トヨタ紡織のESG・サステナビリティの取り組みや将来性は?株価推移、配当・優待情報も

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経営でESGやサステナビリティを重視する流れは強まっており、企業も自社の利益追求のみならず、環境や人権など幅広い課題の解決に貢献するよう求められています。トヨタ紡織は自動車のシートや内装・外装の開発や販売を手掛けている企業で、サステナビリティに関しても積極的な取り組みを行っています。

今回はトヨタ紡織のサステナビリティの取り組み、株価推移や業績について解説します。トヨタ紡織への投資を検討している方、ESGに関心のある方は参考にしてください。

※2023年5月10日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. トヨタ紡織の概要
  2. トヨタ紡織のESGに関する取り組み
    2-1.2050年環境ビジョン
    2-2.CDPの「気候変動」「水セキュリティ」で最高評価
    2-3.「健康経営優良法人2023ホワイト500」に認定
  3. トヨタ紡織の10年間の株価推移と業績
    3-1.10年間の株価推移
    3-2.業績
  4. トヨタ紡織の将来性
  5. トヨタ紡織の配当・優待情報
  6. まとめ

1.トヨタ紡織の概要

銘柄 トヨタ紡織
証券コード 3116
株価 2,144円
PER(会社予想) 18.2倍
PBR(実績) 1.01倍
配当利回り(会社予想) 3.33%

※2023年5月10日のデータ

トヨタ紡織は、自動車のシート・内装・外装など、自動車関連の部品の開発・製造・販売を手掛けている企業です。1918年創業、設立は1950年で、愛知県刈谷市に本社を構えています。従業員数は連結で44,264人(2021年度)となっています。

シート事業、内外装事業、ユニット部品事業の3つの事業があり、日本を含む世界5つの地域で事業を展開しています。売上収益は日本が7,006億円、米州が3,177億円、欧州・アフリカが962億円、中国が2,121億円、アジア・オセアニアが1,904億円です(いずれも2021年度、内部売り上げ控除前)。

シート事業では自動車用シート、航空機シート、その他鉄道車両用などのシートを提供。中でも事業のコアとなるのが乗用車用シートで、人間工学に基づき、長時間ドライブでも疲れにくく快適なシートを開発しています。シートポジションの記憶と復帰、蒸れを防止する機能など、同社の独自技術も搭載されています。

内外装事業で手掛けているのは、ドアトリム、天井まわり、フロアカーペット、デッキまわり、外装品です。ドアトリムとは、ドアの室内側の内張り部品のことで、部品同士の合わせの隙、複数部品での統一感などの技術が求められる部品です。

ユニット部品事業では、フィルター製品、エンジン周辺樹脂製品、電動化製品などを手掛けています。フィルターには、エンジンに送り込まれる空気のゴミや塵などを除去するエアフィルター、エンジンオイルの汚れを取り除くオイルフィルターなどがあります。

トヨタ紡織グループは、自動車の内装品(シート、ドアトリム)では国内トップ、世界で3位となっています(トヨタ紡織の発表による)。今後も、グローバルサプライヤーを凌駕する会社を目指すとしています。

2.トヨタ紡織のESGに関する取り組み

トヨタ紡織が実施しているサステナビリティ関連の取り組みを紹介します。

2-1.2050年環境ビジョン

トヨタ紡織グループは、2016年に「2050年環境ビジョン」を策定。事業活動におけるCO2排出量ゼロをはじめ、2050年に向けて達成すべき6つの環境目標を以下のように設定しました。

環境テーマ チャレンジ目標 施策
気候変動 トヨタ紡織グループCO2排出量ゼロ ・革新的生産技術開発
・製品・材料技術開発
・工場改善
・再生可能エネルギー・次世代エネルギーの活用
ライフサイクルCO2排出量ゼロ ・低CO2排出の材料製造
・高効率なエンジン関連部品の開発
・CO2排出最小の製品製造
天然資源の枯渇 天然資源使用量ミニマム化 ・易解体性・リサイクル設計の推進
・材料循環
・植物由来材料などの活用拡大
トヨタ紡織グループ廃棄物ミニマム化 ・資源の有効活用を狙った設計・工法開発
・マテリアルリサイクル100%
水不足 トヨタ紡織グループ生産工程 水リサイクル化による排出ゼロ ・水レス工程への置換
・排水の浄水再利用
・雨水利用などによる循環リサイクルの構築
生物多様性の危機 森づくり活動 132万本植樹 ・各国・各地域の固定種の生息地域保護や森林の保護

すべてのステークホルダーと協力して上記の目標を成し遂げることにより、子どもたちが笑顔で暮らせる持続可能な地球環境を目指すとしています。

2-2. CDPの「気候変動」「水セキュリティ」で最高評価

CDPはイギリスで設立され、企業に対して環境に関する情報開示を求め、評価スコアを公表しているNGOです。CDP2022「気候変動」および「水セキュリティ」の2部門にて、トヨタ紡織は最高評価であるA評価を獲得しました。

