広がるNFTの用途、ENSについて

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の赤澤直樹 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. ウェブブラウザのドメインの仕組み
  2. ENSとは?
  3. ENSの課題とは?「匿名・早いもの勝ち」
  4. まとめ

今回は、イーサリアムブロックチェーン上で住所のように機能するENS(Ethereum Name Service)というユーティリティNFTをご紹介します。NFTはアートとしての利用例が多く取り上げられていますが、ENSのような具体的な用途を持つNFTも着実に増加しています。

このNFTは一般的なイーサリアムアドレスが持つ「人間にとっての可読性が低い」という問題を解決し、ブロックチェーンをより使いやすいものにすることを目指しています。

ウェブブラウザのドメインの仕組み

ENSについて説明する前に、まず通常のウェブブラウザで利用されるドメインの仕組みについて確認します。例えばこの記事はhedge.guideというサイトに掲載されています。読んでくださっている皆様はこのドメインにアクセスしていることになりますが、実はこの時お使いのウェブブラウザはhedge.guideと通信しているわけではなく、このドメインと結びついた特定のIPアドレスを持つサーバーと通信して、記事データを取得しています。

ではなぜこのような仕組みになっているのかというと、数字の羅列であるIPアドレスは人間にとっての可読性が低く、毎回ウェブブラウザに入力することは現実的ではないからです。一方サイト名を冠したhedge.guideというドメインであれば、私たちはそれがHEDGE GUIDEというウェブサイトのことだとすぐに理解することができます。

ENSとは?

ENSも同じように理解することができます。Metamask(メタマスク)などのウォレットで扱うイーサリアムアドレスは0x~で始まる42桁のランダムな英数字で構成されており、他人へ送金する場合などに毎回手入力するのは現実的ではありません。

そこで、ENSを使って特定のイーサリアムアドレスと~.eth(例えば、Fracton Venturesではfracton.ethを保有しています)で表現されるドメインをブロックチェーン上で結びつけることで、このドメインを長くて煩雑なイーサリアムアドレスの代わりとしてトークンの送受信などに利用することができます。また、ENSアドレスはNFTの形を取っているため、それ自体も通常のトークンと同じくアドレス間で送受信することができます。

既に15万人が40万個近いENSをNFTとして発行しており、様々な利用例が生まれています。例えば、Metamaskなど主要なウォレットはENSドメインを使った送受信に対応しており、長いアドレスの代わりにENSドメインを指定して、NFTを含む様々なトークンを送受信することができます。また、Openseaなどのマーケットやコミュニティでは、ENSドメインを自分のユーザーネームとして使うこともできます。

他にもENSには、イーサリアムとは直接関係のないビットコインなど他のトークンのアドレスや、TwitterなどのURLを書き込むこともできます。ユーザーが好きな画像を設定することもできるため、最近SNSのプロフィールでよく使われているLinktreeのような、Link in bioのツールとしても利用しうるでしょう。

このような動きを受けて、一部の企業はENSドメインの獲得に乗り出しています。ビール市場において世界約3割のシェアを持つといわれるアンハイザー・ブッシュ・インベブの主力ブランド、「バドワイザー」は、beer(ビール).ethを30ETH(当時の日本円レートでおよそ1,000万円)で購入しました。このNFTを使った具体的な取り組みはまだ発表されていませんが、飲料大手のユニークな取り組みとして、既に大きな広告効果を得ていると考えられます。

ENSのNFTが高額で取引されている事例はそれだけではありません。10月9日にはparadigm (パラダイム).ethというENSドメインが420ETH(当時1.6億円)で取引されました。この取引は当初、暗号資産取引所のコインベースなどに出資しているベンチャーキャピタルの「Paradigm」によって行われたと考えられていましたが、当のベンチャーキャピタルは否定しており真相は闇の中です。

ENSの課題とは?「匿名・早いもの勝ち」

上記の高額取引の詳細が不明なのは、ブロックチェーンの原則である匿名性によるものです。既に取得されている場合を除き、誰でも好きなドメインを取得することができます。その上誰もドメインを凍結することはできず、DNSに備えられた所有者情報を示すWHOIS情報にあたるものもありません。したがって、工夫すれば強い匿名性を保ってドメインを取得することができます。

最近では、ドメインの取得を急ぐ動きも一部で見られています。個人・企業問わず、自分に関連するドメイン名を悪意ある他人に取得されてしまった場合、将来高値での購入を余儀なくされたり、詐欺などに悪用される恐れがあるためです。一般的なドメインは高額転売目的で入手することは法律で禁じられており、裁判で対応することもできますが、匿名で取得できるENSドメインはそれも困難である可能性があります。ENSは一度取得すると、定期的な更新を忘れない限りは半永久的に同一ユーザーが利用できるため、匿名で、しかも早いもの勝ちでENSを取得できてしまう現状は後々問題になる可能性があるでしょう。

まとめ

NFTをユーティリティとして扱う実例の1つであるENSドメインは、人間に理解できる文字列でトークンを扱えるようにすることでクリプトのユーザー体験を改善しようとするプロダクトです。既に利用が広まり始めており、企業の間でも関心が高まっていますが、現在の仕組みは将来に禍根を残す可能性があります。

【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法
【参照URL】Dune Analytics
【参照記事】The mystery of a $1.5 million Ethereum name purchase

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

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当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。