積水ハウス株式会社は12月1日、公益財団法人都市緑化機構に協力すると発表した。同機構は、都市緑地の生物多様性保全・回復の推進に向けて運用する「SEGES(緑の認定)」事業で生物多様性評価の視点を強化していることから、積水ハウスは2001年から続けている植栽プロジェクト「5本の樹」計画による知見と、独自の「ネイチャー・ポジティブ方法論」を提供していく。
同機構は13年に公益認定を受け、都市に緑をつくり、まもり、育てる活動に携わる市民、事業者、公共団体などを支援するとともに、都市の緑に関する調査研究、情報提供、普及啓発を行う。SEGES(シージェス)は、民間事業者が所有、管理する緑地の価値と取り組みの価値を客観的に評価する制度で「そだてる緑」「都市のオアシス」「つくる緑」の3部門がある。住友林業株式会社が特別協賛している。
積水ハウスの5本の樹計画は、01年から造園緑化事業として開始したプロジェクト。「3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を」という思いを込め、日本古来の里山をモデルに、地域の気候風土・鳥や蝶などと相性のよい在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりを提案している。
21年度の5本の樹をはじめとした年間の植栽本数は101万本、01年の事業開始からの累積植栽本数は1810万本を達成(22年1月現在)。19年からは琉球大学久保田研究室・株式会社シンクネイチャーと共同検証を進めており、21年には生物多様性保全効果の実効性を、樹木本数・樹種・位置データと生態系に関するビッグデータを用い、世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組みを構築。「ネイチャー・ポジティブ方法論」として公開した。
民間企業による緑化推進活動は、都市での緑地の保全、創出によるヒートアイランド現象の緩和や良好な景観形成などとして評価される反面、生物多様性保全・回復の観点からの貢献について定量的に評価することが難しく、企業緑地が果たす役割や価値を十分に評価・可視化できないという課題があった。
「生物多様性の定量評価が進み、都市緑化機構が認定する企業緑地が都市の生物多様性にどの程度貢献できているかを把握することができれば、より積極的な活動の促進とさらなる生物多様性保全・回復に向けた具体的な取り組みが期待できる。積水ハウスの5本の樹計画は、日本古来の里山思想を取り入れた生物多様性保全推進活動。日本各地の里山と都市の緑地が繋がることで、生態系ネットワークの回復、保全が促される。ネットワーク型の緑化は、企業一社だけではなく、多くの企業が取り組むことで有機的なつながりが生まれ。生物多様性保全への効果を発揮する」と両者は期待を込める。
積水ハウスは11月30日、「都市の生物多様性フォーラム」をテーマにしたフォーラムを都内で開催。カナダ・モントリオールで12月7日に開幕したCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)に先がけた企画。2021年のCOP15第1部に続く22年は、新たな世界目標(ポスト2020生物多様性枠組)が採択される見込みで、世界的に生物多様性保全に注目が集まるタイミングに、同社の生物多様性保全の取り組みや、国際自然保護連合日本委員会事務局長からのCOP15開催直前の情報などを発信した。
フォーラムでは、代表取締役社長執行役員兼CEOの仲井嘉浩氏が5本の樹計画による生物多様性保全の取り組みを紹介。同計画の意義と、企業として持続させていく意欲を示した。
国際自然保護連合(IUCN)日本委員会事務局長の道家哲平氏は「生物多様性COP15は、世界をどう変えるか」としてビデオ講演。ネイチャー・ポジティブは「配慮(マイナスをゼロに近づける)ではなく、ポジティブ(プラス)を求めること」と解説。また、持続可能な未来に向けた行動計画「IUCN Nature2030」で自然、自然と人の関係について記述した「知る、守る、回復する、投資する、人と自然をつなぎなおす」を引用し、生物多様性保全推進の指針をわかりやすく示した。
都市の生物多様性をテーマにしたパネルディスカッションでは、積水ハウスESG経営推進本部環境推進部 スペシャリストの八木隆史氏と、パネリストに写真家の今森光彦氏、千葉大学非常勤講師でNPO法人生態教育センター理事、株式会社生態計画研究所主席研究員の村松亜希子氏、立教大学特任教授で不二製油グループ本社CEO補佐を務める河口眞理子氏が登壇。生物多様性と教育や企業の考え方など、さまざまな角度で活発な意見交換を行った。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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