セイコーエプソンのESG・サステナビリティの取り組みは?株価・配当推移も

持続可能な社会の実現を目指すにあたり、企業の環境への取り組みやサステナビリティ経営が重要なテーマとなっています。プリンターの「EPSON」で知られるセイコーエプソン株式会社でも、環境や社会に配慮した製品を提供していますが、その詳細や将来性に関して、気になっている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、セイコーエプソンのESG・サステナビリティの取り組み内容について詳しくご紹介します。また、企業の特徴、最近の株価動向、株主還元情報も解説するので、興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年11月7日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. セイコーエプソンの特徴
  2. セイコーエプソンのESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.循環型経済実現に向けた取り組み
    2-2.産業構造の革新
    2-3.生活の質向上
    2-4.社会的責任の遂行
  3. セイコーエプソンの業績・株価動向
  4. セイコーエプソンの配当推移
  5. まとめ

1 セイコーエプソンの特徴

セイコーエプソン(6724)は、「EPSON」ブランドで有名なプリンター、スキャナー、プロジェクター、パソコンといった情報関連機器をはじめ、半導体などの産業用機器や腕時計ブランドの「TRUME」「ORIENT」の製造・販売も行っています。

セイコーエプソンは、2021年に「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」ための新たな長期ビジョン「Epson 25 Renewed」を策定しています。このビジョンでは、脱炭素や資源循環などの環境への取り組みや、デジタルプラットフォームを通じたカスタマーサクセスの貢献、事業投資や人材交流を通じた共創および社会課題の解決を掲げています。

セイコーエプソンの事業セグメントは、大きく分けて「プリンティングソリューション事業」「ビジュアルコミュニケーション事業」「マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業」などがあります。

各事業別売上高(2022年3月期時点)は、オフィス・ホーム用インクジェットプリンターや商業・産業用インクジェットプリンター等のプリンティングソリューション事業780,000百万円、液晶プロジェクター等のビジュアルコミュニケーション事業159,034百万円、産業用機器や腕時計等のマニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業191,984百万円となっています。

2 セイコーエプソンのESG・サステナビリティの取り組み

セイコーエプソンは、環境問題をはじめとする社会課題をベースに、持続可能でこころ豊かな社会を共創することを目指しています。また、国際目標であるSDGs「持続可能な開発目標」の17の目標すべてに貢献しており、ESG・サステナビリティに対する高い意識を持っています。

セイコーエプソンは、社会課題に対して4つの重要課題「マテリアリティ」を特定しています。以下、詳しく見ていきましょう。

2-1 循環型経済に向けた取り組み

循環型経済に向けた取り組みとして、セイコーエプソンの環境目標である「環境2050」を通じて、脱炭素の取り組み、資源循環の取り組み、環境負荷低減の取り組み、環境技術開発などを行っています。

脱炭素の取り組みでは、2025年度までに2017年度比で温室効果ガス排出量の34%削減および事業利益あたりの温室効果ガス排出量の44%削減を目指しています。排出量削減の主な施策は、各事業所での削減活動はもとより、生産革新や再生可能エネルギーの活用、低炭素電力の調達を行っています。

資源循環の取り組みでは、2050年までに「地下資源消費ゼロ」に向けて、生産工程における排出物の削減、水資源の保全に努めています。具体的な施策として、商品の小型軽量化や再生材活用、生産ロスを極小化する循環型生産システムの構築を行うほか、事業活動の水利用に関しては、工場排水のリサイクル率向上を図っています。

環境負荷低減の取り組みでは、環境負荷を低減する商品・サービスを通じて、環境負荷低減貢献量の最大化を図っています。環境負荷を低減する商品としては、印刷性能と低消費電力を両立させた高速ラインインクジェット複合機「LX-10050MFシリーズ」や再生プラスチックを使用したホームプリンター「EP-M553T」などが挙げられます。

環境技術開発では、環境負担低減に貢献する新たな技術開発を行い、環境ソリューションビジネスの創出を目指しています。現在、実用化を目指して取り組んでいる天然由来のバイオマスプラスチック「パラレジン」の技術開発は、廃材やリサイクル材から新たな製品を生み出すことで、地下資源の利用削減への貢献が期待されています。

