JSRのESG・サステナビリティの取り組みは?配当情報も

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持続可能な社会の実現に貢献するため、事業経営の中でESGやサステナビリティの取り組みに力を入れる企業が増えています。東証プライムに上場している化学メーカーのJSRもサステナビリティ経営に取り組む企業の一つであり、事業活動を通じて地球環境保全や健康社会の実現につとめています。

そこでこの記事では、JSRのESG・サステナビリティの具体的な取り組み内容を詳しくご紹介します。企業の特徴や株価動向、配当推移についても解説しているので、関心のある方は、参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年12月10日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. JSRの特徴
  2. JSRのESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.環境保全・負荷低減
    2-2.ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
    2-3.安全・健康
    2-4.JSRのESG・サステナビリティに関する外部評価
  3. JSRの業績・株価動向
  4. JSRの配当推移
  5. まとめ

1 JSRの特徴

JSRは、東京都港区に本社を置く国内の化学メーカー企業です。1957年に合成ゴムの国産化の動きが活発になったことに伴って公布された「合成ゴム製造事業特別措置法」により、「日本合成ゴム株式会社」の社名で創立されました。

創立から40周年を迎えた1997年は創造や革命、新しい時代へ積極的に立ち向かう企業姿勢を現したシンボルマークが作られると同時に、社名も「「日本合成ゴム株式会社」から「JSR」へと変更されています。

JSRの主な事業は、「デジタルソリューション事業」「ライフサイエンス事業」「合成樹脂事業」の3つからなります。デジタルソリューション事業は、半導体、ディスプレイ、エッジコンピューティング関連などの材料を提供し、取引先の企業メーカーや市場の各種ニーズに応えています。

ライフサイエンス事業では、創薬から製造までを一貫した創薬支援サービス、バイオプロセス材料、診断・研究試薬材料などを提供して、医療分野へ貢献しています。そして、合成樹脂事業において製造されたABS系樹脂は、実用耐性、耐衝撃性、加工性、耐候性などが高く、自動車部品、電気器具、建材部品などに使用されています。

JSRを含むJSRグループは、国内拠点20カ所、欧米、アジアなどの海外拠点28カ所で事業展開しているグローバル企業です。JSRの企業理念は、「重要課題を通じて価値を創造することで、人間社会に貢献する」ことであり、持続可能な社会に貢献するため、ESGやサステナビリティの取り組みも積極的に行っています。

2 JSRのESG・サステナビリティの取り組み

JSRを含むJSRグループは、「事業活動」と「経営基盤」の側面からESG・サステナビリティの前提となる重要課題を特定しています。

事業活動の側面における重要課題 経営基盤の側面における重要課題
生活の質・幸福への貢献 環境保全・負荷低減
健康長寿社会への貢献 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
地球環境保全への貢献 安全・健康
人権尊重
サプライチェーン

特定された各重要課題に対しては、ESG・サステナビリティに対する取り組み指標が設けられています。例えば、「事業活動の側面における重要課題」では、「生活の質・幸福への貢献」「健康長寿社会への貢献」「地球環境保全への貢献」の実現のため、JSRグループの行う事業種ごとに、実行目的と取り組み指標を以下のように設けています。

各事業 実行目的 取り組み指標
デジタルソリューション事業 ・デジタル化の発展に貢献する重要課題の提供
・消費電力量の削減
サステナビリティ製品の販売及びその比率の向上
ライフサイエンス事業 ・医薬品開発期間の短縮
・顧客企業の医薬品開発成功率向上
サステナビリティ製品の販売額の増加(2024年目標額1,000億円)
合成樹脂事業 ・快適な運転の実現を目的とする車両のきしみ音の削減
・プラスチック資源循環の実現に向けた製品の提供
サステナビリティ製品の販売量及び販売比率の向上

一方、経営基盤の側面の重要課題に対しては、それぞれ以下のような取り組み指標と目標が定められています。

重要課題 取り組み指標及び目標
環境保全・負荷低減 ・温室効果ガス排出量削減(2020年度対比で2030年度30%削減、2050年度100%削減)
・廃棄物量削減を目的として、最終埋め立て量を0.1%以下にする
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン ・従業員エンゲージメントの継続的向上
・女性管理職比率の向上(2030年度時点で10%)
安全・健康 ・安全な職場環境構築のため、労働災害や設備災害の件数をゼロにする
・従業員の健康増進を目的として、健康産業省が認定する健康経営優良法人上位500社以内に入る
人権尊重 ・人権尊重に関するイーラーニングの参加率を80%以上にする
サプライチェーン ・サプライチェーン管理の強化のため、JSRグループCSR調達方針及び人権方針配布後の賛同書、RMIテンプレートの回収率を100%にする

ESG・サステナビリティの重要課題における取り組み指標の主な成果は、以下の通りです。

2-1 環境保全・負荷低減

環境保全・負担低減の重要課題において、2021年度の温室効果ガス排出量は101万3000トンとなっており、2013年対比4.3%の削減を達成しています。産業廃棄物発生量は、2017年度・2018年度7万2000トン、2019年度7万トン、2020年度6万7000トン、2021年度6万6000トンと年々減少傾向にあります。

2-2 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン

2017年度から2021年度までの女性従業員の採用比率及び女性管理職比率の2010年度対比率は、以下の通りです。

項目 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
女性従業員の採用比率(大卒技術系) 20% 18% 22% 26% 30%
女性従業員の採用比率(大卒事務系) 50% 45% 50% 55% 60%
女性管理職比率 3.8% 4.1% 4.3% 4.1% 4.5%

