双日のESG・サステナビリティの取り組みは?配当情報も

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双日は、大手総合商社の一角としてサステナビリティに対する取り組みなど非財務情報を積極的に開示しており、様々なESG指数などにも採用されている上場企業です。

そこで、今回の記事では双日のESGやサステナビリティの取り組み内容を詳しくご紹介します。双日の特徴や業績・株価動向、配当推移なども併せてご説明しますので、ESG投資にご興味のある方や株式投資の銘柄選定などに迷われている方は、参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年12月4日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 双日の特徴
  2. 双日のESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.サステナビリティの考え方とマテリアリティ
    2-2.環境に配慮した取り組み
    2-3.社会に配慮した取り組み
    2-4.ガバナンスの強化に関する取り組み
    2-5.外部からのESG評価
  3. 双日の業績・株価動向
  4. 双日の配当推移
  5. まとめ

1 双日の特徴

双日株式会社は、ニチメンと日商岩井の2つの商社が合併して誕生した総合商社です。ニチメンと日商岩井はそれぞれ100年を超える長い歴史を持った総合商社で、2003年4月1日に持ち株会社のニチメン・日商岩井ホールディングスを設立、経営統合した後、持ち株会社傘下のニチメンと日商岩井が合併する形で双日が誕生しました。

東京プライム市場に上場する双日は、売上高などの業績面では総合商社トップクラスである三菱商事(8058)や伊藤忠商事(8001)と比べて差があるものの、日本では「7大商社」と呼ばれる大手総合商社の一角です。

一方、ニチメンや日商岩井の時代から航空産業や自動車、化学、肥料など総合商社として様々な分野に事業を展開しており、2022年12月4日時点で以下7つの事業本部体制を整えています。

事業本部 事業内容
自動車 ・ディストリビューター(卸売、代理店)事業
・ディーラー事業
・販売金融事業 など
航空産業・交通プロジェクト ・航空機代理店事業(民間、防衛)
・航空機リース事業
・交通インフラ事業 など
インフラ・ヘルスケア ・再生可能エネルギー事業
・ガス火力発電事業
・ヘルスケア事業 など
金属・資源・リサイクル ・金属資源権益及びトレーディング事業
・鉄鋼製品事業 など
化学 ・化学品事業
・レアアース事業 など
生活産業・アグリビジネス ・肥料製造販売事業
・林産資源事業(合板、建材) など
リテール・コンシューマーサービス ・食品流通事業(製造、卸売、物流、小売)
・水産加工卸事業 など

2 双日のESG・サステナビリティの取り組み

双日では、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を定めてグローバルな視点から環境や社会課題の解決などに取り組んでいます。こちらでは、サステナビリティに対する基本的な考え方や具体的なESGへの取り組み内容について確認してみましょう。

2-1 サステナビリティの考え方とマテリアリティ

双日のサステナビリティに対する基本的な考え方は、事業を通じて「同社が得る価値」と「社会が得る価値」の2つの価値の最大化を図ることです。これにより、双日グループと社会の両方が持続的な成長を目指すことを目的としています。

そして、上記2つの価値を継続的に創造するため、双日は以下6つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を定め、環境や社会、ガバナンスなどに対する課題解決に向けて事業を通じた中長期的な取り組みを進めています。

マテリアリティ 課題解決に向けた取り組み
事業に関わる人権の尊重 自社だけでなくサプライチェーン全体で事業に関わる人々の人権を尊重する取り組みなどを行う。
事業を通じた地球環境への貢献 環境保全に努め、環境性能の高い競争力ある事業に取り組み、CO2排出削減や生物多様性対応などを含めた事業に関わる環境負荷の最小化にも取り組む。
地域社会とともに発展・成長を実現 事業を通じた地域社会の環境・社会影響負荷の削減、地域社会の課題解決や次世代教育支援等に取り組む。
持続可能な資源の開発・供給・利用 持続可能な資源の開発や供給、利用を追求し、省資源化や適切なエネルギーミックスの提案、資源の安定供給に取り組む。
多様な人材の活躍・ダイバーシティの推進 人材が活躍できる環境づくりや採用・評価・育成の仕組み、多様な価値観を持つ人材が活躍できるダイバーシティの推進に取り組む。
有効性と透明性を重視 コンプライアンスの遵守や、中長期的な事業の持続可能性追求など企業統治とその透明性の追求に取り組む。

