東証プライム市場に上場するシスメックスは、ここ数年順調に売上高を伸ばしている企業です。企業の環境や社会、ガバナンスへの取り組みを投資判断の要素とするESG投資が活発になる中、シスメックスでもSDGs達成などに向けたESG・サステナビリティの取り組みが進められています。
そこで、この記事ではシスメックスのESGやサステナビリティへの取り組みについて詳しく解説します。会社概要や株価動向、株主優待などの情報も併せてご紹介するので、ご参考ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年10月14日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- シスメックスの特徴
- シスメックスの株価動向
2-1.最近の業績
2-2.株価動向 - シスメックスのESG・サステナビリティの取り組み
3-1.マテリアリティ
3-2.環境に配慮した取り組み
3-3.社会的な課題への取り組み
3-4.コーポレートガバナンス強化への取り組み - シスメックスの配当・株主優待
- まとめ
1 シスメックスの特徴
シスメックス株式会社(6869)は、1968年2月20日に設立され医療機器や検査用試薬などの開発・製造・販売を行っている兵庫県神戸市に本社を構える企業です。東証プライム市場に上場しており、日本の医療機器メーカーの中では、オリンパス、テルモ、富士フィルムHD、HOYA、テルモなどのトップメーカーに次ぐ売上規模となっています。
血液中の赤血球や白血球、血小板の数や種類、形状を測定すると共に、ヘモグロビンなど貧血に関する項目を調べる血球計数検査(ヘマトロジー)分野では、検査機器や試薬で世界1位のシェアとなっているほか、尿や細胞などの検体検査でも高シェアを握っている点が強みです。
シスメックスの企業理念は、企業活動の拠り所となる考え方や進むべき方向性、価値観を明示した「Sysmex Way」という方針をグループ全体で掲げています。「Sysmex Way」では、「ヘルスケアの進化をデザインする」というミッションの下、独創性あふれる新しい価値の創造と人々への安心を追求し続ける点が特徴です。
「Sysmex Way」に基づいてステークホルダーへの行動基準も定められており、顧客や従業員、取引先、株主に対するものだけでなく社会に対する行動基準まで定められています。例えば、株主に対しては、経営の健全性と透明性を高めることや積極的な情報開示とコミュニケーション、堅実かつ革新的な経営の推進によって持続的な成長と株主価値の向上に努めることが主な内容です。
また、社会に対しては、法令遵守や高い倫理観に基づいた事業活動の推進、環境問題を始めとした地球や社会が抱える様々な問題の解決に社会と共に取り組むことが明記されており、これらの行動基準に則ってシスメックスのESGやサステナビリティへの取り組みが進められています。
2 シスメックスの株価動向
ここからは、設立後54年を経過したシスメックスの最近の業績や株価動向について確認してみましょう。過去5年のシスメックスの業績について、決算短信を基に連結ベースで売上高と営業利益、当期利益をまとめた表は以下の通りです。
2-1 最近の業績
(単位:百万円)
決算期 | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 281,935 | 293,506 | 301,980 | 305,073 | 363,780 |
営業利益 | 59,078 | 61,282 | 55,284 | 51,792 | 67,416 |
当期利益 | 39,076 | 59,078 | 34,813 | 33,103 | 44,071 |
(参照:シスメックス株式会社 IR関連レポート)
ここ5年ほど連結ベースの売上高は増加し続けており、2018年3月期の約2,819億円と比較すると直近の2022年3月期決算では約3割増の3,637億円をマークしています。年度ごとに差はあるものの、売上高の増加に伴い営業利益や当期利益も増益傾向を示しており、最近の業績は概ね順調な推移です。
2022年8月4日に発表された2023年3月期第1四半期の決算概要によると、売上高は前年同期比+8.4%と増えていますが、最近円安傾向を示している為替の影響を除くと実質-1.2%とわずかに減収になっています。これは中国のロックダウンによる検査需要の減少などが影響していますが、その他の地域は概ね順調で大幅な減収要因とはなりませんでした。
一方、営業利益は、原材料費の高騰などによる原価率の悪化や販売管理費の増加、研究開発費の増加などが原因で、為替の影響を除くと前期比-38.2%と比較的大きな減益です。
