ReFiとは「Regenerative Finance」の略で、環境問題や社会課題を、ブロックチェーンを活用することで解決しようとする取り組みである。
この言葉は、分散型金融のDeFiから生まれたミームであり、2021年末頃のKlimaDAOやRegen Networkが大きなムーブメントを起こした時に誕生したと言われている。
日本においても、まだまだ認知度は低いものの、ReFiのプロジェクトや取り組みが少しずつ誕生してきている。本記事では、日本で誕生したReFiプロジェクトやReFiの要素を取り入れた活動をしている企業について紹介する。なお、過去にHEDGE GUIDEで紹介されたReFiプロジェクトは、本記事の最後にリンク付きでまとめているので参照されたい。
目次
SINRA
SINRAは、「Regenerative NFT」を用いて気候変動問題を解決するプロジェクトで、「地球上の自然が再生し続ける状態」と「地域経済が持続可能に運営される世界」の両立を目指している。自然が提供する価値、例えば温室効果ガス(GHG)の吸収や生物多様性の保全などが見過ごされ、経済的価値が十分に認められない自然資源は、地域経済の観点からは無価値あるいは負債とみなされてきた。その結果、森林破壊や違法伐採などが進み、森林が全世界で急速に失われている。
SINRAは、NFTを用いて自然が本来持つ価値の可視化と、それに対する人々の関与と投資を促進する。具体的には、自然資源が生み出す潜在的なカーボンクレジットを可視化するための支援を行い、その後はRegenerative NFTを通じてカーボンクレジットを保有し、環境への貢献に利用することが可能となる。また、NFTの販売によって生まれた利益は、自然資源保有者と地域に還元され、さらなる自然資源の再生や地域経済の活性化につながる。
第一弾として、2023年8月30日より、提携パートナーである三重県尾鷲市の森林保全を目的としたJクレジットの創出に寄与するRegenerative NFTを販売。蝶の羽ばたきのような一人ひとりの小さな行動が結びつき、地球を再生可能な状態に導く大きなムーブメントを生み出していくという願いを込めて、蝶をモチーフとしたNFTとなっている。
なお、地方自治体がNFTを活用したJクレジットの創出を通じて環境保全の取り組みをするのは世界初の事例であり、販売開始から2週間で、126個のNFT(200トン分の二酸化炭素(CO2)量に相当)がミントされた。
伊藤忠テクノソリューションズ
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)は、国立大学法人新潟大学と共同で、農地におけるGHGの放出量について、正確な測定やデータの可視化に関する実証実験を2023年6月から開始。そして、測定したGHG放出量のデータをもとに、将来的なカーボンクレジットとしての取引を目指し、GHG放出量の削減に貢献した生産者の活動実績のNFT化も進めていく。
近年、カーボンニュートラルの実現に向けた施策として、堆肥や緑肥などの有機物を用いた土づくりを通して、農地を含めた土壌でのCO2の排出を抑える「炭素貯留」の取り組みが注目されている。また、農業分野でのカーボンクレジットが新たな収入源として期待されており、炭素貯留には、精度の高い測定方法や信頼性のあるデータをデジタル化して管理する仕組みが求められている。
今回の実証実験では、カーボンクレジット取引に向けて、農地でのGHG放出量の測定方法や、放出量削減に貢献した生産者の活動実績をデジタルに証明する際のNFTの活用を検証する。また、GHG放出量を将来予測する分析手法の実証も行い、経済効果の推定にもつなげていく。なお、NFTについては、ミンカブWeb3ウォレット社が提供するNFT基盤上でNFTマーケットプレイスを構築し、カーボンクレジットとしてデータ取引が可能かを検証していくとのこと。
WOOD DREAM DECK(TIS株式会社)
「WOOD DREAM DECK」は、「木を使ってしたいこと」を持つ人の願いを叶える支援を通して、地域の森林資源の価値を高めて循環利用を促進し、「都市集中・地方衰退」「低・脱炭素化」の解決を目指すプログラムである。web3技術を用いて以下3つの観点から支援が行われていく。
1. 「木を使ってしたいこと」を持つ人の願いを叶える支援
未利用間伐材や遊休森林などの森林資源活用に必要な地域の山主、製材業者、家具職人などと、森林に関わる地域内外の様々なプロジェクトや個人を繋げるファンベースコミュニティを提供し、web3技術を使って活性化。木を使ってしたいことのアイデアを出し合い、それを技術的に実現する職人や林業関係者、サポートや金銭的支援をしてくれる地域内外の人をつなげることで、したいことの実現を支援する。
2. 森林関連共通の分散型web3を活用したトークンで森林コミュニティの活性化
ファンベースコミュニティを広げるために、森林関連のトークンを発行し流通させることで、様々なインセンティブを与えて地域内外の人があらゆる森林関連のプロジェクトに参加するきっかけを生み出し、コミュニティを活性化させる。
3. NFTで木を使うことへの付加価値を高めること
日本の森林にある立木は、海外からの輸入材の価格競争などに影響を受け非常に安値で取引されており、山主が立木を売っても植樹や再造林をすると赤字になるため、伐採後は3~4割程度しか再造林されていない。この状況を打開するため、地域の木材を使った製品や体験にNFTを活用して付加価値をつけることで、木の需要を生み出し末端価格を高める仕組みづくりを目指す。
アウトプット第1弾として、埼玉県秩父郡横瀬町との取り組みで製作したサウナ「ocomori(オコモリ)サウナ」が完成し、横瀬町にて完成したサウナの体験など「WOOD DREAM DECK」の全容を体験できる「REAL WOOD DREAM DECK TOUR(リアル ウッド ドリーム デッキ ツアー)」が開催された。
その他のプロジェクト
過去に本メディアで紹介されたReFiプロジェクトを掲載する。ユニークな取り組みも多いので、ぜひ一度目を通していただきたい。
MORI
SOMPOホールディングス
ファミリーマート
ロッテ
IndiSquare
PIZZADAY
【参照記事】ReFi Roundup 2022 – The Year of Regenerative Finance!
【参照記事】デジタルアートを保有して気候変動問題を解決する『SINRA』プロジェクトを開始
【参照記事】SINRA X(旧Twitter)投稿
【参照記事】TIS、web3を活用し地域の森林資源の活用で経済循環と環境保全を両立するエコシステムの構築を目指すプログラム「WOOD DREAM DECK」を始動
【参照記事】「WOOD DREAM DECK」と埼玉県横瀬町との取り組み第一弾 世界環境デー6月5日(月)に地域木材で作ったサウナをお披露目
F太郎 【KlimaDAO JAPAN株式会社】
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