気候変動は初の評価、水セキュリティは2019年に次ぐ2回目の評価です。ダブルAを獲得した数少ない企業の1つにもなりました。

2-3.「健康経営優良法人2023ホワイト500」に認定

「健康経営優良法人2023ホワイト500」とは、健康経営を実践している大企業を評価する制度で、2016年度に経済産業省が創設しました。健康経営とは、従業員などの健康管理を経営的な視点で捉え、健康の維持や増進につながる取り組みを戦略的に実践することです。

トヨタ紡織では「健康な人づくり・健康文化の構築と定着」に取り組んでおり、心身両面からの健康サポートを全社員に実施。この取り組みが評価され、2021年度・2022年度ともに「健康経営優良法人2023ホワイト500」に認定されました。

メンタルヘルス活動として全社員に年に1度のストレスチェックを行い、高ストレス者への面談や相談を実施し、メンタルヘルス不調の未然防止に取り組んでいます。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により働き方や生活様式の変化が長期に及び、メンタルヘルスに大きな影響を及ぼしています。外部機関と連携し、カウンセリングサービスやコラム動画などを提供し、社員を孤独にさせない支援策も追加で展開しています。

3.トヨタ紡織の10年間の株価推移と業績

ここからは、トヨタ紡織の長期の株価推移や近年の業績について解説していきます。

3-1.10年間の株価推移

近年のトヨタ紡織の株価はやや上昇傾向にあります。2017年から2019年にかけて株価が大きく下落しましたが、2021年以降は再び上昇に転じており、直近では1,800円台から2,200円台の間で推移しています。

一方で、2016年から2017年にかけては2,700円台も記録していたため、まだそこまでは届いていません。直近で1,700円台がサポートラインとして機能している傾向も見受けられるため、今後さらに上昇するかに注目されます。

3-2.業績

直近5年間の業績推移は下記のとおりです。

項目 2017 2018 2019 2020 2021
売上収益 13,995 14,173 13,726 12,721 14,214
営業利益 711 612 477 571 602
当期利益 427 274 247 311 392

※単位:億円
※2017年度は日本基準、2018年度以降はIFRS(国際会計基準)

売上収益は1兆4,000億円前後で推移しています。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で大幅に数字を落としましたが、2021年度は2018年度と同水準に回復しました。新型コロナからの回復需要で自動車の生産台数は伸びており、シートや内外装など強い関連のある部品の需要も今後伸びると予想されます。

当期である2022年度の連結業績について、第3四半期時点での見通しによると、売上収益は前年比9.7%増ですが、営業利益は28.7%減、当期利益は36.3%g減となっています。グローバルでの増産や為替の影響により増収になる一方、原材料の高騰、諸経費増加、ロシア事業終了に伴う費用計上などにより減益になるとのことです。

4.トヨタ紡織の将来性

トヨタ紡織の将来性について、ESGと業績の両面から考察していきます。まずESG・サステナビリティに関して、特に環境面で大きな目標を掲げ、最新技術を中心とした施策で課題解決に取り組んでいます。

自動車は多様な部品で構成され、生産や廃棄において環境への負荷も大きくなっています。環境負荷を下げるには、同社の先端技術も欠かせない存在となるでしょう。更なる技術の進化により、同社の掲げる目標への到達が期待されます。

次に業績ですが、売上に相当する営業収益は順調に増加しています。新型コロナで2020年度はいったん減収となりましたが、2021年度は回復し、2022年度は10%近くの増収となる見込みです。

その一方で利益面では原材料高騰や諸経費の増加が、増益を阻んでいます。ロシア事業終了の費用も、一時的な要因とはいえ大きな影響を与えているようです。収益力向上に引き続き取り組むことが求められますが、一方で今後の成長のためには、将来に向けた投資も欠かせません。この両立をできるかが、同社の将来性の鍵となるでしょう。

5.トヨタ紡織の配当・優待情報

1株あたり年間配当 2022年3月期実績:64円
2023年3月期予定:70円
主な株主優待 なし

長期安定的な配当の継続を重視する方針で、2022年度は64円、2023年度は70円の増配を予定しています。

まとめ

トヨタ紡織のESG関連の取り組み、株価推移や近年の業績について解説してきました。自動車のシートや内装・外装などの部品を数多く手がけているメーカーであり、自動車の製造に欠かせない役割を果たしています。近年の業績に関して売上は堅調である一方、収益性の向上が今後の課題です。

ESG・サステナビリティでは環境や労働関連で積極的な取り組みを行っています。CDPなど外部機関からも評価されており、今後さらなる推進が期待されます。

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安藤 真一郎

マーケティング会社に勤務した後、ライター・コラムニストに転身。 さまざまなジャンルの執筆を行う途中でマネーリテラシーの重要性に気づき、現在はマネー・金融分野を中心に執筆活動を行う。投資、資産形成、年金、税制度、ローン、節約、キャッシュレス決済など多数の執筆実績あり。投資に関しては中長期での利益獲得を目指し、米国株式や先進国株式を中心とする投資スタイル。ファイナンシャルプランナー資格保有。