2-2 産業構造の革新

「産業構造の革新」では、デジタル化・自動化による生産性向上や労働環境・教育環境の改善を行っています。デジタル化・自動化による生産性向上では、インクジェット技術の応用により、分散生産や近消費地生産、小ロット多品目種の生産や印刷など、多様な顧客ニーズに対応し、生産および印刷プロセスの革新を行っています。

セイコーエプソンの「R&D用インクジェット装置」では、「異物混入を起こさずに印刷したい」「熱を加えずに印刷したい」「フレキシブルな基材やストレッチャブルな基材へ印刷したい」「豆腐くらい柔らかな対象物に印刷したい」など、多様な顧客ニーズに対応しているため、幅広い業界から高い需要があります。

労働環境・教育環境の改善では、「すべての従業員が、加重な労働がなく、心身の健康を維持・増進することにより、活性化し、やりがいをもって効率的に仕事をしている」という働き方の実現を目指しています。詳しい内容は以下の通りです。

取り組み内容 具体的施策
働く場所・時間の柔軟化 1.朝会の柔軟な運用
2.定時退社日の柔軟な設定
3.在宅勤務制度の拡大
4.時間単位年休の導入
5.コアタイム無しフレックスタイムの運用
育児・介護と仕事の両立化 6.男性育休 制度改定
7.育児介護短時間勤務の適用期間延長
治療と仕事の両立支援 8.就業配慮の運用構築

また、セイコーエプソンは、人材育成にも力を入れており、新入社員や管理職向けの研修のほか、グローバルに活躍できる人材育成のため、若手社員の海外派遣も積極的に行っています。

2-3 生活の質向上

「生活の質向上」では、多様なライフスタイルの提案や豊かで彩のある暮らしの実現をサポートしています。多様なライフスタイルの提案では、「生活習慣改善プログラム」を通じてパーソナライズされた健康支援を行っています。

生活習慣改善プログラムは、健康保険組合向けに行われる保健指導プログラムで、健康相談員の指導のもと、運動や食事の改善、体重変化といった活動データで取り組みをサポートしています。

豊かで彩のある暮らしの実現では、高品質で感性に訴えるデザインの時計やエプソンのプロジェクターを活用した空間演出・アートへの展開を通じて、生活の質向上に貢献しています。

セイコーエプソンが提供する時計は、センサリング技術を活用したアナログ時計「TRUME」と老舗メーカーの「ORIENT」になります。TRUMEは、人工衛星からGPS情報を受信し、時間を自動修正するサテライトリンクや光で発電するライトチャージ機能に加えて、温度、歩数、消費カロリー等を確認できる機能性豊かな時計です。

ORIENTは、機械式時計やクオーツ時計など、幅広い仕様で展開されており、モダンでスタイリッシュなデザイン性から多くの愛用者を生み出しています。

また、映像空間演出向けプロジェクターでは、迫力のあるプロジェクションによる映像演出で、企業ショールームやミュージアムなど様々なシーンで活用され、美術作品などのデジタルアート化する取り組みも増えています。

2-4 社会的責任の遂行

「社会的責任の遂行」では、ステークホルダーエンゲージメントの向上、責任あるサプライチェーンの実現、人権の尊重とダイバーシティの推進、ガバナンスの強化が重要テーマとなっています。

セイコーエプソンは、顧客、株主・投資家、地域社会、サプライヤー、従業員、ビジネスパートナー・コンソーシアム、NGO・NPO・国際機関を重要なステークホルダーと捉え、コミュニケーションを通じて、ステークホルダーの期待や要望を把握し、信頼関係の構築に努めています。

責任あるサプライチェーンの実現においては、ビジネスパートナーとの共存共栄を示す「社会とともに発展」することを掲げ、CSRの国際基準「RBA(労働者の敬意・尊厳、環境負荷に対する責任等の基準)」の強化をサプライチェーンに要請しています。

また、差別や搾取的な労働などの人権と労働のリスクに関しては、人事担当執行役員を中心に、年1回グループ会社において調査を行い、改善・是正活動を実施しています。その上で、ダイバーシティの推進を行い、個性の尊重およびジェンダーギャップの解消にも努めています。

