JFEと言えば日本製鉄と並び、国内における2大製鉄会社として知られています。国内の鉄鋼需要が伸び悩む中、海外事業や製鉄以外の事業にも注力しています。
また、環境面ではJFEは製鉄業で石炭コークスを大量に使うため、国内でもCO2の排出量がトップクラスに多い企業の1社です。その一方で、グリーン企業への移行に向けて2022年1月にはトランジションボンド(移行債)を行うなど、脱炭素技術の確立に積極的に取り組んでおり、気候変動対策のための新たな高炉技術などの開発も進めています。この記事ではJFEの業績やESGの取り組みから、将来性について考えていきます。
※2022年10月19日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- JFEの概要
- JFEのESGに関する取り組み
2-1.鉄鋼事業におけるカーボンニュートラル
2-2.ダイバーシティの推進 - JFEの10年間の株価推移と業績
- JFEの将来性
- JFEの配当・優待情報
- まとめ
1.JFEの概要
銘柄 | JFEホールディングス |
証券コード | 5411 |
株価 | 1,421円 |
PER(会社予想) | 5.84倍 |
PBR | 0.40倍 |
配当利回り(会社予想) | - |
※2022年10月19日時点のデータ
JFEホールディングスはJFEグループの持株会社であり、傘下にJFEスチール、JFEエンジニアリング、JFE商事などを抱えています。
JFEスチールは、鉄鉱石の加工から最終製品の生産まで一貫して行う鉄鋼メーカーです。世界トップレベルの鉄鋼生産規模があり、鉄鋼製品を国内・海外に提供しています。また温室効果ガス排出量や環境負荷を今後減らしていくため、環境調和型の製鉄プロセスや高機能材料の開発にも取り組んでいます。
JFEエンジニアリングは、エネルギーシステム、環境システム、水処理システムなどのテクノロジー・ソリューションを提供しています。DXやサステナビリティを重視しており、カーボンニュートラルや廃棄物資源の有効利用などを中長期で取り組んでいます。
2.JFEのESGに関する取り組み
鉄鋼業界はCO2排出量がトップクラスに多いため、鉄鋼の大手企業がトランジションに向けて取り組みを進めることは日本全体・地球全体で見たときにも大きな意義とインパクトがあります。以下では、JFEのESG関連の取り組みをいくつか紹介します。
2-1.鉄鋼事業におけるカーボンニュートラル
JFEグループは気候変動問題を非常に重要な経営課題として位置付けており、鉄鋼事業におけるCO2排出量削減、社会全体のCO2削減への貢献拡大を推進しています。
鉄鋼事業では2050年のカーボンニュートラルの実現に向けたロードマップを策定し、短期・中期・長期の目標を設定。具体的には以下のような内容です。
- 2024年度末のCO2排出量を、対2013年度で18%削減
- 2030年度末には対2013年度で30%削減
2050年のカーボンニュートラル実現のために取り組んでいるのが「カーボンリサイクル高炉」です。製鉄で高炉から発生するCO2を別の物質に変換し、高炉の還元材として繰り返し利用する革新的な技術です。またこれまでの高炉における空気利用のプロセスを変更することで、熱効率を高めることが可能になります。窒素を使わなくなるため、CO2の分離が用意になることもメリットです。
この他にも製鉄プロセスでのスクラップ利用、水素活用、直接水素還元技術、電気炉プロセス技術など、気候変動対策のため複数の技術開発を進めています。
2-2.ダイバーシティの推進
ダイバーシティの推進のため、女性スタッフの活躍の促進を重視。女性採用の比率の増加、女性管理職の積極的な登用などに関する目標を策定し、女性の働きやすい環境や制度の整備なども展開しています。
女性管理職比率に関して、2030年には課長級以上に占める女性の割合を10%以上(管理・営業部門は20%以上)にするという目標を設定しました。女性従業員の積極的な採用、法定水準を大きく上回る育児支援制度の充実、研修・啓発活動の展開など、女性の活躍を推進する施策を展開しています。
このような取り組みが評価され、JFEホールディングスは、2013年度以降「なでしこ銘柄」に計3回選定されました。なでしこ銘柄とは、女性人材の活用を積極的に推進する企業であると認定された銘柄で、1業種につき1社、経済産業省と東京証券取引所の共同により選定されます。
3.JFEの10年間の株価推移と業績
株価推移を見ると、過去10年で主な山が2つあります。1つ目は2015年で、株価が一時3,000円以上に達しました。2つ目の山は2018年の1月ですが、2,800円台に留まりました。その後2020年5月にかけて大きく下落し、一時は600円台になりました。
そこからやや持ち直したものの、現在は1,400円前後で推移しています。近年の株価は伸び悩んでいる状況と言えます。
