住友ファーマは、旧大日本住友製薬の社名で親しまれた住友化学系の医薬品大手の会社です。がんや再生医療などの領域で医薬品の研究開発に注力しており、昨今ではパーキンソン病のような難病の治療薬を米国で販売しているほか、持続可能な成長に向けたサステナビリティについても積極的に取り組んでいるのが特徴です。
そこでこの記事では、住友ファーマのESGおよびサステナビリティの取り組み内容について詳しく解説しています。株主優待情報についても紹介していますので、住友ファーマへの投資を検討している方は参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年10月16日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- 住友ファーマの特徴
1-1.医薬品の研究開発力
1-2.プロフェッショナル人材の育成
1-3.強固なグローバル基盤 - 住友ファーマのESG・サステナビリティの取り組み
2-1.住友ファーマのESGの取り組み
2-2.住友ファーマのサステナビリティの取り組み - 住友ファーマの株価動向
- 住友ファーマの配当・株主優待
- まとめ
1 住友ファーマの特徴
医薬品開発大手である住友ファーマの特徴を確認していきましょう。
1-1 医薬品の研究開発力
住友ファーマは医薬品の研究開発力に優れており、特に「精神神経領域」「がん領域」「再生、細胞医薬品分野」の3領域において強みを持っています。
精神神経領域とは、統合失調症治療医薬やセレトニン作動性抗不安薬の精神領域と、パーキンソン病治療薬や抗てんかん剤などの神経領域からなるセグメントです。精神神経領域の医療ニーズは高く、健康寿命への影響が大きい疾患領域です。現在、開発中の新規化合物は全部で13個であり、長年にわたり多くの製品を研究開発してきた実績と、先端技術を活用した創薬開発に取り組んでいます。
がん領域では、複数のパイプラインを創出してきた実績があり、とりわけ研究開発に注力しています。開発中の新規化合物は8個あり、実際、研究成果を患者の治療に結びつけることで、新薬創出における成功角度を向上させる取り組みを実施中です。
再生、細胞医薬品分野では、研究に重点を置く形で既存の治療薬では解決できない疾患治療にアプローチしています。現在進行中の具体的なプロジェクト数は5個あり、住友ファーマが保有する独自の生産設備であるSMaRTを用いることで、製造ノウハウなどの技術基盤を整えるとともに、早期の事業化を図っています。
1-2 プロフェッショナル人材の育成
住友ファーマでは、プロフェッショナル人材の育成にも力を入れています。社員一人ひとりが主体性と創造性を最大限に発揮できる職場環境作りに取り組んでいるほか、専門性をもとに高い成果をあげる人材を活用するプロフェッショナル人事制度を用意しています。この制度を活用することで、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するとともに、プロフェッショナルな社員の育成を実現しています。
1-3 強固なグローバル基盤
住友ファーマは世界に強固なグローバル基盤を有しているのも特徴です。日本と米国、中国それぞれに現地の本社機能と販売機能、開発機能を有した拠点を持つことで、グローバルリーダーになることを目指しています。
2 住友ファーマのESG・サステナビリティの取り組み
住友ファーマのESGおよびサステナビリティの具体的な取り組み内容を確認していきましょう。
2-1 住友ファーマのESGの取り組み
住友ファーマのESGに対する取り組みは、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)に分けることができます。例えば、E(環境)では環境マネジメントと題して、以下5つの施策を掲げています。
- 環境目標およびパフォーマンス
- 低炭素社会構築への貢献
- 省資源の取り組み
- コミュニケーションの推進
- 生物多様性への取り組み
環境目標およびパフォーマンスでは、環境活動における重点課題を明確にした上で、継続的な改善を図るために新中期環境目標と長期環境目標を策定し、取り組んでいます。
具体的には、2030年度までに温室ガス排出量を2017年度比で35%削減する予定のほか、水資源の保全として2030年度までに水使用量を2018年度比で12%削減し、廃棄物の再資源化率を80%以上維持すると共に、2030年度までに85%以上を目指すことを目標としています。長期環境目標では、2050年度までに温室効果ガスの排出量をゼロにすることを定めています。
低炭素社会構築への貢献としての具体的な取り組みとしては、サプライチェーン全体の排出量の把握に努めると共に、化学物質を管理することやエネルギー使用量などを行政に定期的に報告します。
加えて、コミュニケーションの推進については、従業員の環境意識を醸成する目的で、環境教育を実施中です。
生物多様性への取り組みとしては、遺伝子組換え実験にあたり、生物多様性の確保に関する法律を遵守することに加え、環境保全活動に取り組むことで、生態系の維持および改善に努めています。
一方、S(社会)については、医療関係者をはじめ、患者やその家族のニーズを的確に捉え、エビデンスレベルの高い情報の提供や発信を行っています。疾患に対するリテラシーの向上にも努めており、全国で市民公開講座を開催したり、エビデンスを構築したりして医療関係者に情報を提供しています。
また、社会との調和を図る目的で寄付による支援に力を入れています。寄付支援の内容としては、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、国内の自治体や団体などに医療防護服の寄付や、ワクチン接種の補助業務に協力しています。
そして、G(ガバナンス)ではコーポレートガバナンスやコンプライアンスにおいて、ステークホルダーエンゲージメントを重視しています。企業としての透明性が重要であると認識しており、情報開示の方針や基準、手続きを定めたコンプライアンス行動基準を制定し、事業活動における具体的な行動の規範としています。