その他にも、セイコーエプソンは、経営の改善、不祥事の防止、株主・ビジネスパートナー、地域社会への利益の考慮等を目的として、ガバナンス(第三者機関によって企業経営を監視する仕組み)の充実・強化に取り組んでいます。

2-5 セイコーエプソンのESG・サステナビリティに関する外部評価

セイコーエプソンに対する取り組み内容は、以下のように外部からも高い評価を受けています。2021年〜2022年にかけて下記のような受賞や関連指数の選定実績があります。

2021年11月 日本経済新聞社が主催する「第3回日経 SDGs 経営大賞」の「環境価値賞」を受賞
2021年12月 国際的に影響力のある企業調査を行う非営利団体のCDPから、「気候変動」と「水 セキュリティ」の2分野で、最高評価となる「Aリスト」に2年連続で選定
2022年3月 健康経営の取り組みを促進することを目的として経済産業省と東京証券取引所が創設した「健康経営銘柄2022」に初めて選定
2022年6月 MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が作成する「 MSCI 日本株女性活躍指数」に6 年連続で選定
2022年6月 ロンドン証券取引所グループ FTSE Russell の責任投資(RI)指標である「 FTSE4Good Index Series」の構成銘柄として、19 年連続で選定

3 セイコーエプソンの業績・株価動向

セイコーエプソン(6724)は、精密機器セクターに該当し、景気動向に左右されやすい傾向があります。また、海外売上収益の比率が高く、関係国や為替にも大きく影響します。長期の株価は、最高値2,985円~2020年安値945円のレンジとなっており、業績に左右される形で浮き沈みを繰り返しています。

2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大で、売上収益が大きく落ち込みました。中国や欧州では、在宅需要で家庭用プリンターの売上が伸びたものの、外出規制を強める東南アジアやインドでは、生産や販売が遅れ、2020年3月期の売上高は前の期と比べて4%減、純利益は前の期から86%減となり、株価は1年を通して5.3%下落しています。

2021年は、部材調達難やサプライチェーン混乱の中、在宅におけるプリンター需要や物価高騰の影響に対して、値上げ対応および費用コントロールにより、2021年3月期の売上高は前の期と比べて11%増、純利益は前の期から31%増益となっています。また、市場全体の回復も追い風となり、株価は1年を通して35%上昇しています。

2022年度の通期業績予想は、インフレによる消費冷え込みリスクや中国の景気減速など、世界経済の不透明感高まりにより、売上高および純利益の伸び率鈍化が予想されています。

4 セイコーエプソンの配当推移

セイコーエプソンの株主還元・配当政策は、持続的な事業成長を実現し、成長戦略に基づく投資を最優先に行った上で、強固な財務構造の構築と積極的な利益還元を平行して取り組むことを基本方針としています。また、中期的には、連結配当性向40%程度を目標とし、自社株買いなども含めて、積極的な株主還元を図っています。

セイコーエプソンの配当金推移および連結配当性向は以下の通りです。

項目 中間配当金(9月末) 期末配当金(3月末) 年間配当金 連結配当性向
2023年3月期 31円(予想) 41円(予想)
(普通配当31円)
(記念配当10円)
72円(予想)
(普通配当62円)
(記念配当10円)
2022年3月期 31円 31円 62円 23.2%
2021年3月期 31円 31円 62円 69.4%
2020年3月期 31円 31円 62円 278.5%
2019年3月期 31円 31円 62円 40.7%
2018年3月期 30円 32円 62円 52.2%

※1株当たり配当額÷基本的1株当たり当期利益(EPS)×100%

2022年5月19日に、創立80周年記念配当として、2023年3月期の期末配当金に、前期比10円の増配が発表されています。それにより、合計の年間配当額が72円(予想)となり、配当利回り(予想)は3.17%から3.68%になります。

まとめ

セイコーエプソンは、環境・社会的課題から健康促進、ライフスタイルの多様化まで幅広く取り組みを行っており、サステナビリティ評価の高い企業です。事業活動においても、社会的課題の解決に貢献しながら、独自のコア技術をベースに、収益性重視の経営に取り組んでいます。

また、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用するESG指数に選定されるなど、ESG銘柄としても注目を受けています。

セイコーエプソンのESGやサステナビリティに関心のある方は、ご自身でもよくお調べの上、検討してみてください。

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