【元トレーダーが解説】市場サイクルと投資家心理の関係性

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証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

  1. 市場のセンチメントとは
  2. 上昇トレンドの場合
  3. 下落トレンドの場合
  4. トレードに市場のセンチメントを利用する
  5. 値動きは市場のセンチメントも示している

①市場のセンチメントとは

金融市場のニュースを見ていると、相場を動かす要因として「市場参加者や投資家の心理」がよく出てきます。市場参加者が生身の人間であることを考えると、人間の心理が市場を動かす部分があるのも頷けるかと思います。

人が何か決断を下すときには感情などの心理が影響を与えることが往々にあります。こうした人間の心理を分析することによって、経済主体の選択、行動を考える行動経済学という研究領域も発展しています。そうした市場参加者の心理は「センチメント」と呼ばれ、市場サイクルを形作る要素となっています。

例えば、市場のセンチメントがプラスで価格が上昇し続けている時は市場全体が強気のムードです。逆に、マイナスのセンチメントで価格が下落し続けている時は市場全体が弱気と言えます。

このように市場全体のセンチメントは、市場に参加している個人の感情や市場に対する見方を総合して計測されています。そのため、誰か一人の意見がセンチメントを代表するという事はありません。あくまでも全体のセンチメントが商品の価格に影響を与えるとみなされています。

しかし、市場全体のセンチメントも常に移り変わるため、価格の方向性も常に変動していくと考えられます。例えば価格が上昇している時は、多くの投資家が強気な姿勢を見せ、市場のセンチメントがプラスの方向に動き、買いサイドと売りサイドの需給のバランスが崩れた事で、さらに強気な姿勢になるという循環が生まれます。

それでは、市場の値動きと投資家心理がどのように関係していくかをさらに掘り下げて見ていきましょう。

②上昇トレンドの場合

暗号資産市場だけでなく他の伝統的なアセットクラスでも言える事ですが、市場には必ずトレンドやレンジが存在します。

上昇トレンド中の投資家の心理や市場全体のセンチメントは、価格に対する楽観的な姿勢やさらに利益を取りたいという期待で溢れています。実際にトレードをしたことのある方は心当たりがあるのではないでしょうか。

これらの心理的な側面は投資家を強気にさせ、さらなる価格上昇を引き起こす好循環が生まれることがあります。すると、投資商品が内在している価値自体よりも価格が高騰してしまう状況も起こります。こうした環境下では、「価格上昇しているからその商品を買う」という投資家も出てきます。

こうした投資家は市場のモメンタムに飲み込まれ、利益を得ることだけを考えている可能性があり、リスクを想定できていません。価格高騰に乗じて買い注文を入れる投資家が増えるのは、上昇トレンドの最終局面の特徴の一つであることを忘れてはいけません。

上昇トレンドの最終局面に入れる買い注文には、大きなリスクを伴います。通常、価格が大きく高騰すると後に、横這いに進むことがあります。そのような状況は、その商品が徐々に売られていることを意味します。しかも、横這いの調整局面を挟まずに下落して行く場合もあるのです。

③下落トレンドの場合

上昇トレンドが終わり、下落トレンドが始まると投資家のムードは一気に冷え込みます。価格が下落していくのと同時に、市場のセンチメントは不安感に変わっていきます。

不安感というのは、価格下落に対する不安を表しています。特に、「なぜ価格が下落していくのか分からない」と考える投資家は、下落トレンドが始まっている状況をなかなか認めることが出来ない傾向があります。このような投資家はすぐに価格が回復すると期待を頂き、損切りができません。もしくは含み損が大きすぎて売ることが出来ないと考える人もいるかもしれません。

上昇トレンドで起きた投資家心理と価格が影響し合う循環と同じようなことは、下落トレンドでも生じます。一度下落トレンドが始まると、価格の下落は中々止まるものではありません。下落が進むに連れて売り圧力も強まり、投資家は不安や恐怖を感じる事になります。

そうなると、膨らみ続ける含み損に耐きれなくなった投資家が決済せざるを得ない状況になります。損切りの売り注文が殺到するセリングクライマックス(大底)を経て、ようやく下落の勢いが落ち着いてくると市場はまた安定感を取り戻します。

下落トレンドでも底値付近になると、価格が横ばいに進む場合が多いです。投資家が下落トレンドが終わった事を認識し、再度買いの圧力が強まると、価格は再び上昇していきます。

④トレードに市場のセンチメントを利用する

市場のセンチメントをよく理解することは、エントリーのタイミングや利益確定、損切りのタイミングを図る時にも役立ちます。市場心理は状況によっても変化するため、これを考慮せずに感情に任せたトレードをすると投資に失敗するリスクを高めます。

なぜなら、トレーダーは市場とは違う方向性に考える場合が多いからです。例えば、上昇トレンドで急激な価格高騰により楽観的になったトレーダーが買い注文を入れた場合、上昇トレンドの最終局面に気が付かずにリスクを背負います。

つまり、市場のセンチメントを利用してトレードすることは、市場の投資家がどのような心理状況にあるのかを探ることから始まります。大多数の投資家の感情が悲観的に傾き、価格が下がり切った時に買い、大多数の感情が楽観的になっている時に売りの注文を出すことで、利益を上げることが出来ます。

ただし、下落トレンドで買いの注文を入れるのは初心者にはおすすめできません。初心者の方はサポートラインの判断が出来ない方が多いため、まずは順張りのトレードに徹するようにしましょう。

「言うは易く行うは難し」というのはまさにこのような行動であり、実際に天井や大底を見極めることはとても難しいことです。初心者は大底や天井を狙うのではなく、まずはトレンドをしっかりとフォローするスタンスを身に着けるようにしましょう。

⑤値動きは市場のセンチメントも示している

今回は投資家心理が市場に及ぼす影響についてご紹介しました。今回紹介した以外にも、自分のポジションを肯定する材料を高く評価し過ぎるなど、様々な形で心理的要因がトレードに影響してきます。

取引をする上で、自分自身の感情を分析することは容易ではありませんが、市場全体のセンチメントを読み取る訓練にもなります。自分自身を見つめて理性的なトレードを心がけつつ、市場全体のセンチメントに流されない事を目指しましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12