米ニューヨークに本拠を置くリサーチ会社のCB Insightsは、ブロックチェーンおよび仮想通貨への投資トレンドに関するレポート「Blockchain Investment Trends In Review」を公表した。同レポートは、ブロックチェーン業界を代表するコンソーシア(共同事業体)としてHyperledger、Enterprise Ethereum Alliance、Ripple、R3の4つを挙げている。
HyperledgerはLinux Foundationが2015年に立ち上げたコンソーシアであり、IBM、Intelなどが初期から参加している。2017年7月にはブロックチェーンのFabric 1.0がリリース可能な段階に入ったと公表し、同年8月にはWalmart、Unilever、Nestlé、Doleなどと共に、ブロックチェーンを用いて食の安全を守る取り組みを始めた。
同コンソーシアには現在150あまりのメンバーが所属しており、特にアメリカと中国からの参加者が多い。ソフトウェアや金融サービスを扱うプロジェクトが多く、現在はイーサリアムのスマートコントラクトとの相互運用を推進するプロジェクトが立ち上がっている。
Enterprise Ethereum Allianceは2017年3月にMicrosoft、JP Morgan Chaseなどから支援を受けて立ち上がり、IBMやLinux Foundationが中心となっているHyperledgerと競合関係にあるコンソーシアとして注目されている。Hyperledgerとの違いはそのガバナンスにあり、IBMやLinuxがHyperledgerを直接コントロールしているのとは対照的に、Microsoftはイーサリアムの技術開発にあまり関与しない。
同コンソーシアには、イーサリアムのパブリックブロックチェーンに関心を持つ組織が120以上新たに加わり、ブロックチェーンに関わるオープンソースのコンソーシアとして最大規模を誇っている。
Rippleは厳密に言うとコンソーシアではないが、同社のソフトウェアを利用するコンソーシアを幾つも管理している。Rippleが他のコンソーシアと大きく異なるのは、自社の仮想通貨であるXRPで資金の大半をまかなっている点だ。同社は、世界的に展開する銀行が実際に資金を動かすことなく送金できる仕組みを構築しており、その点においてSWIFTと競合関係にある。
R3からは近年、Goldman SachsやMorgan Stanleyなど存在感のあったメンバーが脱退し困難に直面した。また2017年9月には、XRPのオプション契約を破ったとしてRippleに対し訴訟を起こしている。こういったトラブルが発生してはいるものの、同コンソーシアには現在も100以上のメンバーが加入しており、アマゾンウェブサービス(AWS)にCordaのプラットフォームを立ち上げるなど様々なプロジェクトで精力的に活動している。
複数の企業による共同事業はそれぞれの企業の文化の違いなどから困難にぶつかることも珍しくない。ブロックチェーン業界はスタートアップの企業も多く、常に熾烈な競争を繰り広げていることからコンソーシアの難易度が高いことも容易にうかがえるが、一方で参加者が手を取り合うための中立的な場所としてコンソーシアが活用され業界やマーケットが発展していくことが期待される。
【参照サイト】Blockchain Investment Trends In Review
木村つぐみ
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