2023年3月期の通期業績予測は売上高12.7%増の4,100億円、営業利益12.7%増の760億円で据え置かれたものの、第一四半期は為替や新型コロナなど外部要因が比較的大きな影響として表れているため、業績推移などは今後も細かくチェックしておく必要があります。
2-2 株価動向
次にシスメックスの過去の株価動向についても確認しておきましょう。以下は2017年以降の同社の各四半期末日時点の終値をまとめた表です。
項目 | 期末(3月末) | 6月末 | 9月末 | 12月末 |
---|---|---|---|---|
2017年 | 6,750円 | 6,710円 | 7,180円 | 8,870円 |
2018年 | 9,640円 | 10,340円 | 9,780円 | 5,276円 |
2019年 | 6,690円 | 7,027円 | 7,232円 | 7,449円 |
2020年 | 7,846円 | 8,230円 | 10,030円 | 12,400円 |
2021年 | 11,925円 | 13,200円 | 13,930円 | 15,550円 |
2022年 | 8,923円 | 8,166円 | 7,768円 | - |
(参照:日本取引所グループ 月間相場表)
2017年3月末から株価は大きな上下動を繰り返しており、2018年12月末に5,276円だった株価が2021年12月末には15,550円と約3倍に上昇しています。これはエーザイ株式会社(4523)と共同で開発している簡便な血液検査でアルツハイマー病の診断ができる診断法の創出や、堅調なシスメックスの業績が材料となり、株価は上昇したものとされています。
しかし、2022年に入ると、アルツハイマー診断は今後海外大手との競合が厳しくなるとの見通しと共に、一部の証券会社が投資判断と目標株価を引き下げたことから、株価は大幅な下落に転じています。
もともと、株価水準の高いハイテク株として割高感などもあったことから下げ幅は大きくなっており、中国での減収なども悪材料として加わったことから直近の2022年9月末も株価は高値から低迷したままです。
今後もエーザイとのアルツハイマー病診断の共同開発や原材料の高騰、新型コロナによる売上高や販管費への影響などを見極めながら、引き続き株価動向を注視したい銘柄となっています。
3 シスメックスのESG・サステナビリティの取り組み
シスメックスでは、サステナビリティ活動の企画・立案や推進、社内外へESG情報を発信するサステナビリティ推進部という専門部署を設置し、ESGやサステナビリティの取り組みを推進しています。ここからは具体的な取り組み内容について詳しく確認してみましょう。
3-1 マテリアリティ
シスメックスは持続可能な社会の実現と同社の持続的な成長に向けて優先的に取り組むべき5つの課題(マテリアリティ)を掲げています。それぞれの課題と内容は以下の表の通りです。
分野 | マテリアリティ | 内容 |
---|---|---|
社会 | 製品・サービスを通じた医療課題解決 | ・イノベーションを通じた医療課題解決 ・医療アクセスの向上 |
責任ある製品・サービスの提供 | ・品質と信頼の追求 ・サプライチェーンマネジメントの強化 |
|
魅力ある職場の実現 | ・働きやすい職場環境の確保 ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進 ・人材の育成 ・健康増進と労働安全の推進 |
|
環境 | 環境への配慮 | ・製品ライフサイクルにおける環境配慮 ・事業所活動における環境負荷低減 |
ガバナンス | ガバナンスの強化 | ・コーポレートガバナンス ・コンプライアンス ・リスクマネジメント |
今後も課題に対する進捗を可視化して実効性を一層高めるため、2021年度の見直しでは中期経営計画に沿った具体的な目標やKPI(重要業績評価指標)をサステナビリティ目標として設定し、経営会議などで進捗確認を行うなど取り組みが進められています。
KPIとは、業績の管理や評価を行う上で重要な指標となるもので、組織の目標を達成するためには適正なKPIの設定が必要不可欠となっています。
3-2 環境に配慮した取り組み
シスメックスでは、マテリアリティで掲げた課題の解決などを通じてESGの要素である環境に配慮した取り組みを進めています。シスメックスはヘルスケア分野に関わる企業として、地球環境保全活動を通じて豊かな健康社会づくりに貢献することを環境方針に掲げ、長期的な環境マネジメントの指針である「シスメックス・エコビジョン2025」を制定しています。
「シスメックス・エコビジョン2025」では、2025年度までの長期環境目標として二酸化炭素の排出量や水消費量の削減、事業活動におけるリサイクル率などを数値化して定めています。