そして、ステークホルダーとの対話を重視するため、患者さんや医療関係者、投資家などのステークホルダーごとに、実際のダイアローグの機会と実施状況を具体的に定めています。
2-2 住友ファーマのサステナビリティの取り組み
住友ファーマのサステナビリティに対する取り組みは、持続的な成長に向けたCSR経営の深化を目指すことにあります。住友ファーマにおけるCSR経営とは、「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」ことです。
CSR経営を推進するにあたり、マテリアリティと呼ばれる重要課題を設定し、課題を解決するための具体的な行動宣言を設定し、取り組んでいます。
マテリアリティ(重要課題)には、さらにマテリアリティマップと呼ばれる優先順位が付けられています。具体的なマテリアリティは、以下の通りです。
- 革新的な医薬品と医療ソリューションの創出
- サイエンス発展への貢献
- 働き方改革
- ダイバーシティ&インクルージョン
- グローバルヘルスへの貢献
- 医薬品アクセス向上への取り組み
- 患者支援とアドポカシー
- 途上国に対する医療インフラ整備支援
- 偽造医薬品対策
- 地域貢献
上記のマテリアリティの中でも、優先順位が高いのは、「革新的な医薬品と医療ソリューションの創出」「サイエンス発展への貢献」です。
「革新的な医薬品と医療ソリューションの創出」では、いまだ十分に満たされない医療ニーズの高い領域での継続的な医薬品の創出と、医薬品事業とのシナジーが見込める領域を中心としたヘルスケア領域のニーズに対応する医療ソリューションを創出することでQOLの向上に貢献しています。また、サイエンス発展への貢献では将来のヘルスケア領域のニーズに対応する医療ソリューションの創出を目指しています。
また、各マテリアリティの目標としては具体的なKPIを設定しています。例えば、住友ファーマの強みである医薬品の研究開発領域については、それぞれの医薬品ごとの開発品目について各会計年度における目標を定めています。
その他にも、目標を達成するためのKPIを数値として開示しており、マテリアリティ達成に向けた具体的な行動指針が示されています。例えば、グローバルヘルスへの貢献としては、薬剤耐性(AMR)対策の強化として、AMR対策支援プログラムに参加した医師や薬剤師の人数を、途上国に対する医療インフラ整備支援では、途上国の医療インフラ整備に取り組むパートナーシップ数をそれぞれKPIとして設定しています。
このように、住友ファーマではサステナビリティの取り組みとして、CSR経営を推進することで、持続的な成長を目指しています。
3 住友ファーマの株価動向
住友ファーマの株価動向を見ていきましょう。2022年10月14日時点における住友ファーマの株価は終値1,058円を付けています。直近10年間の期間で株価推移を見ると、2018年12月6日に付けた高値4,135円を付けて以降、株価は右肩下がりが続いており、2022年9月28日には一時979円と1,000円を下回る水準で推移中です。
値下がりが2018年12月以降続いている原因には、サンバイオと共同で研究開発していた治療薬SB623についてアメリカで使用許可が下りなかった出来事が挙げられます。SB623は許可されれば、脳の神経機能を再生させる世界初の薬でしたが、アメリカ単独のフェーズIIの治験で十分な効果が見られなかったため、株価はストップ安となりました。
株価が1,000円を下回ってからは横ばいが続いており、売りが一巡した後の今後の株価動向から目が離せない状況は続いています。
4 住友ファーマの配当・株主優待
住友ファーマは株主優待を実施していません。しかし、株主還元の方法として配当金の支払いを実施中です。2021年度の期末配当金は1株あたり14円なので、中間配当金の1株あたり14円と合わせると、年間配当金の合計額は1株あたり28円となります。2022年度は年間配当金の合計として、前年度と同じく1株あたり28円と予想しています。
住友ファーマでは、企業価値と株主価値の持続的かつ一体的な向上を基本方針としており、連続配当性向を基準として配当金の方針を決めています。そのため、業績の向上に連動して配当金の増配が行われる仕組みとなっており、中期経営計画では2018年度を起点として2022年度までに、20%以上の平均配当性向を目指しています。
項目 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|
配当性向 | 19.8% | 19.7% | 50.6%(予定) |
なお、配当性向とは投資先の企業を評価する際に用いられる指標の一つであり、当期純利益のうち、どれくらいの割合を配当金として支払っているのかを表します。配当性向は、「1株あたりの配当額÷1株あたりの当期純利益×100」で求めることができます。例えば、配当金支払い総額200億円、当期純利益1,000億円の配当性向は、200億円÷1,000億円×100=20%となります。
配当性向を見ることで、投資したい銘柄が1年間で稼いだ利益のうち、どれくらいの割合を株主還元に回しているのかなど、投資先企業が株主還元に積極的かどうかを判断できます。住友ファーマでは、自己株式の取得や株主優待制度は行っていませんが、配当性向を見ると、業績に連動する形で継続的な配当による株主還元が期待できます。
まとめ
住友ファーマのESGおよびサステナビリティの取り組みは行動宣言や重要課題に基づいて、積極的に推進されており、持続的な成長を目指しているのが特徴です。
一方、株主優待制度は実施していませんが、配当金の支払いによる株主還元を行っています。配当金は配当性向に基づいて決定されるため、通期の業績に連動する形で配当金の増配が期待できます。
住友ファーマのESGやサステナビリティの取組姿勢に関心のある方は、この記事も参考に検討を進めてみてはいかがでしょうか。
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