JSRでは、女性従業員の採用比率を大卒技術系30%、大卒事務系50%、女性管理職比率を2023年3月までに6%にする数値目標を定めています。2021年度の女性従業員採用比率は大卒技術系が30%、大卒事務系は60%と双方とも数値目標を達成しています。一方、女性管理職比率は6%に届いてないものの、2021年度は4.5%、2022年4月1日時点で5.6%とその比率は年々上昇傾向にあります。

2-3 安全・健康

JSRでは、安全・健康の重要課題として労働災害や設備災害の件数をゼロにするという目標を掲げています。実際、JSPの国内における労働災害の件数において、2018年度・2020年度の件数はゼロであり、目標を達成しています。また、JSRを含むJSRグループ全体の国内における労働災害の件数も、2018年度〜2021年度はいずれも年間5件以内となっています。

また、従業員の健康増進を目的として、JSRは体の健康支援施策を行っており、2021年度の主な成果は以下の通りです。

健康支援項目 2021年度の成果(全従業員の対比率)
健康診断受診率 98.9%
適性体重維持者率 66.3%
喫煙率 16.2%
ストレスチェック受検率 91.4%
ストレスチェックによる高ストレス者率 8.9%

2-4 JSRのESG・サステナビリティに関する外部評価

JSRのESG・サステナビリティに対して、外部からも高い評価を受けており、ESG銘柄として主に以下のESGインデックスに組み入れられています。

ESGインデックス インデックスの詳細内容
FTSE Blossom Japan Indexシリーズ ロンドン証券取引所所有のインデックス算出・管理会社FTSE Russell社によってESG評価の高い日本企業のパフォーマンスを測定するために設計された指数
FTSE4Good ロンドン証券取引所所有のインデックス算出・管理会社FTSE Russell社によってESGの取り組みを実践する企業のパフォーマンスを測定するために設計された指数
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 MSCIジャパンIMI指数の構成銘柄の中からESG評価に優れた企業を選別して構築された指数
MSCI日本株女性活躍指数(WIN) MSCIジャパンIMI指数の上位700銘柄から業種内で性別多様性に優れた企業を対象に構築された指数
S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数 米国のS&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社と日本取引所グループが共同で開発したESGの指数

このほか、優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などを表彰する経済産業省の健康経営優良法人認定制度があり、JSRは健康経営優良法人2022の大規模法人部門で認定を受けるなど受賞実績も豊富です。

3 JSRの業績・株価動向

JSRの直近の業績を確認してみましょう。以下は2018年3月期〜2022年3月期までのJSRの売上高、営業利益、売上高営業利益率をまとめた表です。

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 売上高営業利益率(%)
2018年3月期 421,930 43,569 10.3
2019年3月期 496,746 43,030 8.7
2020年3月期 471,967 32,884 7.0
2021年3月期 446,609 -61,633 -13.8
2022年3月期 340,997 43,760 12.8

JSRの売上高は、2018年3月期〜2021年3月期までは4,000億円台を推移していましたが、2022年3月期は3,000億円台まで減少しています。

営業利益は2018年3月期から減少傾向にあり、2021年3月期は新型コロナウィルスによる業績不振でマイナス数値となっています。2022年3月期は営業利益が増加し、2018年3月期の水準まで回復しています。

本業の収益力の高さを示す売上高営業利益率も2018年3月期〜2021年3月期まで減少傾向でしたが、2022年3月期は12.8%となり、2018年3月期よりも高くなっています。
     
JSRの株価は、2019年6月1日から2021年末までの期間は上昇傾向にありましたが、2022年に入ってから下落傾向が続いています。2022年は、欧米主要国を中心とする世界各国の大幅利上げによる景気減速懸念や半導体不足が発生したことにより、デジタルソリューション事業や合成樹脂事業での販売数量も減少したのが株価下落の要因です。

また、2022年8月1日には、2022年4月〜6月までの業績内容や2023年3月期の年間業績予想値を下方修正する旨の発表を受け、2022年8月2日はJSRの銘柄がストップ安となっています。

今後、JSRの主要取引先の減産傾向や世界経済の減速などが要因で株価低迷が続く可能性もあります。一方、世界経済が景気回復局面に入ったり、ESG・サステナビリティの取り組みによって、事業による新たな価値創造や持続的な社会の実現に貢献したりすれば、投資家からの評価も高まって、株価上昇につながる可能性もあります。

4 JSRの配当推移

JSRは積極的な株主還元の方針を打ち出しています。以下は、2018年3月期〜2022年3月期までの配当金総額と配当性向をまとめた表です。

年度 配当金総額(百万円) 配当性向
2018年3月期 11,129 33.5
2019年3月期 13,223 42.7
2020年3月期 12,883 57.5
2021年3月期 12,894 -23.4
2022年3月期 15,055 40.3

JSRの配当金総額は、2019年3月期の場合、2018年3月期よりも10億円以上増加しました。2020年3月期と2021年3月期は、新型コロナウィルスによる業績低迷などの影響で、2019年3月期よりも配当金総額が少なくなったものの、2022年3月期の配当金総額は150億円を超え、直近5年間で最も多くなっています。

当期純利益に対する配当金支払額の割合を示す配当性向は、2018年3月期〜2020年3月まで増加傾向です。直近2022年3月期の配当性向は、2020年3月期より割合が減少していますが、2018年3月期〜2022年3月期の期間のうち2021年3月期を除く4年は、適正な目安である30%をいずれも超えています。

まとめ

JSRは、新たな価値を創造したり、持続可能な社会の実現に貢献したりする目的で、ESGやサステナビリティの取り組みを積極的に行っているため、国が設けるESG関連の認定制度の認定を受けたり、ESG銘柄として国際的なインデックスに組み込まれたりするなど、外部機関から高く評価されています。

JSRのESGやサステナビリティに関心のある方は、この記事を参考に検討を進めてみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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