具体的には、省電力化や小型化した製品の開発、環境負荷の少ない原材料や部品の調達、生産活動での再生可能エネルギーの活用、生産効率向上による二酸化炭素排出量や水使用量の削減など、製品ライフサイクルにおける環境配慮の取り組みを進めています。
また、事業所活動における環境負荷低減として設備の高効率化や再生可能エネルギーの導入、従業員への啓発など事業所での温室効果ガス排出量削減に対する取り組みなども進めており、その他にも社用車の二酸化炭素排出量削減や森林保全活動、廃棄物量の削減など取り組みは多岐にわたります。
3-3 社会的な課題への取り組み
シスメックスが高いシェアを持つ検体検査領域では、価値の高い検査や診断技術の創出、検査の普及などが社会的な課題です。医療アクセスの向上や品質マネジメントなどによる品質と信頼の追求、製品の安定供給に努めるためのサプライチェーンマネジメント強化などの取り組みを通じて課題解決に向けた取り組みを進めています。
また、「すべての人に健康と福祉を」というSDGsの目標の一つに対して、シスメックスは医療インフラの整備や医療人材の育成が不可欠という考え方です。多様な人材が安心して能力を発揮できる企業文化の醸成や、国籍・人種・性別・年齢・障がいの有無などに関わらず多様な人材が働きやすい環境を整備し受容する「ダイバーシティ&インクルージョン」を目指すことなどで目標の達成に向けて取り組んでいます。
3-4 コーポレートガバナンス強化への取り組み
シスメックスでは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためにはコーポレートガバナンスの強化が不可欠と捉えており、重要な経営課題の一つとして取り組みが進められています。
経営体制については、取締役会の監査・監督機能を強化し、経営の透明性や客観性を向上させるため監査等委員会設置会社制度が採用されています。執行役員制度も導入していますが、これは意思決定のスピードを高め、事業環境の変化に迅速に対応することが目的です。
コンプライアンスを推進・強化する取り組みも実施されており、を推進・強化する取り組みも実施されており、グループの全役員や従業員が遵守すべき重要なルールや行動のガイドラインとして定められたのが「グローバルコンプライアンスコード」です。その他、内部通報制度の運用なども行っており、2021年度の実績では国内外合わせて28件の内部通報に対して適切に対処したと発表されています。
また、リスクマネジメントに関する体制の整備なども進めており、事業継続に関わるリスクへの対応だけでなく、製品セキュリティや情報・サイバーセキュリティ対策の強化などにも乗り出しています。
4 シスメックスの配当・株主優待
シスメックスでは株主優待制度を実施していませんが、株主還元に積極的です。以下は過去5年のシスメックスの年間配当額と配当性向をまとめた表であり、業績が堅調に推移していることもあって増配傾向が続いています。2023年度3月期の年間配当予想額も80円で発表されており、今期も増配の見込みです。
項目 | 年間配当額 | 配当性向 |
---|---|---|
2022年3月期 | 76円 | 36.0% |
2021年3月期 | 72円 | 45.4% |
2020年3月期 | 72円 | 43.1% |
2019年3月期 | 70円 | 35.4% |
2018年3月期 | 66円 | 35.1% |
配当性向(当期純利益のうち株主還元として配当金の支払いに当てた割合)も2018年3月期には35.1%でしたが、年々高くなる傾向を見せており、2021年3月期は45.4%まで引き上げられています。2022年3月期は、大きな増益が原因で増配にも関わらず配当性向が36.0%に下がっていますが、シスメックスからは配当性向の目途は30%と発表されています。
このほか、過去には記念配当も実施されており、2018年3月期は創立50周年記念配当として6円、2016年3月期には上場20周年記念配当として4円が上乗せされています。2023年3月期は創立55周年を迎えるため、業績などとの兼ね合いで創立55周年の記念配当が出る可能性もあります。
まとめ
シスメックスは医療機器や検査用試薬などの開発・製造・販売などを行う東証プライム上場企業であり、血液などの検体検査で世界的にも高いシェアを握っているほか、最近は売上高も伸びており業績は順調に推移しています。
シスメックスのESGやサステナビリティに対する取り組みは、明確な課題(マテリアリティ)を掲げながら、環境や社会、ガバナンス、サステナブルな社会の実現を積極的に進めているので、興味のある方は検討を進めてみてはいかがでしょうか。
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