の隔離措置を開始したという。流通する通貨がコロナウィルス感染の媒介となる可能性があるため、こうした措置は正当とみなされている。
中国以外の国は貨幣の消毒、破棄、再発行といった手段を実施していないが、新型コロナウイルスの拡大スピードを考えると、各国が感染防止策として資金の決済手段を見直す可能性はあるだろう。
現在のところ、デジタル決済の導入は特にアジアで進んでいる。若い世代は新技術の採用によりオープンな傾向があり、2018年末現在で中国のインターネットユーザーの約73%がオンライン決済サービスを利用していた。中国と東南アジア諸国の人口構成は、ヨーロッパや米国に比べまだ若いこともこうした結果に関係している。
中国政府は国策としてフィンテックを積極的に推進してきたが、西側諸国の多くはデジタル決済の採用においてアジア経済に遅れをとっている。ヨーロッパでデジタル決済の導入が進みにくい背景には、関連する大手企業が無いという構造的な問題や、人々がより現金を好む文化的な習慣もある。
しかし、EUは米国のハイテク大手にデジタル経済圏のシェアを奪われることを懸念しており、ゆっくりではあるが慎重なアプローチを取り始めている。実際に、スウェーデンでは中央銀行がデジタル通貨「e-krona(イークローナ)」を試験的に導入する動きを進めている。
ドイツ銀行の調査によると、デジタル化を促進するうえで「利便性」が鍵を握る。デジタルウォレットは無料で簡単に入手できる上に、デジタル決済は支払い履歴や家計の管理もサポートする。また、キャッシュレスにすることで物理的な強盗を防ぐセキュリティ上の利点もある。
ビル・ゲイツ氏の言葉を借りれば、「COVID-19は100年に1度のパンデミック」かもしれない。3人の研究者は「100年に1度の病原体は、100年に1度の解決策を必要とする」として「免れないデジタル決済へのシフトの加速は格好の場所である」と結んだ。
【参照記事】Commentary: The COVID-19 pandemic will accelerate a shift to digital payments
高橋奈夕
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