2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上が対前年41%増、事業利益が32%増となりました。成長しているように見えるのもの、昨年度は新型コロナによるマイナス影響があったため、そこからは回復したという要素が大きいようです。
2022年8月に発表された業績予想でも、同社は慎重な考えを崩していません。ウクライナ情勢や原料価格の高騰、円安といった不確定要素が多く、鋼材需要は弱含みがあるとしています。
エンジニアリング事業については、環境・エネルギー関連分野とインフラ分野ともに堅調に推移すると見込んでいます。ただし資機材高騰の影響により、通期の利益は前年度を下回る予測となっています。
商社事業では北米事業を中心に好調を維持するため高収益を確保できる見通しとなっています。
4.JFEの将来性
JFEの将来性について、ビジネス内容や業績、ESGの取り組みから考えていきます。まず主力ビジネスの鉄鋼はインフラに近い産業であり、急激な需要の減退はないでしょう。新興国を中心に、建築・土木で使われる鋼材の需要は今後もあると考えられますが、長期的に大きく発展・成長しそうな要素はまだありません。
業績に関して売上は毎年一定の規模を維持しているものの、利益が毎年大きく変動するのが懸念点です。鉄鋼だけに限ったことではないのですが、オイルや穀物など近年の原料価格は乱高下しやすく、また為替レートの影響が大きい点も見逃せません。
ESGに関しては、JFEは先進的な取り組みを複数実施しています。鉄鋼産業においては比較的ITソリューションを重視する姿勢があり、自社のテクノロジーを活用してカーボンニュートラルに向けて取り組みを進めています。
同社の将来性についてまとめると、鉄鋼は短期・中期では業績が安定すると考えられますが、長期的な成長性や利益向上についてはやや懸念があります。ESG関連の取り組みやビジネスを今後どこまで展開できるかが鍵になるのではないでしょうか。
5.JFEの配当・優待情報
1株あたり配当(2023年予定) | ・第二四半期:40円 ・期末:未定 |
主な株主優待 | 工場見学会 |
配当金に関して、2023年度は第2四半期末に40円を予定していますが、期末の配当は未定となっています。2022年度は第2四半期末が60円、期末が80円であったため、昨年より減配となる可能性もあります。
JFEホールディングスは株主優待として、工場見学会を実施しています。2020年度・2021年度はコロナ禍を理由に見送られましたが、2022年度は再開するとしています。
2019年度の場合、100株以上を保有する株主を対象としていました。1名のみ同伴可能で、子どもの場合は小学生以上に限られます。
見学会の場所と招待人数は下記のとおりで、申し込み多数の場合は抽選となります。
企業 | 地区 | 招待人数 | 実施日時・回数 |
---|---|---|---|
JFEスチール東日本製鉄所 | 千葉地区 | 各回135名 | 11月27日と11月30日に2回ずつ |
京浜地区 | 各回135名 | 11月23日、12月4日、12月6日に2回ずつ | |
JFEスチール西日本製鉄所 | 倉敷地区 | 各回120名 | 翌年1月18日に2回 |
福山地区 | 各回120名 | 翌年1月17日に2回 | |
JFEスチール | 知多製造所 | 各回60名 | 12月13日に2回 |
JFEエンジニアリング | リサイクル工場(京浜地区) | 各回60名 | 10月8日、11月19日に2回ずつ |
農業生産プラント(苫小牧地区) | 各回40名 | 10月11日に2回 | |
JFEエンジニアリング・ジャパンマリンユナイテッド | 津地区 | 各回60名 | 翌年3月13日に2回 |
ジャパン マリンユナイテッド | 熊本県有明地区 | 80名 | 11月15日に1回 |
応募方法は、同社サイトの申し込みフォームまたはJFEから送付される定時株主総会招集通知に同封しているはがきで行います。見学会の参加費は無料ですが、集合・解散場所までの往復交通費は各自で負担する必要があります。
2022年度の見学会の詳細は追って通知するとのことなので、興味のある方は同社サイトなどを定期的にチェックしましょう。
まとめ
JFEの事業の概要、業績や株価推移、ESG関連の取り組みなどについて解説しました。同社は日本を代表する鉄鋼メーカーの1つで、新型コロナによる鉄鋼需要の減少でダメージを受けたものの、今後は回復も予測されています。
鉄鋼産業の需要がすぐになくなるとは考えられませんので、短期・中期では大きな問題はない一方、長期でも成長できる要素を作り出せるのか、世界的なサステナビリティの流れと調和できるのかが重要でしょう。同社で取り組んでいるエンジニアリング事業も鍵を握りそうです。
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安藤 真一郎
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