4月11日、米マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)が開設したメディアMIT Technology Reviewでプルーフ・オブ・ワークの仕組みに関するコラムが投稿された。
プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work)は、ビットコインの取引における合意形成の承認プロセスだ。ビットコインが当初提唱した「中央管理者の介在のないP2Pネットワークにおける決済通貨」においては、不特定多数の参加者がいるなかで取引の正当性を証明し続ける必要がある。そこで考えられたのが、経済的インセンティブを付与することによる合意形成の仕組み、プルーフ・オブ・ワークだ。
ビットコインでは、取引が完了するためにマイナーと呼ばれる取引承認者によって、膨大な量の計算による取引の承認作業(マイニング)が必要な仕組みとなっている。取引はブロックチェーン技術によって取引情報が維持・管理されており、ブロックチェーンは取引情報が複数包括されたブロックが連なることによって成り立っている。このブロックは約10分ごとに生成されるように調整されており、ブロックの正当性を計算するマイニングによって、マイナーはビットコインで報酬を受け取ることができる。誰かが取引を改ざんしようとしたり、正当な取引を取り消したりしようとすれば、おびただしい量の計算が必要となり、攻撃を仕掛けるコストがメリットをはるかに上回るため、攻撃するインセンティブが働かないと言われている。
マイニングには高度な知識が必要なわけではないが、正解にたどり着くまでに大量の計算をしらみつぶしに行うこととなる。宝くじを引く行為にも近いマイニングを、MITのChristian Catalini氏は「数学的に解けない無駄なパズルを解いている」と説明する。
大量の計算量が必要となるマイニングは、別の角度から見れば、マイニングのためには大量のエネルギーを投下しなければならないことを意味している。エネルギーとはつまり、プルーフ・オブ・ワークを行うコンピューターを稼働させるための電力のことだ。MIT Technology Reviewによると、ビットコインのハッシュレート、つまりマイニングに必要な計算量は世界中で1秒あたり約2500京回にも及んでおり、ハッシュレートは今後も増え続ける見込みだ。
大量の電力を使うと、環境にも当然影響が及ぶ。仮想通貨とエネルギーに関するクリアリングハウスDigiconomistによると、世界中で行われるマイニングによって年間約2,900万トンのCO2を排出しているという。これはアフガニスタンやクロアチアといった国々の年間排出量を上回る。仮想通貨が発展するためには、環境への深刻な影響が避けられないのだろうか。
そこで、プルーフ・オブ・ワークほどの電力を消費しない承認プロセスとして考案されたのが、プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake)だ。プルーフ・オブ・ステークは、仮想通貨の保有量と保有期間をかけ合わせて計算されるコインエイジが大きくなるほど、マイニングの難易度が低くなるように設計されている。その結果、プルーフ・オブ・ワークよりもエネルギー消費量は少なく、短時間でマイニングが終わることが特徴だ。
こうした特徴からプルーフ・オブ・ステークは環境に優しい承認プロセスとして注目されているが、通貨の保有量を優先するデメリットとして一部の人間に富が集中するという側面も存在する。いずれの方法もあちらを立てればこちらが立たずの状況で、仮想通貨はまさに発展途上のプロダクトとも言える。どちらのコンセンサスアルゴリズムが正解とは断言できないのが現状なのだ。
【参照サイト】Bitcoin is eating Quebec
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木村つぐみ
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