2-2 環境に配慮した取り組み

双日はグループ全体で環境方針を定めてCO2排出削減や資源・エネルギー問題などに取り組んでいます。例えば、CO2排出削減については、自社の直接的なエネルギー使用に起因するCO2の排出量を2030年までに6割、2050年までにゼロとする目標を掲げており、洋上風力発電事業やバイオマス発電事業など排出削減に向けた様々な取り組みが進行中です。

資源・エネルギー問題では、商社の重要な役割である資源の安定的な確保や調達に努める一方、持続可能な供給や利用が求められることから3R(リユース・リデュース・リサイクル)などを通じたサーキュラー・エコノミー(循環型経済)への対応などを進めています。

また、化学物質による汚染土壌の回復や水使用量の削減などに取り組むほか、生物多様性への対応を図るため事業に関わる環境負荷の最小化に取り組むなど、環境に配慮した多くの取り組みが進められています。

2-3 社会に配慮した取り組み

双日が社会に配慮した具体的な取り組みとして進めているのが人権の尊重やダイバーシティ推進、働き方改革などです。

人権の尊重では、「双日グループ人権方針」や「双日グループ サプライチェーンCSR行動指針」を策定し、グループ企業やサプライヤーなど全体で考え方を共有するほか、リスクを評価しながら人権問題の改善などに取り組む体制の構築などを進めています。

ダイバーシティ推進においては、2030年代の間に全社員に占める女性比率を50%程度にするなど具体的な目標を掲げて女性の活躍推進やその環境づくりを進めており、外国人人材の登用や中途採用者の管理職への登用など人材の多様化などにも取り組んでいます。

また、働き方改革では、年間の有給休暇取得日数17日以上や月間所定外労働時間80時間を超える社員数ゼロにすることなどを目標に掲げて取り組みを進めています。長期勤続者を対象とする休暇制度の整備や家族のサポートを目的とした「ファミリーサポート休暇」の導入なども行っており、様々な角度から労働環境の改善などに取り組んでいます。

2-4 ガバナンスの強化に関する取り組み

双日は企業理念や将来のビジョンに基づき中長期的な企業価値の向上を図っており、これを実現するために取り組んでいるのが健全性や透明性、効率性の高い経営体制の確立などコーポレート・ガバナンスの充実です。

例えば、取締役会では客観的かつ専門的な視点や多様な知見などを取り入れるために取締役8名のうち半数の4名に社外取締役を選出しており、社外取締役が議長や報酬委員会の委員長なども務めています。

これは、東証プライム市場に上場している企業でもあまり導入が進んでいない取り組み事例で、取締役会における決議や取締役の選任、報酬に関する妥当性や透明性の確保など取締役会や取締役の管理監督体制の強化を図っている点が大きなポイントです。

また、DXの推進による事業モデル・人材・業務プロセスの改革推進や、全社レベルでのリスクマネジメント体制の構築、コンプライアンス徹底などの取り組みも行っており、企業価値を向上するためガバナンス強化に向けた様々な取り組みが進められています。

2-5 外部からのESG評価

双日のESGやサステナビリティへの取り組みは外部の格付け機関などから高い評価を得ています。

例えば、世界中の大手企業の中からサステナビリティについて特に優秀な先進企業が選ばれる米国のS&Pグローバル社による格付け「S&P Global Sustainability Award」においてゴールド、シルバーに次ぐ「ブロンズクラス」に選定されているほか、ESG投資において大きな影響力のある英国の環境NGO「CDP」の格付けでも、気候変動の分野で上から2番目のリーダーシップレベル「A-」の格付けです。

また、世界最大級の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資の指標として採用する「FTSE Blossom Japan Index」をはじめ以下のESG指数にも選定されており、ESG投資の観点から注目度の高い銘柄となっています。

指数 選定基準
Dow Jones Sustainability Index(DJSI) 米国のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が提供しているESG指数で、経済・環境・社会の側面から持続可能性について評価の高い企業を選定。
FTSE4Good Index Series 世界中の企業から環境・社会・ガバナンスに対して様々な評価基準から優れた対応を行っている企業を選定。
FTSE Blossom Japan Index GPIFがESG投資の指標として採用している指数の一つで、環境・社会・ガバナンスの取り組みにおいて絶対評価が高い日本企業を選定。
FTSE Blossom Japan Sector Relative Index GPIFが2022年から新たに採用したESG指数で、ESG評価に加えて環境負荷の大きさや企業の気候変動リスクに対するマネジメントの評価なども加味して優れた対応の日本企業を選定。
MSCI日本株女性活躍指数(WIN) GPIFがESG投資の指標として採用している指数の一つで、女性の雇用や管理職への登用割合、ダイバーシティへの取り組みなど女性の活躍推進に優れた日本企業を選定。

