今回は、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
現在、イーサリアムの大改修となる「イーサリアム2.0(Eth.2.0)」が進行中です。このアップグレードはコンセンサスアルゴリズムの変更を含む大掛かりなもので、より実用的な性能を備えることでユーザビリティの向上が期待されています。今回はイーサリアムの重要なファンダメンタルズである「イーサリアム2.0」について、どのような意味を持つのか解説します。
①コンセンサスアルゴリズムとは
まずは仮想通貨(暗号資産)のコンセンサスアルゴリズムについて解説します。
仮想通貨の基盤であるブロックチェーンにおいて、取引(トランザクション)はマイニングによって成り立っています。マイナーの仕事は、取引を新たなブロックに格納して過去のブロックにつなげることです。複数のマイナーが同時多発的に作業するため、取引の記録を正当に保つために合意形成方法が必要となります。
ビットコインやイーサリアムの合意形成はプルーフ・オブ・ワーク(PoW)と呼ばれ、ハッシュ値を探す作業を“最初”に達成したマイナーのブロックが正当とみなされ、マイニング報酬を受取ります。PoWではマイナーの競争原理が働くため、計算力を高めるために莫大な電力が必要となるのです。
②プルーフ・オブ・ステーク(PoS)とは
アップグレードによって、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に変更されます。プルーフ・オブ・ステーク(PoS)はプルーフ・オブ・ワーク(PoW)の代替システムとして発展しており、PoSを採用する仮想通貨は近年急速に増加しています。
PoSの要点は、保有コインの割合(ステーク)によってブロックの承認者となる割合が決まることです。そのためPoSはPoWより効率的になり、ブロック生成及びトランザクションの承認スピードが早い傾向があります。PoWのように、膨大な電力を必要としないこともPoSのメリットです。
③イーサリアムの課題
近年、DeFiやNFT関連の需要増によってイーサリアム・ネットワーク上のトランザクションが大量に発生し、手数料高騰やネットワーク混雑する事態が度々起きています。イーサリアムやビットコインなどのブロックチェーンは、より多くの手数料を支払うトランザクションが優先してブロックに取り込まれ、処理(送金)される仕組みになっています。
イーサリアムのブロック容量、ブロック生成速度は一定に制限されているため、より早く取引を行いたい大口投資家にとっては手数料を吊り上げる動機が生じます。その結果、現状のイーサリアムは一般ユーザーにとって割高となり、別のプラットフォームにユーザーが流れる状況が出てきています。
これらの課題は「スケーラビリティ問題」とされています。実際にイーサリアム上のトランザクションが増加し、史上最高値を記録した2021年5月19日には、イーサリアムの平均取引手数料(ガス代)は$69.922、1年前の$0.448に対して約156倍まで高騰しました。
④イーサリアム2.0アップグレード
イーサリアム2.0のアップグレードにより、スケーラビリティ問題の解決が見込まれています。コンセンサスアルゴリズムをPoSに変更し、承認(マイニング)作業を効率化する共に、シャーディングと呼ばれるシステムの並列処理技術と組み合わせることで、トランザクション処理の向上を図っています。
PoSへの変更は、ネットワークの稼働に必要な電力消費量の削減にも寄与するでしょう。イーサリアムの開発を主導するイーサリアム財団は、想定ノード数に基づいてトランザクション処理に必要な電力を99.95%削減できるとしています。
投資家にとっては、保有しているイーサリアムをステーキングして取引の承認作業に貢献することで、報酬として利回りを受け取れるようになります。イーサリアム2.0のステーキング報酬はネットワークに参加するバリデータが増えるにしたがって減少する仕組みです。当初は年利20%でスタートし、最終的に年率4.5%~7%に落ち着くと試算されています。ステーキングに参加するには要件に沿ってイーサリアム(ETH)をネットワーク上にロックする必要があります。詳細は以下の記事でご覧頂けます。
⑤まとめ
イーサリアム2.0のアップデートは4つのフェーズに分かれ、コンセンサスアルゴリズムの変更はフェーズ1.5に組み込まれています。PoSの報酬を受取れるまでには1年以上時間がかかります。イーサリアムがスケーラビリティを実現し、大規模なエンタープライズアプリケーションに対処することを期待しつつ、アップグレードの進捗を見守りましょう。
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中島 翔
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