3 双日の業績・株価動向

以下は双日の過去5期分の売上高と当期利益(グループ企業の親会社持ち分の利益などを加算した親会社の所有者に帰属する当期利益)をまとめた表です。

(単位:百万円)

決算期 2018年3月 2019年3月 2020年3月 2021年3月 2022年3月
売上高 1,816,459 1,856,190 1,754,825 1,602,485 2,100,752
当期利益 56,842 70,419 60,821 27,001 82,232

2020年3月期と2021年3月期は、新型コロナウィルスによる世界経済の減速や市況下落の影響を受けて大幅な減収減益となっています。しかし、2022年3月期には石炭市況の上昇や自動車・航空産業などの非資源事業が堅調に推移したことを受け大幅な増収となっており、当期利益は発足以来の過去最高を更新しています。

2023年3月期については、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や中国経済の先行き不透明感など世界経済への下押し圧力はあるものの、過去最高益を更新する見込みとなっており概ね堅調と言える業績推移です。

次は双日の株価動向を確認してみましょう。以下は2018年以降の四半期末における終値をまとめた表です。

(単位:円 カッコ内は株式分割前の株価に換算した金額)

項目 3月末(期末) 6月末 9月末 12月末
2018年 341 402 410 382
2019年 390 346 335 352
2020年 254 235 238 230
2021年 312 335 1,840
(368)
1,728
(345.6)
2022年 2,017
(403.4)
1,921
(384.2)
2,124
(424.8)

双日の株価は、業績と歩調を合わせるよう2020年に200円台前半まで値を下げる大幅な下落局面もありましたが、過去最高益を更新した2022年3月には併合前の株価ベースで403.4円まで上昇しており、その後は高値圏での推移です。

2023年3月期も良好な決算見通しとなっており、引き続き堅調な地合いが予測されますが、石炭などの資源価格の推移や世界経済の減速などによって株価がマイナスの影響を受ける可能性も考えられます。そのため、今後は市況や経済情勢の変化に注意することも大切です。

4 双日の配当推移

双日は株主優待制度を実施していませんので、こちらでは配当推移についてご紹介します。同社は2021年10月1日の株式併合により配当額をそのまま比較することができないため、2022年3月期の中間以前は併合後の株数を考慮した配当額で過去5期分の情報をまとめました(カッコ内は株式併合前の実際の1株当たりの配当額)。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2018年3月期 55円
(11円)
25円
(5円)
30円
(6円)
24.2%
2019年3月期 85円
(17円)
37.5円
(7.5円)
47.5円
(9.5円)
30.2%
2020年3月期 85円
(17円)
42.5円
(8.5円)
42.5円
(8.5円)
34.8%
2021年3月期 50円
(10円)
25円
(5円)
25円
(5円)
44.4%
2022年3月期 106円 45円
(9円)
61円 30.1%

2022年3月期は年間配当額が併合後ベースで106円となっており、2018年3月期の55円と比較して約2倍の水準です。新型コロナウィルスの影響によって大きく業績が低迷した2021年3月期は前年度より配当金も減りましたが、それを除くと最近は増配傾向が続いており、配当性向30%程度という配当方針に沿った結果となっています。

2023年3月期も増配傾向は続く見通しで、堅調な業績を受けて中間配当が56円から65円に引き上げられたほか、年間配当額も130円を下限とする増配見込みとなっています。

まとめ

双日はニチメンと日商岩井が合併して生まれた総合商社で自動車や航空産業、化学などの幅広い事業を展開している企業です。新型コロナウィルスの影響などを受け大幅な減収減益となる時期もありましたが、直近の決算では過去最高益を更新しており、株価も概ね堅調な推移となっています。

また、様々なESG指数に採用されるなどESG投資に適した銘柄となっています。非財務情報などの開示にも積極的な企業のため、これらの情報なども確認した上で投資判断を行うことが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チームは、株式投資に関する知識が豊富なメンバーが株式投資の基礎知識から投資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」